平成15年の議論を前回に引き続いて見ていく。
今回は9月に開催された第4回定例会。
実施が間近に迫った総合型交通社会実験に関する経費が9月補正予算で計上されたため、これに関する質問が多いが、その内容を見ると、総合型交通社会実験の意義、名鉄に対して岐阜市当局へこれまでになく強い態度を求めるものが多い。
なお、本文中<答弁>は市当局、<市長答弁>は市長の発言をそれぞれ示す。
参考:「岐阜市議会議事録」
<質問1>
9月補正予算において、路面電車、トラッジットモールの実験、検証を行うため、総合型交通社会実験の経費が計上されている。将来的な本市の総合交通体系や環境問題、少子・高齢社会を考えると、広島市や熊本市で既に導入されている超低床で環境に優しく、さらに、国の補助があるLRTの導入、特にこのコスト的に地下鉄の10分の1のコストでできる。特に岐阜市のような都市にはちょうど手ごろな、新しい交通機関であるため、本市におけるLRTの導入を提案したい。導入に対しての考えを聞きたい。
<市長答弁>
LRTは従来の路面電車の機能を大幅に向上させた新しい時代の公共交通機関である。特に欧州を中心にいち早くLRTを使ったまちづくりが始まった。地球環境あるいは高齢社会の到来に伴うまちづくりの課題に対して、軽量化された電車構造で環境負荷が小さく、まちの活性化やまちづくりに役立つという点で着目されている。パーク・アンド・ライドあるいはトランジットモールなどといった都市交通施策の一部として構築されているのが特徴となっている。
代表的な導入都市としてはフランスのストラスブール等が挙げられる。ストラスブールでは郊外部はパーク・アンド・ライドや、同じプラットホームでバスと電車が乗りかえ、乗り継ぎができるなど、利便性の高い交通結節点が整備されている。また、中心市街地では、一般車、バス、タクシーの通行を禁止したトランジットモールが導入され、車の洪水で麻痺していた都心部がよみがえり中心市街地が活性化したという例もある。
これら欧米の都市では建設や運営に多額の税が充てられているのも現実である。また、車両は車いすが容易に乗り込める超低床であり、自動車と共存できる高い加減速性能、都市の景観をつくり出す高いデザイン性などを有している。中にはゴムタイヤで走行し騒音や振動がほとんど出ないものもあるなど、これまでの路面電車のイメージを一新させるものである。車両につきましては日本でも熊本市、広島市、岡山市など各地で導入され始めている。
提案のあったLRTの導入については、路面電車存続の延長上ものとして捉え、今年秋の交通社会実験の評価、あるいは本市のまちづくりとの整合性、適切なルートの選定のほか、国内外における諸都市での成功例、あるいは今後の建設費、財源あるいは社会情勢などを注視しつつ研究していきたいと考えている。
いずれにしても、導入や運営には議会あるいは市民の理解なくしてはできないものであると考えている。
<質問2>
将来の総合交通体系に向け、平成15年10月から11月までの2カ月の間にバスレーン実験、トランジットモール実験や路面電車実験など、総合型の交通社会実験の実施が予定されており、今期定例会の議案として路面電車実験やトランジットモール実験など、必要経費として約6,000万円の補正予算が提案されている。特に路面電車につきましては、既に名鉄は撤退の意思を表明されているところであり、平成16年3月には廃線届を提出し、平成16年度末には撤退をしたいとしている。このような状況における社会実験の実施ということから、この路面電車実験の必要性や意義が問われている。
また、東部地域等の沿線では存続に向けた市民の署名活動が進んでいる中、名鉄撤退後、路面電車は廃止されるのか、あるいは存続に向かうのか、その動向に多くの市民が関心を持っているところではないかと考える。
市長は、路面電車は主要な都市交通として位置づけ、有効に活用をしてまいりたいと、本議場において前向きな答弁をしている。市長が言うように都市交通として活用していくというのであるなら、名鉄にかわる新たな受け皿、例えば、市営交通のような形態であるとか、自治体などが中心となるような三セク方式といった受け皿が必要になるのではないか。
現在、路面電車の赤字は16億円とも17億円とも言われており、今後極力コスト縮減を進めたとしても、相当額の赤字発生が想定される。路面電車を存続するということになると、この赤字を誰が、どのように負担するのか、言いかえれば、赤字の補てんを前提にしなければ路面電車の存続は難しいのではないかと考える。路面電車の将来方向は社会実験による市民の評価や、現在、沿線市町が共同して実施されている「乗って残そう運動」の成果等を踏まえ、総合的な判断の中で決められていくものと考えているが、岐阜市を含め、沿線の関係市町が一体となって路面電車を残していくための枠組みが必要ではないか。
