Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

岐阜市は「路面電車」をどう議論してきたか?(その14・後編)

2005-09-05 06:55:17 | 鉄道(岐阜の路面電車と周辺情報)
昨日に引き続き、廃止3ヶ月後に開催された第3回定例会の議論を取りあげる。

<質問4>
路面電車廃線後の諸問題についてお尋ねする。
1点目は、岐阜市は、廃線の結論を出した経過について、沿線住民に対し十分な説明をし、理解を得ていなかったと思われるが、いかが考えるか。
2点目は、関市の民間企業が名鉄3線の資産譲渡の意向を示しているが、こうした動きに対し、市長はなぜ仲介の労をとらないのか。
さらに、岐阜市の総合交通政策を考える中で、将来、路面電車についてどのように考えておられるか。
また、廃線により、郊外から岐阜市中心市街地への客足が遠のいて、柳ケ瀬などの商店街では売り上げが減るなどの影響が出ているようであるが、その実情について岐阜市はどのような調査をされたか。
さらに、路面電車の廃線により、岐阜市の都市イメージ、いわゆるチンチン電車のあるまちといった都市イメージが大きく変わったと思うが、そのマイナス面についてどのように考えているか。
そして、廃線になった車両で大正生まれのモ510系、通称まあ、ちょっと小さい写真で申しわけないが、こういった丸窓電車という電車である。非常に古い車体で市民の人気もある。商品価値のある電車である。この通称丸窓電車について、静態保存をする市民運動もあるが、岐阜市としてどのような協力を考えているか。

<市長答弁4>
路面電車の廃線の住民に対する説明について、市政執行に対する説明責任を果たしたいと考えている。
仲介については、先ほど答えたように民設民営方針が基本であるので、民間同士の話し合いによって解決をしていただきたいと考えている。
路面電車の将来の考え方についての質問であるが、まあバスなど、コミュニティーバスなどを加えた複合的な交通ネットワークを策定したいと思っている。

<質問5>
路面電車の撤退に伴う支障について身近な事例を紹介させていただく。
岐阜市岩田坂地内に住む高齢者の方々から。今まで買い物に出かけるに、高台にある住宅地から平たん地にある中堅スーパーを利用している。御年配の方々は朝9時過ぎに買い物に出かけるそうで、今までは路面電車を利用され何の支障もなかったところ、代替バスを利用している現在、学生さんの通学時間帯と重なるためか、座席に座ることもできない。日々の生活となると、私たちの想像以上の負担となっている。
また、若干観点が違うが、同じ岩田坂地内に住む七十五、六歳の高齢の御婦人の方から。新岐阜まで同地よりバスに乗った。乗客が多く最後まで立ったまま運転手さんのわきのパイプの柱にしがみつくような感じでいた様子を同乗した御婦人の方から聞いた。大変何とも言えないような思いをしたという指摘であった。路面電車の撤退に伴う議論はいろいろあるが、私は、かねてよりワンコインバスの導入、またコミュニティータクシーの導入を訴えてきたが、今後、導入に向けての考え方、また、タイムスケジュールについて市長の所見をお伺いする。

<市長答弁5>
コミュニティーバスの運行については、市民交通会議あるいは1日市民交通会議においても多くの意見が出ており、市民の皆様方にとって大変関心の高い事業であると理解している。
また、交通不便地区の移動手段の確保であるとか、地域コミュニティーの保全あるいは高齢者の移動手段の確保あるいは市街地の活性化など、いろんな役割を担ってくれるバス交通施策であると認識している。
現在、岐阜市では総合交通体系の策定を進めているが、この中で既存の路線バスとコミュニティーバスが適切に組み合わされた複合的なバスネットワークを構築することを念頭に置いて、5つの観点でこの選定作業を行っていこうではないかということで考えているわけである。1つは、ある程度の人口集積が見られる所、また、一定のバスを利用する方々が存在しておられる所、幹線・支線バスがサービスされていない所、また、地元要望が高い所、公共施設や病院など生活利便施設が多く立地している所、この5つの項目などを指標にして、コミュニティーバスのモデル地区を選定をしていったらどうかということで検討しているところである。
運行については、他都市の例を見てみると、行政が主体となっているもの、あるいはNPOが主体となっているものがあるが、いずれの運行においても運賃収入のみでは運行経費を賄えていないのが実情であり、財政的負担が課題となっている。本市においてもバスの利用者、地域の住民、企業、そして、行政がそれぞれ適正に分担をしていくという新しい仕組みが必要ではないかと考えている。
指摘のあったコミュニティータクシーについては、地域の小規模な輸送を担う公共交通手段として、コミュニティーバスとともに活用を検討したいと考えている。2点目の、タイムスケジュールについては、選定地域において、できる限り早い時期に、行政、地域住民で構成するコミュニティーバス等検討会を設置して、運行主体や路線選定など基本的事項について協議を進め、できるだけ早い時期に試行導入を図りたいと考えている。

