Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

岐阜県等、旧岐阜3線復活計画に対して意見書を出す。

2005-10-29 20:52:48 | 鉄道(岐阜の路面電車と周辺情報)
3月に廃止された名鉄美濃町線、岐阜市内線及び揖斐線の資産を名鉄から取得し、再生を目指す「サン・ストラッセ」。
一週間前、その「サン・ストラッセ」が岐阜県、岐阜市をはじめとする沿線自治体に対して事業計画を提示したが、これに対する行政側の反応があった旨が29日の岐阜新聞朝刊で報道されていた。

記事の要旨は次のとおり。
○「サン・ストラッセ」に対し、岐阜県及び沿線市町は28日までに「関係者の十分な理解を得て課題に対し慎重に検討した上で進めるべき」とする意見書が送付された。
○意見書は、次の項目について明確にする事を求めている。
・鉄道運行に関する収支計画、資金計画が示されていない点
・廃線理由として赤字補てんのため多額の財政負担が必要だったが、そうならないよう具体的な根拠、明確な見通しが不明である点
・鉄道利用者が増加するとみている具体的な根拠が不明である点
・パーク・アンド・ライドの用地確保、整備計画、資金計画など具体的な計画がない点
・初期投資に関する資金調達計画の詳細
・バス路線との競合についての考え方
・長良川鉄道、樽見鉄道との調整、両社とのコンセンサスがとられているか不明な点

20日の「サン・ストラッセ」の申し入れに応える形で行政が開催した会合の場で示された事業計画は思っていたより詰める余地があったようだ。
いくら何でも20日の時点で収支程度は出ていると思っていたが、それも明確な物ではなかったようである。

これについては、名鉄からの資産譲渡交渉が進んでいないため、資産取得額が詰め切れていない事が大きい。
これについて「サン・ストラッセ」と共に再生運動に取り組んでいる人曰く、「名鉄から資産価格などの情報が得られず、しっかりした収支計算ができない。行政には、まちづくりの中で電車をどう位置づけるのかを含め一緒に考えてほしい」としている。

しかし、報道における意見書の中身を見ると「まちづくり」云々以前の問題として「事業」として詰めるべき課題が多い事がわかる。
報道から推測するに、事業計画の内容は「実施したいメニュー」を列挙しただけ、資金的な裏付けが弱かったのではないだろうか(技術的な問題点についても同様、これについては前回触れたので省略)。
そのような計画に対して行政が前向きに動ける道理もない。

正直な話、報道を見ている限り「サン・ストラッセ」の再生計画は同情すべき点はあるにしても、熟度が低いと言わざるを得ない。
「サン・ストラッセ」側は行政の力添えを期待している事が記事内のコメントから読みとれるが、行政の姿勢はやはり慎重なものになっている。

「もしも」はないが、今回の計画が昨年の廃止同意前に具体化していれば、名鉄から移行できていた可能性もある。
その時点で移行できていれば、技術的に検証が必要な「バッテリートラム」を持ち出す事もなかった筈だ。

その意味では岐阜の路面電車再生計画は全てにおいて後手後手に回っている。
今回の意見書に対する「サン・ストラッセ」の返答如何では行政がこの計画の実現性は「極めて低い」ものとして協議を取りやめる可能性もあり、この問題も正念場を迎えた感がある。
回答期限がいつか、記事中では触れられていない。
しかし、ボールが行政から「サン・ストラッセ」に戻った以上、早急な回答が必要な事は想像に難くない。
同社が意見書にどのような回答をするか注目したい。

追記:
今日の中日新聞夕刊では旧美濃町線の踏切で一時停止する車がまだ多い事が報道されていた。逆に長良川鉄道の踏切では一時停止しない車が多いという。
確かに、一時間当たりの本数は旧美濃町線の方が遙かに多かった。
それだけ路面電車の記憶が残っているということか。

ただ、役割を終えた踏切が残っている事は不用意な一時停止を招き、追突事故を招きかねないため、地元から埋めて欲しい旨の要望が出されている。
しかし、当の名鉄は「市や道路管理者と協議しているが、路面電車復活を目指す動きもあるため当面はこのまま」としている。
結局良きにつけ悪しきにつけ、再生計画の結末が出ない限り線路の撤去にも入れないという事なのだろう。

最新の画像もっと見る