一度存続の方向に向かえば、半永久的に財政補てんをしつつ維持をしていかなければならないと思思う。さらに、路線通信施設のほか、施設の老朽化に伴う維持費の増大が今後予想されるなど、存続に向けては多くの問題や課題が想定される。一方、本市のまちづくりは、JR岐阜駅前広場整備や駅周辺再開発事業の推進、あるいは岐大医学部跡地の再整備計画など、大型プロジェクトを目前に控えている中、限られた財源の有効活用が求められており、路面電車の存続は財政問題を含め慎重に対処すべきであると考える。
名鉄は路面電車の経営から撤退するという意向が強いようである。しかし、名鉄は長きにわたり地域交通を担ってきた公共交通事業者として、その責任と役割を全うする義務というものがあるのではないか。赤字だからといって経営撤退を表明し、来年の春には廃止届を出すというように一方的に事を進めていく姿勢はいかがなものか。私企業として経営面を重視せざるを得ない点は十分理解できるが、もう少し市民や利用者の気持ちに配慮してほしいと考える。市長として名鉄に対し今後どのように対応されるのか。
また、仮に名鉄が路面電車経営から撤退した場合、その後について考えがあるなら、合わせてお聞きしたい。
<市長答弁>
名鉄に対する対応については、モータリゼーションの進展によって自動車を中心とする生活が定着し、市民の移動は容易になり便利な社会になった一方、人口密度が小さい市街地の拡大、あるいは県庁などの行政機能やショッピングセンターが郊外へ行く、あるいは中心市街地の空洞化など、まちづくりの面でさまざまな問題が提起されている。
また、少子・高齢社会の進展がさらに加速し、大気汚染などの環境問題も顕在化している。このようなまちづくりの問題あるいは社会状況の変化に対応するため、車社会の見直しが必要ではないかと考えている。特に総合交通政策では過度に依存した自動車中心の交通体系から、バスや路面電車などの公共交通が使いやすく、歩くことや自転車を重視し、これに車を加えた調和のとれた交通体系に転換を図っていくことが必要であると考えている。10月中旬から実施予定であるバス、路面電車、歩き、自転車に関するいわゆる総合型交通社会実験は、このような新しい交通政策を目指す中で、交通政策の効果あるいはそれに伴う影響を把握するものである。
名鉄への対応について、指摘があったように、名鉄は地域の公共交通を担っている交通事業者であるので、その責務を全うしていただきたいと考えている。また、存続に向けて市民を含めた約10万人に及ぶ署名も頂き、大変重く受けとめている。名鉄は経営撤退の意向を示しているが、このような背景を十分認識していただき、沿線市町の自治体とも一体となって強く存続を要望したい。
名鉄が経営撤退した場合の対応については、路面電車実験の効果や、あるいは影響を十分把握し、市民、利用者が路面電車を都市内交通機関としてどのように受けとめられるのか、こういったことについて評価をしていかなければいけないと考えている。
また、既に富山の万葉線では沿線市町と民間が出資する第三セクター方式により経営が継続されてている。さらに、三重県の北勢線では近畿日本鉄道株式会社から三岐鉄道株式会社への民間から民間へ譲渡する方式で、さらには福井のえちぜん鉄道では、県が資産を取得し、沿線市町が出資する第三セクターに無償で資産を譲渡する方式で経営が継続されているなど、新しい経営形態によって経営がなされている例もある。
このような他都市の例を参考にしつつ、財政負担も含め、できる限り経営コストの低減が可能となるような受け皿について検討するとともに、路面電車が必要であるとする市民の理解あるいは評価、交通体系における路面電車の都市内交通としての位置づけがされることが必要であると考えている。
<質問3>
今後のまちづくりの目指す方向として、高齢者を含むだれもが住みやすく、また活気があり、空気がきれいな環境に優しいまちづくりは、これまでの車中心のまちづくりを見直し、人が車に頼らないで歩いたり、自転車に乗ったり、路面電車、バス等の公共交通を利用して生活できる歩いて暮らせるまちづくりに向けて、交通政策の転換が求められている。
そこで、今後の合併後も視野に入れた総合交通政策について、市長の所見をお伺いしたい。
<市答弁>
各種実験結果を踏まえた今後の取り組みについては、これまでの実験及び秋に予定している総合型交通社会実験は、バスや路面電車の走行環境や利用環境の改善、新たなニーズ、需要に合わせてのバスの運行など、バスや路面電車のサービス水準の向上を検討してきたものである。これらのうち平成11年度に実験された公共交通優先システムについては、今年度、岐阜県警において本格導入される予定と聞いているが、その他の大洞団地、病院、商業施設を回るコミュニティーバス実験などについては社会実験の成果を踏まえ、さらに実現に向けて努力していくとともに、16年度に予定している総合交通体系の策定に生かしていきたい。
