先輩！

或る日の御前中、相談を受けた新築住宅を訪問した、
引渡し前の檜の香りが芳しい木造住宅。

土地家屋調査士Ａ先生は先に到着して建築会社の
Ｃ専務と打ち合わせ中だった。

道路に問題が有って完了検査までに至っていない、
先日のＢ社長の相談事で出向いたのである。

私にとって、今回の相談ごととは別に、ある感慨
を以って現場に向かった。

甦る事、４２年前、若い２人の恋愛ごとに私は首を
突っ込んだ、男は私の高校の先輩、女はその地方の
名士の娘、この困難な２人の間に入って奔走した。

難しい局面を乗り越えて、２人の結婚式は取り
行なわれた、勿論私は参列して２人を祝福した。

個性の強い先輩で、風当たりも強かったが、
私は、どの場面に於いても先輩を庇った。

本当は淋しがりやだが、親父さんが当時ある世界で
飛ぶ鳥を落とす勢いの権力者、そこに彼の驕りが
有った。

反発は在ったが、親父さんの力で事なきを得た、
可愛い盛りの男の子が３人生まれて、大きくなる程
に私の店へも連れてきた。

可愛い子供達だった先輩は私の前では無垢に戻った。

歳月が流れ、
先輩の消息が途絶えたが、奥さんが３人の子供を
立派に育て上げて成人させた。

昨夜のＢ社長からの電話はＣ専務を行かせるので相談に
乗ってやってくれと言うものだった。

私が、青春を共にした先輩とＤちゃんの長男である。
出会ってみて、私の予想が外れた事を知った　？

気難しい男かと想像して臨んだが、全く逆の男が其処に
いた、気配りの行き届いた、さすが愛媛の雄会社の専務
を勤め上げるだけの事は有る。

始めは遠慮していた父母の話も、彼が何の違和感も無く
話し出したことで、一気に堰を切って語り合った、
先輩の今が判明した、息子との関係も知ることが出来た。

驚きの展開がその後に待っていた　！
彼の妻の背景を知ることになる、Ａ先生が同席の為
さすが、控えて遠慮したが、振り返ること５０年前の
私の青春時代　？　麗しき乙女達と会社を一緒にした
光景が甦った　！

まさか　？　あの〇〇ちゃんが義母とは　？
清純で心の美しい乙女の物語を紐解かなければならない。

感激の時間は、次の予約のため中断した　！
後ろ髪引かれ乍ふたりと分かれて次の場所へ、
兄弟と間違われる友の待つ喫茶店へと急いだ　！

１２月に２人きりの忘年会を予定している好漢である。
以心伝心！　たとえ死んでも続くであろう友情の契り、
・・・「貴様と俺」・・・
この男同士の友情は地球が破滅しても壊れる事はない！？

優雅な店構えの喫茶店は、暖かな空間の中に一足早い
師走の佇まいを覗かせていた。・・・。。。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　合掌