<質問6>
構造改革特区の計画について、「ひと・環境にやさしい路面電車特区」というものがあった。これはどういうものであるのか、説明をいただきたいと思う。
で、申請されたのはちょうど路面電車の存廃問題が話題になっていた時期にも合致するわけだが、これに関連させていたのかどうかについても聞かせていただきたい。
結果的には認定されなかったわけだが、その否認の理由について聞かせていただきたい。

<岐阜市答弁6>
「ひと・環境にやさしい路面電車特区」は、平成15年6月に提案したが、この特区の提案は5点にわたっており、その内容を紹介すると、路面電車の運行車両の全長制限を緩和すること、路面電車の運行における最高速度等を緩和すること、チケットキャンセラー、いわゆる無改札乗車方式の導入と、無賃乗車時の罰則規定を強化すること、軌道事業の運営と軌道や駅など施設建設を分離すること、それから、最後に、車両検査の期間を延伸すること、この5項目であった。
これらの提案が認められなかった理由としては、現行の規定で対応できる、あるいは提案内容について規定の見直しを検討中であり、特区としては対応しないというものであった。
なお、路面電車の存廃問題との関連ということだが、路面電車の走行等について規定する軌道法は大正10年に施行された法律ということもあり、近時あるいは最近の交通事情に見合っていないと見受けられる点など、路面電車が抱える問題に関して、当時、特区の提案をしたものである。

<質問7>
路面電車再生についてお伺いする。
市民交通会議の「中間とりまとめ」が3月にあった。その中では路面電車について大変興味深い指摘がある。いろんな意見が集約されたものとして、「現在の路面電車を経営収支の面で考えると存続は困難。しかし、市民にとって使いやすい路線網の整備やLRTの導入、上下分離による公設民営方式など、運営形態等幅広く検討する必要がある。世界や国内各都市での動向も踏まえて、利便性や環境の維持、渋滞緩和など社会的便益の側面からも路面電車のよさを見直していく必要がある。このような検討をした上で、路面電車がバスよりも輸送力や環境への影響面ですぐれていて、その結果、利用向上策を十分立てた上で、市民が岐阜市の公共交通にとって必要との結論づけをすれば、税金を含めた市民の負担についての合意形成が得られ、新たな鉄軌道を再生することは可能である。これらを踏まえて、将来における基幹公共交通軸として路面電車の必要性の是非を検討する必要がある。」というのがまとめのようである。
さらに、県政の総点検のための県民委員会生活基盤分科会における意見の中でもさまざま意見があったが、おおよそ岐阜県と岐阜市の路面電車へのかかわりがいかにも不十分であったという点に意見が集約されている。
特徴的な意見を申し上げると、「1年か1年半か休んだ後にもう一度電車を走らせることが望ましい。その可能性は今のところまだある。可能性がある。民間事業者でも手が挙がっている。ただ、この民間事業者をつくって運営をやるといっている人たちについても、免許を出す方から考えると、やれそうにない。やはり地元の市、町が基本的な部分を支援しないと無理だろう。そのためにこういう委員会でしかるべき結論というか、勧告というものを出されるということが、今唯一の可能性を拡大する方策だ」、「どんどん、支線、枝の線が廃止されてきて、最後に残った所も赤字でやれなくなった。そういう所の解決をしていくのに市町村だけではできなかった所がある。県の姿が見えなかった。今後、公共交通に県が関与するという方向がないと、今までのやり方では進んでいかないのではないか」と、県の姿勢を明確に強く持ってほしいと述べているが、基本は、県の側の説明も出ており、「基本は地元自治体の支援があるかないかだ。」と。
「岐阜市がやる気があるかどうかだ、その意向による。」さらに、「県は、地元の市町の取り組みを積極的に応援し、複数の沿線市町の調整を行う。実現に向けて、まず、基本的な認識を市民や沿線市町の方に持っていただくための材料を提供していく。」
 まあ早い話が岐阜市がやる気になったら県は応援しますよということをさらに突っ込んで述べている。県側の説明、「市町がやっていただければ、県も一緒に支援、前提は沿線市町の意向だ」と、はっきり述べているようである。
これらの意見をいかに市長は受けとめているのか、答えていただきたい。

