世界のサプライチェーン危機再現の恐れ、中国の厳格なコロナ対応で
Brendan Murray、Ann Koh、Kevin Varley 2022年4月26日 12:28 Bloomberg
- 港湾の停滞が22兆ドル規模の世界貿易に打撃、数カ月続く可能性
- 先進国の供給ラインの大転換につながる契機か
中国が新型コロナウイルス感染拡大を抑制するため厳格なルールを維持していることで、アジアと米国、欧州間のサプライチェーンに今年の夏も混乱の波が押し寄せそうだ。
中国の武漢市で初めて確認された新型コロナ感染が世界経済に衝撃を広げてから2年余り経過し、感染拡大の起点となった中国では、このところの感染再拡大への対応で当局が「ゼロコロナ」方針を続けている。中国の港湾の渋滞とロシアのウクライナ侵攻によるダブルパンチは、既に物価上昇圧力や成長への逆風に見舞われている世界経済の回復を脱線させかねない。
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中国がコロナの封じ込めに成功したとしても、停留中の貨物船が動き始めることで混乱が世界中に波及し、今年いっぱい続く恐れがある。
「昨年よりも大きな混乱が予想される」とコンテナ取扱量欧州2位のアントワープ港のジャック・ファンデアマイレン最高経営責任者(CEO)はインタビューで指摘。「マイナスの影響があるだろう。2022年全体で大きなマイナス影響だ」と語った。
中国は世界貿易の約12%を占め、コロナ対応の制限措置が工場や倉庫の操業停止、トラック運送の遅延、コンテナ輸送の停滞悪化などを招いている。米欧の港湾は既にあふれ、さらなる衝撃に対し脆弱(ぜいじゃく)な状態にある。
「製品輸出の活動が再開し、米西海岸の港湾に多くの船舶が向かうようになれば、待ち時間が大幅に増えるとわれわれは予想している」とサプライチェーンリスクの分析会社エバーストリーム・アナリティクスのジュリー・ガードマンCEOは指摘した。
22兆ドル(2800兆円)規模の世界貿易取引にとって貨物の積み上がりは、短期的にコスト増を伴う頭痛となる。世界貿易は20年に落ち込んだ後、昨年は回復した。こうした混乱のより長期的な影響は、越境取引で結ばれている世界経済の姿を塗り替えつつある。一部の企業幹部は、広範囲に広げた生産ネットワークの縮小について、もはや愛国的な政治スローガンではなく、あらゆる不確実性を踏まえたビジネス上の必然と捉えるようになっている。
「こうした状況は、サプライチェーンをより地域的なものにする必要性を加速させている」と、工業施設や物流センターの開発を手掛けるメキシコ企業ベスタのロレンソ・ベロCEOは先週の電話会議で指摘。アジアへのエクスポージャーを減らす方法として、メキシコなどより距離の近いサプライチェーンへのシフトが起きているという。「われわれが知っている形のグローバリゼーションは終わりつつある」と同CEOは語った。
主要国の政策当局者も、先進国の供給ラインにおける大転換の必要性という考え方に同調しつつある。イエレン米財務長官は、新時代の国家間の経済協力のビジョンとして、サプライチェーンを信頼できる国々に限定して構築する「フレンド・ショアリング」を提唱した。
こうしたシフトが進むかどうかは、コロナのパンデミック(世界的大流行)を契機に、価格が高くても本国により近い場所で生産された製品を消費者が受け入れるようになるかどうかに大きくかかっている。少なくともコンサルティング会社1社の分析では既にそうなっているようだ。
サプライチェーンの移転は「コスト増を招く可能性があるが、より少ない量を正価により近い価格で販売できるようになれば、事態を一変させることが可能になる」とカーニーのパートナー、ブライアン・エーリグ氏は指摘する。同氏が共同執筆者の今月のリポートによれば、CEOの78%はリショアリング(生産拠点の国内回帰)を検討中か既に実施している。同リポートの執筆を助けたカーニーのプリンシパル、シェイ・ルオ氏は「グローバリゼーションは決して死なないが、別の形に進化すると考える」と分析した。
サンフランシスコを拠点とする運送会社フレックスポートによると、アジアの工場で出荷準備が整ってから製品が米国の倉庫に到着するのにかかる日数は平均111日と、1月に記録した過去最長の同113日に近い水準にとどまっており、19年の2倍余りだ。欧州行きの西周りの輸送時間はさらに長く、過去最長に近い118日となっている。
原題:
Global Supply Chain Crisis Flares Up Again Where It All Began(抜粋)