<中間のまとめ>
市議会側からLRTの導入が提案されていたとは思いもよらなかった。
そして、第三セクター等による経営継承も市当局からではなく、市議会側から出ていたとは知らなかった。市当局よりも議会側の方がより先進的かつ現実的な話をしていることになる。
対して岐阜市はというと、LRT導入については「導入や運営には議会あるいは市民の理解なくしてはできない」と答弁しているが、その理解に向けた具体的な努力をしてきたのだろうか。ここまで少しも見えないのだが。
第三セクターによる経営継承についても高岡市の万葉線、福井のえちぜん鉄道の事例を見てきたようだが、ここでも「経営コストの低減が可能となるような受け皿について検討する」と言いつつ、「路面電車が必要であるとする市民の理解あるいは評価、交通体系における路面電車の都市内交通としての位置づけがなされることが必要である」と答弁している。「市民の理解」という言葉が行政側の免罪符としてまかり通っているような気がしてならない。
受け皿を検討しているというのであれば、公表して議会の場で議論していけば良いものを、それもしない。
公表できるレベルにはない、熟度の低い案しかできていない、もしくはこれから検討するというのであれば、後手に回っている行政側の怠慢でしかない。岐阜市は名鉄による経営継続にあくまでも拘る様子が見える。
あと、いささか余談になるが、LRT導入に関する市長答弁の中で「ゴムタイヤで走行し騒音や振動がほとんど出ないものもある」と触れているが、何故持ち出してきたのか理解できなかった。
確かにゴムタイヤ式のLRTというのは欧米で導入実績はある。しかし、導入例はごく少数だと聞いている。
「LRT」という概念自体、最近でこそ広まってきたが、欧米での成功例について触れるなら従来の鉄軌道式でも成功例はある。あえて日本での導入実績がない「ゴムタイヤ式」を市長が出してきた意図は何だろうか。
普通に考えるなら、現存する路面電車をベースにLRTを整備する方が近道だと思うのだが・・・。
ここまで整理したら字数制限に抵触してしまった。
後編に続く。
今回は9月に開催された第4回定例会。
実施が間近に迫った総合型交通社会実験に関する経費が9月補正予算で計上されたため、これに関する質問が多いが、その内容を見ると、総合型交通社会実験の意義、名鉄に対して岐阜市当局へこれまでになく強い態度を求めるものが多い。
なお、本文中<答弁>は市当局、<市長答弁>は市長の発言をそれぞれ示す。
参考:「岐阜市議会議事録」
<質問1>
9月補正予算において、路面電車、トラッジットモールの実験、検証を行うため、総合型交通社会実験の経費が計上されている。将来的な本市の総合交通体系や環境問題、少子・高齢社会を考えると、広島市や熊本市で既に導入されている超低床で環境に優しく、さらに、国の補助があるLRTの導入、特にこのコスト的に地下鉄の10分の1のコストでできる。特に岐阜市のような都市にはちょうど手ごろな、新しい交通機関であるため、本市におけるLRTの導入を提案したい。導入に対しての考えを聞きたい。
<市長答弁>
LRTは従来の路面電車の機能を大幅に向上させた新しい時代の公共交通機関である。特に欧州を中心にいち早くLRTを使ったまちづくりが始まった。地球環境あるいは高齢社会の到来に伴うまちづくりの課題に対して、軽量化された電車構造で環境負荷が小さく、まちの活性化やまちづくりに役立つという点で着目されている。パーク・アンド・ライドあるいはトランジットモールなどといった都市交通施策の一部として構築されているのが特徴となっている。
代表的な導入都市としてはフランスのストラスブール等が挙げられる。ストラスブールでは郊外部はパーク・アンド・ライドや、同じプラットホームでバスと電車が乗りかえ、乗り継ぎができるなど、利便性の高い交通結節点が整備されている。また、中心市街地では、一般車、バス、タクシーの通行を禁止したトランジットモールが導入され、車の洪水で麻痺していた都心部がよみがえり中心市街地が活性化したという例もある。
これら欧米の都市では建設や運営に多額の税が充てられているのも現実である。また、車両は車いすが容易に乗り込める超低床であり、自動車と共存できる高い加減速性能、都市の景観をつくり出す高いデザイン性などを有している。中にはゴムタイヤで走行し騒音や振動がほとんど出ないものもあるなど、これまでの路面電車のイメージを一新させるものである。車両につきましては日本でも熊本市、広島市、岡山市など各地で導入され始めている。