<市長答弁7>
第1点目の、市民交通会議の「中間とりまとめ」、あるいは県の政策総点検県民委員会生活基盤分科会の意見をどのように受けとめているかという質問について、市民交通会議の「中間とりまとめ」は、現段階における市民総意がまとめられたものでありまして、非常に貴重な意見として聞いている。
今後、総合交通政策を策定する際など活用したいと考えている。
その中で路面電車については、本市の公共交通ネットワークを構成する上で、現在の路面電車とは路線形態などが全く異なったLRTを含めて鉄軌道の再生に向けて取り組んでいくかどうかを検討することが必要と報告されている。岐阜市の公共交通は当面バス交通が主体的な役割を担うことになり、現在の幹線や支線バス利用に加え、新たなバスシステムとしてのコミュニティーバスが適切に組み合わされた複合的なバスネットワークを構築したいと考えている。
また、平成17年5月9日に開催された政策総点検県民委員会生活基盤分科会においては、地域の公共交通を維持していく視点で県のさらなる関与が必要ではないかとの意見、あるいは路面電車を再生すべきとの意見があったことについて承知をしておいる。
今後、中・長期的には人口の増減や住まい方の様子、市民の公共交通に対する意識の高まりを見きわめながら、輸送密度や交通特性に合わせ、鉄軌道系などの新しい交通システムの可能性についても検討したいと考えているので、このような公共交通政策については、県と市の連携を深めながら県にも力添えをいただき進めたいと考えている。

<質問8>
 路面電車について、県の総点検におけるメッセージというものは、やはり岐阜市にとっては応援のメッセージと受けとめていただきたいと思っている。現瞬間における岐阜市が最大なすべきことは、民間で名乗りを上げている心ある事業者を応援することではないかと受けとめている。
この点で、この間の対応は評価する部分もあるが、まだまだ、市長自身がその先頭に立って言っている公共交通を軸にまちづくりを進めていくというような観点を貫き切れているのかどうか、この問題でも市民の立場に立ち切れているのかどうかは疑問の尽きないところである。
 以前にも指摘したが、市長の政治資金管理団体、「日本一元気な県都岐阜市を創る会」代表者は前の岐阜バスの社長である。現在は岐阜バスの相談役。この人が市長の資金管理団体の責任者である。で、この人がいろんなところでどう言っているかと聞くと、「今まで名鉄でやろうと思ってやれなんだことがやれるものか、やれるもんならやってみよ。」というような発言を直接耳にしたことがあるが、この人に市長はお世話になっていて、名鉄グループの。
ほんとに名鉄に対して市民の立場を貫いて物が言えるのかどうか疑わしいところでである。特にその点であなたは相当な気遣いがあるんではないか、しがらみがあるんではないかと思う。
前回にも伺ったところだが、率直なところをお伺いしたい。
名鉄の立場ではなく、市民の立場に立ち切れるのかどうか、お答えいただきたい。

<市長答弁8>
名鉄への気遣いがあるのではないかと。
まあ目線が市民目線よりも名鉄目線ではないかという質問であったが、これはもちろん言うまでもなく、市民目線でしっかりと対応している。
また、今後ともその市民以外に対する目線というものは、一切振り払って頑張っていきたいと考えている。
指摘のあった人は、まあ案内のとおり、もうあそこの副社長を退任していて、まあ公平の立場で、相談役、岐阜バスの相談役であり、社長を退任している。
まあ人格、識見も大変すぐれた方であるので、岐阜市民のためにさまざまな形で貢献をしていただけるものと確信している。

<第3回定例会のまとめ>
実際に路面電車が廃止されたことで、市議会における議論は次の論点に分けられるかと思う。

・路面電車廃止に伴う影響
・路面電車廃止後の公共交通体系の構築
・前項に関連する岐阜県、沿線自治体との連携
・路面電車再生運動に対する岐阜市の関与

まず、一番目の論点について、路面電車が廃止され代替バスが運行されるようになったが、運転本数が減ったことによる負担がかなりのものになっていることが窺える。
これについては新聞記事などでも取りあげられているので、今回改めて触れる必要は少ないだろう。

