【随時更新】イスラエル軍「陸海空 攻撃準備 地上作戦に重点」
2023年10月15日 4時15分
イスラエル軍は14日、ガザ地区北部の住民に対し南部に避難するよう通告する一方で、ガザ各地に空爆を続けていて、ハマスもイスラエルに向けたロケット弾による攻撃を繰り返しています。
イスラエル軍はガザ地区への陸、海、空からの作戦を準備しているとしていて、大規模な地上侵攻の可能性が高まる中、住民の犠牲がさらに増えることが懸念されています。
目次
イスラエル軍 近く大規模地上侵攻に踏み切るとの見方強まる
ハマス最高幹部「パレスチナ人は土地を出ることはない」
EU 緊急首脳会議開催へ
イスラエル・パレスチナ情勢をうけてEU=ヨーロッパ連合は緊急の首脳会議を今月17日にオンライン形式で開くことになりました。
会議の開催を呼びかけたEUのミシェル大統領は、イスラエルの人々への連帯を示す一方でガザ地区の状況について「包囲され、基本的な必需品が欠乏し、さらに砲撃で破壊されているというガザ地区の悲劇的な状況は国際社会に警鐘を鳴らしている」として、人道支援を含めEUが一致した対応をとることが極めて重要だとしています。
さらにミシェル大統領はイスラエル・パレスチナ情勢が、▽ヨーロッパの社会での緊張を高め、治安にも影響を及ぼす可能性があることや、▽大勢の移民や難民がヨーロッパに向かう可能性があることを指摘し、各国に結束を呼びかけています。
また、EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は14日、ガザ地区への人道支援を7500万ユーロ余り、110億円余りとこれまでの3倍に拡大すると発表しました。
ヨーロッパ委員会は「イスラエルが国際人道法を順守したうえで自衛する権利を支持する。ガザ地区の罪のない市民が支援を受けられるよう取り組んでいく」としています。
イスラエル軍 近く大規模地上侵攻に踏み切るとの見方強まる
イスラエル軍とイスラム組織ハマスとの衝突ではこれまでにガザ地区で2215人、イスラエル側で少なくとも1300人が死亡し、双方の死者は3500人を超えています。
イスラエル軍は14日、日本時間15日未明、「軍は現在、陸、海、空からの連携した攻撃を含む幅広い軍事作戦を実行する準備を進めている。兵士たちは地上作戦に重点を置き、次の段階の作戦を実行する態勢を強化している」とSNSに投稿し、近く大規模な地上侵攻に踏み切るという見方が強まっています。
こうした中、ネタニヤフ首相は14日、ガザ地区との境界線に展開する軍の部隊を視察し、兵士たちを激励しました。
一方、イスラエル軍は14日、ガザ地区北部の住民に対して南部に避難するための2つの経路を示し、日本時間の14日夜10時までは危害を加えないとしていました。
しかし、ガザ地区南部のハンユニスにいる弁護士のラジ・スラーニさんはNHKの電話取材に対し「昼夜を分かたず空爆を受け、避難中の人々も吹き飛ばされている」と述べ、住民が避難している最中に空爆の巻き添えになっていると話しています。
また南部のラファには大勢の住民が避難しているほか、エジプトとの境界にある検問所に外国人を含む多くの人が押し寄せていますが、スラーニさんはラファに対しても空爆が行われていると話していました。
一方、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスも14日、ロケット弾による攻撃を続けています。
また、イスラエル軍によるガザ地区への空爆で外国人4人を含む人質9人が死亡したと発表し、イスラエル側をけん制しています。今後イスラエル軍がガザ地区への地上侵攻に踏み切れば、ハマス側との市街戦でさらに多くの住民が犠牲になることが懸念され、事態は緊迫の度合いを増しています。
ハマス最高幹部「パレスチナ人は土地を出ることはない」
ハマスの最高幹部のハニーヤ氏は14日、公表された演説で「侵略者の暴力に立ちはだかるガザの住民を称賛したい。どんな暴力を加えられてもパレスチナ人は土地を出ることはない。決してガザからエジプトに出ることはない」と述べました。
また「ガザで民間人が殺害されていることになぜ誰も声をあげないのか」と訴えて、国際社会を非難しました。
さらにハニーヤ氏は今回の攻撃の目的について「奪われた土地、捕らわれている仲間を取り戻すためだ。私たちはパレスチナ国家を樹立させるまで戦い続ける。そしてそれはもう目前だ」と主張し、徹底抗戦の構えを示しました。
ガザ地区で人権擁護活動の弁護士「私たちの土地で死ぬ」
ガザ地区で長年パレスチナ人の人権擁護活動に携わってきたラジ・スラーニ弁護士が14日、NHKの電話取材に応じ、ガザ地区で昼夜を問わず空爆が続いている状況を明らかにしました。