提案のあったLRTの導入については、路面電車存続の延長上ものとして捉え、今年秋の交通社会実験の評価、あるいは本市のまちづくりとの整合性、適切なルートの選定のほか、国内外における諸都市での成功例、あるいは今後の建設費、財源あるいは社会情勢などを注視しつつ研究していきたいと考えている。
いずれにしても、導入や運営には議会あるいは市民の理解なくしてはできないものであると考えている。
<質問2>
将来の総合交通体系に向け、平成15年10月から11月までの2カ月の間にバスレーン実験、トランジットモール実験や路面電車実験など、総合型の交通社会実験の実施が予定されており、今期定例会の議案として路面電車実験やトランジットモール実験など、必要経費として約6,000万円の補正予算が提案されている。特に路面電車につきましては、既に名鉄は撤退の意思を表明されているところであり、平成16年3月には廃線届を提出し、平成16年度末には撤退をしたいとしている。このような状況における社会実験の実施ということから、この路面電車実験の必要性や意義が問われている。
また、東部地域等の沿線では存続に向けた市民の署名活動が進んでいる中、名鉄撤退後、路面電車は廃止されるのか、あるいは存続に向かうのか、その動向に多くの市民が関心を持っているところではないかと考える。
市長は、路面電車は主要な都市交通として位置づけ、有効に活用をしてまいりたいと、本議場において前向きな答弁をしている。市長が言うように都市交通として活用していくというのであるなら、名鉄にかわる新たな受け皿、例えば、市営交通のような形態であるとか、自治体などが中心となるような三セク方式といった受け皿が必要になるのではないか。
現在、路面電車の赤字は16億円とも17億円とも言われており、今後極力コスト縮減を進めたとしても、相当額の赤字発生が想定される。路面電車を存続するということになると、この赤字を誰が、どのように負担するのか、言いかえれば、赤字の補てんを前提にしなければ路面電車の存続は難しいのではないかと考える。路面電車の将来方向は社会実験による市民の評価や、現在、沿線市町が共同して実施されている「乗って残そう運動」の成果等を踏まえ、総合的な判断の中で決められていくものと考えているが、岐阜市を含め、沿線の関係市町が一体となって路面電車を残していくための枠組みが必要ではないか。
一度存続の方向に向かえば、半永久的に財政補てんをしつつ維持をしていかなければならないと思思う。さらに、路線通信施設のほか、施設の老朽化に伴う維持費の増大が今後予想されるなど、存続に向けては多くの問題や課題が想定される。一方、本市のまちづくりは、JR岐阜駅前広場整備や駅周辺再開発事業の推進、あるいは岐大医学部跡地の再整備計画など、大型プロジェクトを目前に控えている中、限られた財源の有効活用が求められており、路面電車の存続は財政問題を含め慎重に対処すべきであると考える。
名鉄は路面電車の経営から撤退するという意向が強いようである。しかし、名鉄は長きにわたり地域交通を担ってきた公共交通事業者として、その責任と役割を全うする義務というものがあるのではないか。赤字だからといって経営撤退を表明し、来年の春には廃止届を出すというように一方的に事を進めていく姿勢はいかがなものか。私企業として経営面を重視せざるを得ない点は十分理解できるが、もう少し市民や利用者の気持ちに配慮してほしいと考える。市長として名鉄に対し今後どのように対応されるのか。
また、仮に名鉄が路面電車経営から撤退した場合、その後について考えがあるなら、合わせてお聞きしたい。
<市長答弁>
名鉄に対する対応については、モータリゼーションの進展によって自動車を中心とする生活が定着し、市民の移動は容易になり便利な社会になった一方、人口密度が小さい市街地の拡大、あるいは県庁などの行政機能やショッピングセンターが郊外へ行く、あるいは中心市街地の空洞化など、まちづくりの面でさまざまな問題が提起されている。
また、少子・高齢社会の進展がさらに加速し、大気汚染などの環境問題も顕在化している。このようなまちづくりの問題あるいは社会状況の変化に対応するため、車社会の見直しが必要ではないかと考えている。特に総合交通政策では過度に依存した自動車中心の交通体系から、バスや路面電車などの公共交通が使いやすく、歩くことや自転車を重視し、これに車を加えた調和のとれた交通体系に転換を図っていくことが必要であると考えている。10月中旬から実施予定であるバス、路面電車、歩き、自転車に関するいわゆる総合型交通社会実験は、このような新しい交通政策を目指す中で、交通政策の効果あるいはそれに伴う影響を把握するものである。
