Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

「ちびくろ・さんぼ」復刊に思う。

2005-03-04 06:54:22 | 
幼い時、よく読んで貰った絵本。
その中でも印象に残っている一冊、「ちびくろ・さんぼ」。
子供心に面白いお話だったことは今でも忘れられない。
その絵本が「廃刊」を求める市民団体の指摘とやらで1988年~90年代にかけて絶版になったと聞いた時はショックを受けた。

その市民団体の名前が「黒人差別をなくす会」。
その名前からして、どうにも好きになれなかった。
かなり大きな団体と思っていたが、実際は家族三人の小さな「団体」だと聞いて、名前と実体のギャップに更に驚いたことを覚えている。

さて、人の受け取り方によっては「ちびくろ・さんぼ」に「差別」的なニュアンスはあったかもしれない。
ただ、それは本が書かれた時代背景を考えれば、やむを得ない所はある。
しかし、自分の経験に照らしてユーザーである子供がこの本を読んで差別感情を抱くとはとても考えられなかった。
「ちびくろ・さんぼ」から「黒人差別」を連想するには論理が飛躍しており、「大人」の視点で物を見過ぎだと思った。

そして、もっとも落胆したのは抗議を受けて、いともあっさり絶版にしてしまった岩波書店をはじめとする出版社の事なかれ主義な対応だった。
「廃刊を求める」などという野蛮な指摘に屈することなく、今の視点で「差別的」ととられるニュアンスがあれば表現を修正して発行は継続すべきだった。
仮に、絶版が避けられないとしても、広範な議論を重ねてからすべきであったのにそれもせず、単に「臭いモノに蓋」、という形で一方的に本屋の店頭から姿を消したことは忘れられない。
「言論の自由」が保証されているこの国で、一方的な「言葉狩り」に屈してしまった出版社の対応は批判されてしかるべきと考えている。

そんな経緯で姿を消していた「ちびくろ・さんぼ」が4月上旬に復刊されるという。
復刊について紹介した記事によると、出版社には書店からの注文が相次いでいるという。
出版社の社長曰く「何が差別的かをよく考える必要がある」とのことだが、その言葉は本当に重い。
まずは、我々が素直に「面白かった!!」と言えるお話が再び子供たちの手元に届くようになったことを素直に喜びたい。

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