スラーニ弁護士の事務所はイスラエル軍がガザ地区の住民に避難先として指定した南部のハンユニスにあり、周辺の様子について「昼夜を分かたず空爆を受け、避難中の人も吹き飛ばされている」と述べ、避難している人も攻撃に巻き込まれていると証言しました。
さらにエジプトとの境界の検問所がある南部のラファに国連のスタッフも避難しているとしたうえで、検問所の近くでも13日夜と14日朝に空爆があったとして「ガザに安全な場所はどこにもない。私は避難せずに私たちの土地で死ぬ。従順な犠牲者になるつもりはない」として、イスラエルに対する不服従を貫く姿勢を示しました。
また、イスラエルが電力の供給を停止するとしている中でも、あらかじめ太陽光パネルを用意していたため携帯電話は充電できているものの、インターネットの通信状況は悪いということで、SNSのアプリを使用した通話も途中で切れました。
9年前の前回は住民に退避通告から1週間後に地上侵攻
イスラエル軍が前回、ハマスとの衝突を受けてガザ地区に大規模な地上侵攻を行ったのは9年前の2014年です。
この時は、住民に退避するよう通告が行われてから1週間後に地上侵攻が始まりました。
イスラエル軍がガザ地区への本格的な空爆を開始したのは7月8日。
イスラエル軍はこのあと地上侵攻の可能性があるとしてガザ地区の住民に退避を呼びかける通告を行っています。
OCHA=国連人道問題調整事務所によりますと、退避の通告が行われたのは7月10日。
イスラエルとの境界近くに住むガザ地区全域のパレスチナ人、およそ30万人が対象で、人口が密集する市街地に移動するよう事前に録音した音声を電話で伝える形で通告したということです。
通告はその後、繰り返し行われています。
3日後の13日には、イスラエル軍が上空からビラをまく形でガザ地区の北部の住民に対しその日の正午までに家を出て退避するよう通告しています。
さらに電話へのメッセージなどでガザ市近郊の住民およそ10万人に対し、16日の午前8時までに家を出て退避するよう警告します。
翌17日の午後10時半、イスラエル軍は地上侵攻を開始したと発表しました。
日本政府手配のチャーター機 邦人8人乗せドバイに到着
情勢が緊迫する中、イスラエルからの出国を希望した日本人8人を乗せた政府のチャーター機が、日本時間の15日未明、UAEのドバイに到着しました。
外務省によりますと、イスラエルとパレスチナにいる日本人は今月9日の時点で、およそ1300人で、イスラエル軍が大規模な軍事作戦に向けた準備を進めているとみられる中、日本政府は日本人の出国を支援するため、チャーター機1機を手配しました。
チャーター機には出国を希望した日本人8人が乗り、日本時間の14日夜11時半すぎ、テルアビブの空港を出発しました。
そして、日本時間の15日午前2時40分ごろ、UAE=アラブ首長国連邦のドバイに到着しました。
ドバイから先の目的地には、各自で移動手段を確保してもらうということです。
イスラエルから退避 日本人51人搭乗 韓国軍機がソウル近郊到着
イスラエルからの出国を希望した日本人51人を含む、200人以上を乗せた韓国軍の輸送機が14日の夜遅く、ソウル近郊に到着しました。
韓国軍は、イスラエルからの出国を希望する韓国国民のために輸送機を派遣し14日にイスラエルのテルアビブの空港を出発したあと経由地のスリランカを経て、昨夜11時前に、韓国・ソウル近郊の軍用空港に到着しました。
輸送機には、韓国国民163人のほか、定員に余裕があったことから、日本人51人とシンガポール人6人も搭乗していました。
スーツケースなどを手にしてタラップを下りてきた人たちは、滑走路で並んで出迎えた家族と抱き合うなどして喜びをあらわにしていました。
また、搭乗していた日本人たちは、韓国にある日本大使館の職員の案内を受け、入国手続きなどにあたっていました。
イスラエル南部の都市アシュドッドに住んでいた30代の日本人の女性は、「比較的ガザ地区に近い地域に住んでいたので、避難もしていました。出発が決まった時点で安心しましたが、現地の空港では出発まで爆発音が聞こえていました。韓国に着陸したときには機内で拍手が起きていました」と話していました。
イスラエル国内でロシア人16人死亡 8人行方不明
イスラエルとパレスチナの情勢をめぐり、在イスラエルのロシア大使館の報道官は14日、ロシア国営のタス通信に対し、これまでにイスラエル国内でロシア人16人が死亡し、8人の行方がわからなくなっていると明らかにしました。
“米情報機関 衝突激化の可能性 事前に把握” 米メディア