名鉄への対応について、指摘があったように、名鉄は地域の公共交通を担っている交通事業者であるので、その責務を全うしていただきたいと考えている。また、存続に向けて市民を含めた約10万人に及ぶ署名も頂き、大変重く受けとめている。名鉄は経営撤退の意向を示しているが、このような背景を十分認識していただき、沿線市町の自治体とも一体となって強く存続を要望したい。
名鉄が経営撤退した場合の対応については、路面電車実験の効果や、あるいは影響を十分把握し、市民、利用者が路面電車を都市内交通機関としてどのように受けとめられるのか、こういったことについて評価をしていかなければいけないと考えている。
また、既に富山の万葉線では沿線市町と民間が出資する第三セクター方式により経営が継続されてている。さらに、三重県の北勢線では近畿日本鉄道株式会社から三岐鉄道株式会社への民間から民間へ譲渡する方式で、さらには福井のえちぜん鉄道では、県が資産を取得し、沿線市町が出資する第三セクターに無償で資産を譲渡する方式で経営が継続されているなど、新しい経営形態によって経営がなされている例もある。
このような他都市の例を参考にしつつ、財政負担も含め、できる限り経営コストの低減が可能となるような受け皿について検討するとともに、路面電車が必要であるとする市民の理解あるいは評価、交通体系における路面電車の都市内交通としての位置づけがされることが必要であると考えている。
<質問3>
今後のまちづくりの目指す方向として、高齢者を含むだれもが住みやすく、また活気があり、空気がきれいな環境に優しいまちづくりは、これまでの車中心のまちづくりを見直し、人が車に頼らないで歩いたり、自転車に乗ったり、路面電車、バス等の公共交通を利用して生活できる歩いて暮らせるまちづくりに向けて、交通政策の転換が求められている。
そこで、今後の合併後も視野に入れた総合交通政策について、市長の所見をお伺いしたい。
<市答弁>
各種実験結果を踏まえた今後の取り組みについては、これまでの実験及び秋に予定している総合型交通社会実験は、バスや路面電車の走行環境や利用環境の改善、新たなニーズ、需要に合わせてのバスの運行など、バスや路面電車のサービス水準の向上を検討してきたものである。これらのうち平成11年度に実験された公共交通優先システムについては、今年度、岐阜県警において本格導入される予定と聞いているが、その他の大洞団地、病院、商業施設を回るコミュニティーバス実験などについては社会実験の成果を踏まえ、さらに実現に向けて努力していくとともに、16年度に予定している総合交通体系の策定に生かしていきたい。
<中間のまとめ>
市議会側からLRTの導入が提案されていたとは思いもよらなかった。
そして、第三セクター等による経営継承も市当局からではなく、市議会側から出ていたとは知らなかった。市当局よりも議会側の方がより先進的かつ現実的な話をしていることになる。
対して岐阜市はというと、LRT導入については「導入や運営には議会あるいは市民の理解なくしてはできない」と答弁しているが、その理解に向けた具体的な努力をしてきたのだろうか。ここまで少しも見えないのだが。
第三セクターによる経営継承についても高岡市の万葉線、福井のえちぜん鉄道の事例を見てきたようだが、ここでも「経営コストの低減が可能となるような受け皿について検討する」と言いつつ、「路面電車が必要であるとする市民の理解あるいは評価、交通体系における路面電車の都市内交通としての位置づけがなされることが必要である」と答弁している。「市民の理解」という言葉が行政側の免罪符としてまかり通っているような気がしてならない。
受け皿を検討しているというのであれば、公表して議会の場で議論していけば良いものを、それもしない。
公表できるレベルにはない、熟度の低い案しかできていない、もしくはこれから検討するというのであれば、後手に回っている行政側の怠慢でしかない。岐阜市は名鉄による経営継続にあくまでも拘る様子が見える。
あと、いささか余談になるが、LRT導入に関する市長答弁の中で「ゴムタイヤで走行し騒音や振動がほとんど出ないものもある」と触れているが、何故持ち出してきたのか理解できなかった。
確かにゴムタイヤ式のLRTというのは欧米で導入実績はある。しかし、導入例はごく少数だと聞いている。
「LRT」という概念自体、最近でこそ広まってきたが、欧米での成功例について触れるなら従来の鉄軌道式でも成功例はある。あえて日本での導入実績がない「ゴムタイヤ式」を市長が出してきた意図は何だろうか。
普通に考えるなら、現存する路面電車をベースにLRTを整備する方が近道だと思うのだが・・・。
ここまで整理したら字数制限に抵触してしまった。
後編に続く。