Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

あおなみ線、「開業一周年」を前に早くもピンチ?

2005-09-22 05:57:38 | 鉄道(都市部)
来月6日に開業一周年を迎える「あおなみ線」こと名古屋臨海高速鉄道。
開業からもう一年が経とうとしている訳で、時の流れが段々早くなっている事を実感する。

しかし、名古屋駅の片隅からひっそりと発車していく電車の様子を見ていると、殆ど乗客がいない、特に昼間などは空気輸送に近い状態で発車していくことが多かった気がする。
そんな乗車状況を反映した記事が昨日の中日新聞に掲載されていた。

web未掲載の記事の要旨をかいつまんで整理すると、次のようになる。
・「あおなみ線」は利用促進策を図っても5年後には125億円の資金不足に陥る見通しが名古屋市議会で明らかにされた。
・現在の「あおなみ線」の利用状況は開業当初に見込んだ一日当たりの利用客は66,000人に遙かに及ばない18,000人と、当初想定の27%に止まっている。
・名古屋臨海高速鉄道の2004年度末の手持ち資金は33.8億円だが、これも借入金の利子や運転資金で底を尽く。来年度は1.7億円の資金不足に陥り、2010年度には累積資金不足額が同社の資本金150億円を超過する事も想定される。
今後5年間で沿線企業へのPRやイベント開催、人件費削減等の対策を講じるとしているが、2010年度の利用者の見通しは一日35,000人。当初想定の53%にしか届かない。
・最大の出資者である名古屋市は貸付金245億円について、償還条件変更及び運営資金の無利子融資で財政支援する方針だが、市は「他の出資者の協力も必要になるだろう」としている。

なるほど、経営の実態が明らかになると、電車の空き具合からして「当然だろう」という印象が強い。
それにしても開業当初と実態の見通しのギャップの大きさには、ただただ呆れるしかない。一体どんな需要の計算をしたのだろうか。
開業一周年を迎える前から「資金ショート」が語られる、ということの異常事態をどう考えれば良いのだろうか。

結論から言えば、貨物線を旅客線化したところで沿線住民は車から電車に乗り換えず、全く相手にしなかった事が明らかになっただけである。
この点は開業前に予測されていたとはいえ、需要予測と現実のギャップがあまりにも大きすぎる。

実際、自宅から「ポートメッセなごや」のある金城埠頭には車で直接行った方が早く、コストとして必要なのは現地での駐車場代だけだから感覚的に安い(ガソリン代や自動車税といった費用の問題はあえて除外して書いている)。
電車で名古屋に出て、それから「あおなみ線」に乗り換えて金城ふ頭へ、という事では時間もかかるし、しかも名古屋までの電車代+あおなみ線の運賃と二度運賃を支払うため、負担は重い。
鉄道ファンの自分にしてからがそう感じるのだから、一般の人の感覚は推して知るべし。

それなら廃止・・・と短絡的な結論に持って行きそうになるが、折角作った路線、名古屋市も愛知県もそんな事は全く考えていないだろう。
しかし、そもそもの需要見通しが甘過ぎることは開業前に把握していただろうと考えると、現在の4両編成の電車も現状では「過剰」と言わざるを得ない。
それこそ愛知環状鉄道のように2両編成を基本にし、繁忙時は2両編成を2本繋げた4両編成で走らせ、その結果足りなくなる車両についてはJR東海からの借り入れや乗り入れで賄うという知恵があっても良かったと思うのだが。

もう一つ気になるのは自治体が財政支援に乗り出す方針を表明した以上、第三セクター側の経営責任が浮上してくると思うのだが、それについては触れられていない。
もっとも、第三セクターである名古屋臨海高速鉄道の幹部が名古屋市や愛知県の「天下り」で占められている事は大体予想できるので、詰め腹を切らせることもできないうことか。
かくして、誰も責任をとらぬまま税金が投入される、という見慣れながらも愉快ならざる展開が続くことになる。

ともかく、開業から一年が経過しようとしているが、沿線需要の掘り起こしは完全に失敗した事は明らか。
需要喚起策をどうするかが注目されるが、今後の見通しについては明るい要素は今のところない、というのが記事を読んだ感想だった。
本当にどうするんだろう。

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5 コメント

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鉄道を愛する者のやるべきこと (JIRO)
2005-09-23 01:48:32
鉄道を愛する者がわざわざ述べる意見では無いと思う。

利用予測は、役人が「開通の承諾を得れるために作った数字」に決まっている。そんなに繁盛するという路線ではないことは、素人目にも分かる。ここで、結果を作った犯人さがしのような意見は、マスコミやジャーナリズムや評論家がやることで、われわれ鉄道を愛する者がことやることではない。

自分は少ない利用者のプラス一人になるべく、貨物列車見がてら用も無いのに、あおなみ線に乗る。鉄道を愛する者が、批判する立場に立ったら、あの路線を応援するのは誰が残るのか。

確かにまだ努力が必要と感じるところは多々ある。

しかし、せっかく新しい鉄道路線ができたのだ、我々が盛り上げようではないか。
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Re:鉄道を愛する者のやるべきこと (Simplex)
2005-09-23 06:45:45
JIROさん、はじめまして。