アメリカのCNNテレビは13日、複数の関係者の話としてアメリカの情報機関が政府内でイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が激化する可能性があると事前に把握していたと伝えています。
それによりますと、先月28日に、アメリカの情報機関がハマスがロケット弾による攻撃をエスカレートさせる準備をしていると分析し、ハマスがイスラエル側に奇襲攻撃を仕掛ける2日前の今月5日には、CIAがハマスによる暴力が増大する可能性があると政府内で警告していたということです。
分析では、ハマスの攻撃作戦の詳細や規模には触れられておらず、イスラエル側に事前に情報が共有されたかは不明だとしています。
中国外相 米に建設的な役割果たすよう求める
中国の王毅外相はアメリカのブリンケン国務長官と14日、電話で会談し、緊迫の度合いを増すイスラエル・パレスチナ情勢をめぐってアメリカが建設的な役割を果たすよう求めました。
中国外務省によりますとこの中で王毅外相は「みずからの安全を守るために罪のない民間人を傷つけることがあってはならない」と述べ、イスラエル軍が準備を進めているとみられるガザ地区への地上侵攻をけん制しました。
そのうえで「問題の根本的な解決策は『2国家共存』にあり、独立したパレスチナ国家を樹立してパレスチナとイスラエル双方の平和共存を実現することだ」と主張したということです。
そして、王外相は、国際的な和平会議をできるだけ早く開催するよう呼びかける考えを示す一方、アメリカが建設的な役割を果たすよう求めました。
これに対し、ブリンケン長官は「情勢の緩和と人道支援に関する国連の役割を支持するとともに、中国側と意思疎通や連携を強化していきたい」と述べたということです。
このほか、両外相は来月アメリカで行われるAPEC=アジア太平洋経済協力会議の首脳会議にあわせ、両国の首脳会談の実現が取り沙汰される中、関係を安定化させていくことを確認しました。
国連「ガザ地区のほぼ全員水不足の危機」
パレスチナ難民を支援するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は14日、声明を発表し「ガザ地区のほぼ全員にあたる200万人以上が水不足の危機に直面していて、生きるか死ぬかの問題となっている」と強い危機感を示し、給水所などを稼働させるために必要な燃料を直ちに供給するよう訴えました。
声明によると、ガザ地区では給水所などを稼働させるために必要な燃料の供給をイスラエルが打ち切ったため、水道網が機能しなくなっていて、安全に飲める水が枯渇しているということです。
またガザ地区で今月11日から続いている停電も水の供給を難しくしていると指摘しています。
このため、住民は汚れた井戸水を使わざるをえず、UNRWAは、感染症のリスクも高まっていると懸念を示しています。
UNRWAは「ガザ地区に直ちに燃料を届けなければ、深刻な脱水症状で命を落としてしまう人が出てくるだろう。その中には、子ども、お年寄り、女性も含まれる。人道支援に対する包囲網を直ちに解除してほしい」と訴えています。
米国務省 緊急性ない政府職員と家族 出国を認める措置
アメリカ国務省は14日、アメリカ国民向けの渡航情報を更新し、これまでに、エルサレムにあるアメリカ大使館とテルアビブにある事務所から緊急性のない政府職員と職員の家族について出国を認める措置をとったと発表しました。
理由は、イスラエルの治安状況が予断を許さないためだとしています。
英 パレスチナ系住民ら数千人規模の抗議デモ
ガザ地区をめぐる緊張が高まる中、イギリスの首都ロンドンでは14日、パレスチナ系の住民などによる数千人規模の抗議デモが行われ、イスラエル軍の地上侵攻をやめさせるよう政府に求めました。
参加者たちはパレスチナの旗を振ったり「パレスチナを解放しろ」などと声を上げたりしながら官庁街を行進し、首相官邸前に設けられたステージの周りに集まりました。
そして、イスラエルへの全面的な支援を表明しているイギリス政府の対応を批判するとともに、ガザ地区への攻撃の停止を訴えました。
ロンドン出身でパレスチナ系の人権活動家、リアヌ・モハマドさんは「友人の家族がいまもガザ地区にいて、私たちは皆恐怖におののいている。これは人道に反しているし、世界が見過ごし、イギリス政府が積極的に支援しているのは恥ずべきことだ。日本を含む国際社会にはこの残虐行為に対して声を上げてほしい」と話していました。
一方、ロンドン警視庁はイスラム組織ハマスを支持したりユダヤ人の安全を脅かしたりする行為は取締まりの対象になると警告し、周辺では1000人以上の警察官が警戒に当たっていました。
同様の抗議活動はこの日、世界各地で行われ、ガザ地区への地上侵攻を含む大規模な軍事行動への懸念の声が高まっています。