杉の子のひとりごと

私の交友録などを中心に,思いを綴っていきます。

Mの一閃

2012年05月12日 | 日記
長年店をやっていると客との間で不思議な
連帯感が芽生えてくる。

私が酒癖の悪い客に絡まれると、
頭の良い人は理論整然と、腕力の有る人は
盾になって私を庇ってくれた。

暴力で来ようものなら、まず一発でのばした、
私の苦境を見るに見かねて代わりに相手を
してくれたのである。

私自身は切羽詰った心境ではなかったが ?
傍に居た彼らから見ると、傍若無人な客が
許されなかったのである。

M君と云う猟師の若者が居た、
連帯感が芽生えてくる、
一種の親戚関係に近い親近感である。

懐かしい、麗しき乙女達の電話で、
その頃、お客さんとして見えられた人々との
思い出が蘇って来た。

八幡浜の町から湾を南へ曲がったところに
彼の住む漁村が在った。

私と歳が同じで、中学時代は番長で鳴らした
S兄ちゃんと云われる私と肝胆相照らす仲の
男が居たが、彼のいわば弟分である。

私の姉が不治の病で市立病院の大部屋で辛い
治療に耐えていた時、個人部屋で治療中の
今は亡き彼の弟B君が部屋を替わってくれた。

その御陰で親族はじめ知人が心置きなく姉を
見舞うことが出来たのである。

B君も姉と同じ不治の病に向き合っていたが、
姉より少し早くまだ20才を過ぎたばかりの
彼は天国へと飛び立った。

命の残りを悟っていた彼は病の日々を淡々と
耐えていた、忘れる事が出来ない。

M君たち兄弟のお母さんは亡くなっていたが、
お父さんや家業を継いだ末弟たちが時々店に
見えられて、語り合ったものである。

そのM君が怒りを爆発させたことがある、
酒癖の悪いU君が酔って手が付けられなくなった、
なだめても聞かない・・・

一言二言云ったかと思う間もなく、
Mの右フックがUの左のテンプルに炸裂した、
一瞬の内にUは声も無く崩れ落ちた。

普段は、周囲に気を配って陽気に話す男である、
それが一旦、腰を据えると目が据わって見事な
啖呵を切る。

まず一発、二発で相手は足元に崩れ落ちた。
氷のように張り詰めた緊張が解けると、
M君の何気ない笑顔が戻ったものである。

60歳には手が届いたか是非逢いたいと思う。

理不尽な土木作業員に腹を立てて、
店に居ては迷惑をかけると言って外へ連れ出し、
無言の中で相手を這わせたS君 !

杉の子は、頼もしい親衛隊に守られて、
日々の生業に明け暮れていた。

懐かしいな ! 故郷はよ !
思い出一杯忘れられない、鐘の音よ。・・・。。。

                         合掌





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