杉の子のひとりごと

私の交友録などを中心に,思いを綴っていきます。

感謝の誕生日

2011年03月24日 | 日記
よく今日まで生かして貰ったな、正直な感想である。
宣告を受けて覚悟した日々が昨日のように思い出される。

検査入院の院長先生からカルテと腸カメラの写真を目の前で
見せられながらの命の宣告だった。

他の方は、血の気が引いたと言われる方が多いのだが、
私は逆に頭に血が昇った。
余程、性格が横着なのであろうか ?

何時もと変わらぬ表情で大部屋に戻った。
同部屋の患者さんにも、看護婦(師)さんにも普通に会話した。
ほとんどの方は、短い人で一晩、大体2~3日で退院する人が
多かった。

私は、1日後れで入院した同年代の人と二週間ほど入院していた。
看護婦さんが皆さん優しかった、
だから私は明るく伝えた 「看護婦さん、私は明るいがん患者です、
覚悟していますので、どうか気を使わないで下さい !」

看護婦さんの返事がまた良かった !?
「Uさん充分ですよ ! 逆に気を使ってもらって有難うございます」
退院の日がやって来た、と言っても大病院へ手術の為に転院するので
ある。

同部屋の相棒とロビ-でしばしお別れの会話を、
私が一足先に出て行くのである。
彼は同部屋の患者さんや看護婦さんにも優しい気配りの男だった。
しかし、私は知っていた彼が何者であるかを !?

彼を見舞いに、年配の夫婦がよく訪れていた。
親父さんと言われるそのひとは、その筋のえらいさんである事を
その所作、付き添いの感じで私は理解していた。

別れの日、彼と二人きりの話はしばらく続いた。
最後に彼がぽつりと言った・・・!
「Uさんは、度胸が据わっています !」 彼の私への最後の言葉だった。
笑顔で見送ってくれたその人は偉いポジションにある事を理解した。

その後、優しい院長先生の紹介で四国がんセンタ-に入院した。
私が入った6人部屋は、すべてカ-テンが閉じられていた。
此処からが面白い !

私の横のベッドに、検査入院していた病院で一緒だった年配の方が
入って来た、当然二人はカ-テンを開けて話に花を咲かせた。
ところが、ひとつ開きふたつ開き、しまいには全部のカ-テンが
全開となった。
6人部屋の友情が深まっていくのである。

もちろん手術を終えて個人部屋への移動と新しい患者の入室である、
ある時、東予の人が私の横に入って来た、
「Uさん、ここへ来るまでは「がん」と言う言葉さえ怖くて話せません
でしたが、この部屋は「がん」の言葉が天井を飛び交っています !
すごいですね ?」 私より年上のその人は感嘆した。

私が手術したばかりの時、集中治療室で安静にしているにも係らず、
その人は忍び足で入って来た、
「Uさん検査の結果が良かって今日退院できます、何かとありがとう
ございました !」 彼は、私の状態でどうしょうかと迷ったようだが、
どうしてもお礼を言いたくて集中治療室に入って来たのである。

「ああ、そうですか ! 良かったですね !」 麻酔のまだきれない
私は、夢うつつの中で答えていた。

私は、主治医はじめ看護婦さんに恵まれた。
ここでも、私の話に検査入院の病院と同じ言葉が看護婦さんの口から
発せられた 「Uさん、充分ですよ ! 良い患者さんですよ !」
明るい笑顔とともに爽やかな言葉が返って来た。

本音のところでは、死に対する覚悟を固めて肉親との別れに供えた、
目に映る自然の景色が、今までと違った色彩を帯びて見える、
我が家で飼う犬との触れ合いに、短き逢瀬を感じていた、
全てが愛しかった。

家族との別れ、自分の胸に秘める大切な想い、それらの未練を必死に
振り切ろうと頑張っていた。

身近な肉親がいても、ひとりであの世へ向かう無常感に心は乱れた、
自分の命が絶たれる、消えると言う悲しみよりも、
身近な人との永遠の別れに、喪失感を味わっていたのである。

未知の世界へ向かう果てしなき寂莫感は今思い出しても寂しいもの
だった。
その中での、未練を断ち切る覚悟だったのである。

「先生! 意義のある大切な時間を頂きました、おかげさまで沢山の
人の相談に乗ってあげて、濃密な時間を過ごさせてもらっています!」
私の感謝の言葉に、検査の時の診察に、主治医は相好を崩した、
「そうですか ! Uさんに、そう云って貰うと嬉しいですね !」
感謝の日々が続いている。

あの日から6年の歳月が過ぎた、この世へのお礼奉公が残されている。
私が、愛媛県行政書士会へ恩返しをしたいと思うのは、これらの感謝の
想いがあるからである。

私の覚悟は決して浮ついたものでなく、命を賭したお礼奉公なのである。
男の覚悟と云うものは命を投げ出してやり遂げる事なのである。

爽やかな天候に恵まれたこの日、私は誕生日を迎えることが出来た。
ひとり闘病に耐える人に、ささやかな励ましと応援になればと考えて、
自分を語ろうと思ったのである。

あの日見たセピア色の石手川が、堀之内の白鳥が !
緑に富んだ色合いを見せ始める、生きるって事は素晴らしい。
ただ! 感謝の日々である。 ・・・。。。

                    合掌



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1 コメント

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 誕生日おめでとう ( 柳澤 玉久)
2011-03-24 22:52:20
 U先生お誕生日おめでとう。平均余命まではまだまだ遥か彼方です。悪いところを取り除くとそれ以上に寿命が伸びます。
 「年老いて万事枯れ行く昨日今日むさぐるしくはなるまいぞゆめ」
 お互いに清々しく生きたいものです。
 入院手術をしたのを全く知らなかった、見舞いにも行けず悪しからず。
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