Simplex's Memo

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「南極観測船ものがたり-白瀬探検隊から現在まで-」を読んで

2005-10-29 05:52:55 | 読書録(その他)
「南極観測」関係の本は出ているけれど、南極観測「船」関係の本は意外な事に出ていない。

南極観測船関係の資料として唯一手元にあるのが「船の科学館」に保存・展示されている「船の科学館 資料ガイド3 南極観測船宗谷」だけ。
新刊はもちろん、古書店の店頭でも見かけた事はなかった。

そんな折に日本の南極観測船について纏めた本書が出た。
オレンジ色をベースに白色のタイトルを配した装丁が実に「らしい」。
おかげでよく目立つ。

内容は「宗谷」、「ふじ」、現在の「しらせ」に至る三代の南極観測船はもちろん、明治時代の白瀬探検隊の「開南丸」の活躍までカバーする、まさにタイトルに偽り無く「南極観測船」の歴史をカバーしている。
これ一冊で南極観測船に関する事は網羅できているし、南極観測隊の歴史をも同時に語っている。

個人的に驚いたのは現在の「しらせ」の由来。
海上自衛隊の艦船名の命名基準に「人名」は入っていない。
防衛庁の通達では「名所旧跡のうち主に山の名」から命名する事になっている。
このため、特例として白瀬探検隊の隊長だった白瀬隊長に由来しているのかと思っていたが、本書でそれが間違いである事を知った。
正確には昭和基地の近くにある白瀬隊長の功績を称えて命名された「白瀬運河」が由来となっている。
このためだけに防衛庁は通達を「主として山の名又は氷河の名」に改正したというから、役所というのは艦船の命名基準一つ変えるのにも手間暇がかかると実感する。

本書がある意味非凡と思えたのは日本の「南極観測船」を主題に置きながら、「南極観測史」も同時に語りつつ、最後に「南極」の現状、各国の思惑まで描ききった点だろう。それでいて「詰め込みすぎ」という印象を与えないのは流石というしかない。

最後に本書の表紙について。
現在の「しらせ」ではなく、「しらせ」の後継船想像図が描かれている。

老朽化が進む「しらせ」の後継船が計画されているが、2004年度予算案でゼロ査定になった。その時の議論が記憶に新しいが、経済状況の変化等を考慮しても「宗谷」を南極観測船として送り出した時の熱狂はどこにもなく、一部関係者が中心になって盛り上げていただけのように思えたのは考え過ぎか。
それは「南極観測」に夢を、実利を共有しようとする人が如何に減ったかという事の裏返しではなかったか、そんな気がした。

幸い、「しらせ」の後継となる南極観測船は2005年度予算折衝で予算が認められ、2009年5月に完成する見通しが立っている。
その名前は現時点ではまだ決まっておらず、これまで同様に公募で決定される事になっている。
その名前がどうなるのか、いつ公募が始まるのか、その時を楽しみに待つことにしたい。

「南極観測船」、「南極観測」、そして「南極」に興味がある方なら一度手に取って損はない。

<データ>
「南極観測船ものがたり-白瀬探検隊から現在まで-」
小島敏男著 成山堂書店
定価 2000円(本体)
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