のどかな昼下がりである。
私は、ひとりの男を懐かしがっていた、
年齢は私よりずっと下だが、親戚筋に当る
彼は故郷を出てこの東温市に居住して居る。
ケイタイ電話をかけてみた、
近くの図書館に居るとのことだった。
私の家より4~5分の距離、早速待ち合わせの
約束を取り付けて、馴染みの喫茶店で待ち合わせ
と為った。
しばらく見ない内に頭はすっかり白髪になっていた。
私の甥と同級生、
子供の頃よ . . . 本文を読む
30年以上前の話である。
私の家の前を、ふたりの兄と妹が歩いていた、
小学校に入ったばかりの兄ちゃんと保育園に
通う妹であった。
妹を労わるように兄は優しく手を引いていた。
2人の父は、その少し前に急死したのである、
母は県都から嫁いで来て、夫婦は仲むつまじかった。
小さな飲食店を経営する気心の合った店主Bが、
ひとりの恰幅のいい男を連れてきた。
一目見て、私は分った !
東京は、有 . . . 本文を読む
パトカ-と黒塗りの車がサイレンを鳴らして
やって来た、
キ-ッ ! 急ブレ-キの音とともに刑事が
4人、店内に雪崩れ込んで来た。
ウェイトレスのSちゃんが110番回して10分、
Y署刑事課の屈強な男達が飛び込んできた。
底の割れたビ-ル瓶を握って猟師のA、相手は
見るからにその筋の伊達男がふたり !
始まりはこうである ?
ボックス席に見知らぬ男が2人、カウンタ-に
地元の底引き網漁船の乗組 . . . 本文を読む
夢の中で・・・
ふたりのガキが歩いていた。
終戦直後の空襲で焼け果てた焦土の街に
オイラはダチと歩いていた。
焼け出された犬が悲しげに彷徨っていた。
「お前も、おとう、おっかあ とハグレタかい ?」
オイラもみなし子だい !」
昭和20年の夏は、やけに暑かった。
・・・・・
時代は、国民等しく貧乏からの出発だった、
再建の槌音が、あちらこちらから鳴り響き、
焼け野原が、見る見る内 . . . 本文を読む
日常の生活を少しだけ変えてみる、
いつもの環境から外に目を向ける、
何気ない日々の生活が新鮮なものに変わる。
香川県行政書士会のADR研修に参加した、
連合会から講師の先生方が見えられて、
引き込まれる熱演が展開された。
いわば模擬調停である。
弁護士会から参加されていた弁護士先生が、
その熱演に感嘆の声を上げられた、
「本物の役者さんのようで面白い !」
日常から一歩外に出る、
そこには . . . 本文を読む
バシッ! 空気を切り裂いて右のフックが炸裂した。
テンプルに見事にヒットした、男は声も無く崩れ落ちた。
一瞬の出来事である。
肩幅のがっちりとした中肉中背のAは、私の顔を見て
ニャリと笑った。
港町の土曜夜市が終わりかけて、下道の飲み屋街の
賑わいが迫っていた、
私とAは、相方のBと3人で、バ-Nに向かって歩いて
いた、
暗がりの向こうから若い4人連れのチンピラ風が姿を
現した、
我々は、 . . . 本文を読む
「天網恢恢、疎にして漏らさず」
私が人を励ます時に話す言葉がある、
「お天道様はお見通し、真面目に頑張っていれば良い
ことがありますよ。」
山口県光市の母子殺人事件に関連して被害者の夫であり
父親でもある本村 洋さんの取調べを担当して尚且つ
支えてくれた刑事さんが言ってくれた言葉、
「天網恢恢、疎にして漏らさず」
「天は、きちんと見ていて、悪い人をその網から
漏らさず、必ず罰をあてる」
. . . 本文を読む
忘れられない映画がある。
恋人たちの場所
1968年 アメリカ映画 MGM配給
監督 ヴィットリオ・デ・シーカ
主演 マルチェロ・マストロヤンニ フェイ・ダナウェイ
この洋画は、私が杉の子を開店した後に、洋画専門館で
上映されて、ひとりで観たものである。
イタリアのエンジニアと第一線のファッション・デザイナ-
彼女は不治の病におかされ、余命いくばくもない身だった。
まだ若 . . . 本文を読む
山口県光市の母子殺人事件の発生から13年、
5回の判決を経て被告の死刑が確定する事になった。
長い年月であった、
被害者家族の苦しみは我々にとっても胸の苦しくなる
思いだった。
ご主人本村洋さん厳しい表情を崩す事はなかった。
新聞、テレビで観る、事件のあらましと裁判の進展は
弁護団の弁護方針の奇異さもあって国民の注視を浴びた。
人の命が失われ、また極刑判決により加害者の命が
絶たれる事になる . . . 本文を読む
姉は過ぎ去りし過去を昨日の事のように、
語り続けた。
数十年前に亡くなった妹の事を、
私にとっては姉になるのだが、涙を流して
語っている・・・
「お墓に入れてやっての ! 可哀想に ?
入れてやったのよ ! ・・・・・」
辛い別れになった姉は、
不治の病に苦しんだ末、薬石効なく旅立った。
姉は、それを昨日の事のように話すのである ?
下の姉と一緒に、その語りを聞いている内に、
あの辛い闘病 . . . 本文を読む