二番目の論点について、議論の多くが割かれていたように思う。
やはり3月に出された「中間取りまとめ」との整合性、市が示す「新たなバスシステムを構築する際に現在の幹線や支線のバス網に加えてコミュニティーバスも複合した形でバスネットワークの構築をしたい」という構想の実現性、その構想に要する税負担の議論が焦点になっている。

三番目の論点について、路面電車の存廃について岐阜県と岐阜市の関わり合いがあまりに乏しかったという点が焦点になるが、これについては今後の取り組みを注視するしかない。

やはり、注目すべきは最後の論点だろう。
第3回定例会に前後して、路面電車再生に意欲を燃やす「サン・ストラッセ」と名鉄の交渉を岐阜市の助役が仲介した旨が報道されている。
その時気になったのが、「岐阜市としてのスタンスが変わったのか?」という事だが、今回の議事録に目を通した限り変化はないと見るのが自然だろう。
従って、今も進められている取り組みに対する岐阜市の対応は表層的なものに止まると考えた方が良さそうだ。
現時点で対応が変わったと考える材料にも乏しい。

最後に、岐阜市長の政治姿勢に関わる質問が出されていたが、実際に路面電車を撮りに岐阜を訪れた際に色々な人から聞いた噂がこうした形で裏打ちされるとは思わなかった。
結局、岐阜バスに税金が投入できて、路面電車には投入できなかったという疑問に対して煮え切らない答えしか得られない、その理由の切れ端をかいま見たような気がした。

この問題に対する説明責任を果たしたかという質問に対する市長答弁を見ると、徹底して無視、もしくは意図的に論点を外した答弁をしていたように受け止めているが、首長として責任のある行動と言えたかどうか。
事の真相が質問のとおりだとしたら、到底理論的な話とは言えず、納得の行く回答が得られない訳である。
また、この点について事実関係を調べ、報道できた筈のマスコミも動かなかった。
選挙後援会の事など「市長のプライバシー」に該当するから報道できなかったというのだろうか。
地元マスコミと行政の癒着ぶりは今更触れるまでもないが、我々が知りたい事を報道しようとしないマスコミに対して果たして存在意義があるのかどうか、とも思えてしまう。
少なくともマスコミの本来なすべき役割の一つである「公権力の監視」は機能していなかったと言っても差し支えないだろう。

また、質問をする側もする側で、実際に電車が走らなくなってから、かかる質問をしているようではあまりに時宜を失していたと言わざるを得ない。
この種の質問は存廃の議論中にすべきだろう。
部外者から見ると、岐阜市と市議会の出来レースそのものに思える。
結局、市も市議会も路面電車の存続についての主張は上辺だけのものだったと言われてもやむを得ないのではないか。
これらの事実を今更知っても何ら救いにはならない。

これから9月定例会が始まる。
そして、路面電車再生運動も最終局面を迎える。
路面電車再生運動が不成功に終われば、10月から線路の撤去が始まるという。
果たして、9月市議会ではどのように再生運動は議論されていくのだろうか。
今回の路面電車に関する議論を見た限り、悲観的な観測しか持ち得ない。

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2 コメント

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市長のパトロン (JK)
2005-09-06 02:34:03
初めて投稿します。



なるほど合点がいきました。

市長のパトロンが、元岐阜バス重役

なのですね。

 そりゃ、岐阜バスの商売敵になる

路面電車や、市営バスなどやりたく

ない訳ですね。
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Re:市長のパトロン (Simplex)
2005-09-06 06:37:13
JKさん、はじめまして。



この話自体は記事中でも触れていますが、廃止前に岐阜を訪れた際、地元の人から何回か伺った事があります。

「噂」として出てくる話である以上、何かしらの根拠はあるだろうと思っていましたが、今更事実を知ってもなぁというのが正直な気持ちです。

そして、この話が広がらなかったことも気になりました。



また、市営バスの岐阜バスへの移管については、確かにそうですね。調べてみると、2002年6月に民営化の方針を決めて、2003年4月から路線移管が始まっています。その事の是非もこれから検証されていくのでしょうが、事故が多発したように岐阜バスの体質には疑問を持っています。



コメントありがとうございました。

今後もよろしくお願いします。
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