コメントありがとうございます。



>結果を作った犯人さがしのような意見は、マスコミやジャーナリズムや評論家がやることで、われわれ鉄道を愛する者がことやることではない



確かにこのブログで書く意見ではなかったかもしれません。今読み返すと「突き放している」感が強すぎるなと思わなくもありません。

しかし、「あおなみ線」が行政が関与する第三セクター鉄道でなければ、ここまで書かなかったでしょう。



というのは、開業一周年を前に「資金不足、行政が財政支援に乗り出す」という事態は企業として見た場合、極めて異常な事態です。

その点を広く知って貰う必要はあるのではないでしょうか。



そう考えると、企業側の経営の杜撰さと合わせて、それを許容した出資者として、また許認可権者としての行政の杜撰さを広く知ってもらった上で、今後の議論を広く喚起するのも「鉄道を愛する者のやるべきこと」ではないかと考えています。



需要が当初の予測を大きく下回る事は開業前に予測できた筈。ならば計画の下方修正を検討し、資金不足を回避する努力もできた筈だったのに、それをしなかった点。

今更人件費の見直し、利用喚起のPRを行ったとしても、改善効果は知れており、長期間に亘って利用客の増、ひいては経営改善が見込めない点。

更にはかかる事態を招いた経営責任をどうするのかがはっきりしない点。

この三点から企業と行政の姿勢は批判されてもやむを得ない、というのが当方の認識です。



もう一つ指摘しておかなければならないのが、需要予測と実態の乖離が長期間に及び、しかも改善の見通しがなければ、桃花台線で見られた類の議論が一般の人から出てくる事は容易に想像できます。「人が乗らない第三セクター鉄道を残す事に意義があるのか」と。



税金の使い道を見る目が厳しくなる中、「人が乗らない」という事実に対して単に「鉄道が好き」というだけでは対抗し得ないのではないでしょうか。

実際、幣ブログで過去に触れた桃花台線や高千穂鉄道の記事に対するコメントや様々な報道に接していて、そんな事を感じます。



話は変わりますが、「税金」が投入される事に行政側がさも当然のように「資金不足が生じる、だから財政支援」と表明することに対して、マスコミ側もそれを無批判に報道するという点をどう考えているのでしょうか。



本来、マスコミが検証して報道していれば、こんな記事は書かなくても済んでいるでしょう。

しかし、悲しいかな記者クラブで行政から情報を入手し、報道するという実状があります。

これでは、問題点の検証はできないし、行政のやる事に対してチェック機能が働いていない、

その体質がそもそも問題ではないでしょうか。



この点については他の所で散々指摘されているので、ここで今更言うまでもないことですが。

その意味でマスコミを無条件に信用していないのは確かです。



>せっかく新しい鉄道路線ができたのだ、我々が盛り上げようではないか。



この点については同感です。

確かに我々が乗らなければ誰が乗るのでしょうか。

自分も名古屋貨物ターミナルに出入りする貨物列車を見にあおなみ線には乗るのですが、我々ができる事には限度もあります。

この種の問題に対して我々の出来る事は何でしょうか。

JIROさんのコメントに接してそんな事を考えています。
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あおなみ線の有効活用 (nai)
2005-09-24 00:01:51
あおなみ線沿線は、いまのままでは利用を促進するような、観光施設、会社、学校等、常連で使ってくれるような顧客に乏しいように感じます。

あそこのホームから、名鉄のミュースカイを走らせれば、新幹線の隣のホームなので遠方の方でもセントレア空港が近い印象を与えることができていいと思います。

トランパス対象路線なので課金の計算も地下鉄鶴舞線の名鉄総合乗り入れと同じ方式がとれていいかもしれませんね。

笠寺からのびているいらない貨物船の残骸もうまく使ってやったら、金城ふ頭からトンネル掘るより短期間の工事でまにあわせで空港直結列車ができていいんじゃないかと思います。

あと、電気屋の入り口と同化しているあの改札の位置では知らない人だとどこから乗ったらいいか分からないですね。

ぜんぜん工夫を感じない"アホ並み線"まだまだ、検討の余地があるt
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Re:あおなみ線の有効活用 (Simplex)
2005-09-24 05:52:08
naiさん、おはようございます。



>笠寺からのびているいらない貨物船の残骸もうまく使ってやったら、金城ふ頭からトンネル掘るより短期間の工事でまにあわせで空港直結列車ができていいんじゃないかと思います。



恐らく「南方貨物線」の事を指しているかと思いますが、JR東海・貨物、名古屋市・愛知県も活用に積極的ではなかったため、高架橋の撤去が始まった今となっては現実的には難しいのではないかと思います。

確かに南区氷室地区と名鉄道徳地区を結ぶ短絡線を設けて中部国際空港へのアクセスとして利用する「構想」はあったようですが。

 もしこれが実現していれば、JR名古屋駅からミュースカイやJR東海の空港連絡特急が発着していたかもしれません。



>電気屋の入り口と同化しているあの改札の位置では知らない人だとどこから乗ったらいいか分からないですね。



確かに、ソフマップの方が目立つというのは問題でしょう。あれでは改札口の位置が全くわかりませんし、確かに知らない人が行くと迷ってしまうのではないかと思います。

名古屋駅の片隅にホームを設置せざるを得なかった事情はわかるのですが、もう少し工夫の余地はあったのではないでしょうか。 

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あおなみ線と名古屋市電下之一色線 (gorori)
2006-08-05 22:15:18
あおなみ線の付近には、以前(といってもかなり前)名古屋市電の下之一色線(70系統)が走っておりました。これは、尾頭橋から長良本町・荒子・下之一色・西川町二丁目(惟信高校前)・稲永町・大手町をまわり築地口までのもので、あおなみ線の近くを走っていた感じがします。(私もよく知りませんが)

今もし下之一色線が残っていたら、大半が専用軌道だったので都電荒川線のような使われ方をされ、あおなみ線のような超赤字路線ができずにすんだのに、といつも思います。
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