富山きのこクラブ

富山のきのこ情報・きのこ料理の情報が集まります。

学術交流会

2008年06月20日 | インポート

某研究会との学術交流会があった。
朝、上越新幹線に遅れが出て、結局2名の方が工場見学できないこととなった。
副会長も同じ列車で移動していたようで、昨日掛かっていた招集も解除されたようだ。それにしても、副会長の最終講演・歓送パーティとバッティングするなんて…とんでもない日を選択したものだ。
所長の挨拶も、当社の発表も無事に終了し、つつがなく懇親会も終了した。
帰りに、担当者とご苦労さんをやったら…現状の組織について散々愚痴をこぼされてしまった。

一昨日から北陸も入梅したそうだ…岩瀬運動公園のヤマドリタケ群はどうなっているのだろうか?橋屋さんたちは浅井さんの顕微鏡講座を聴講して満足されているのだろ…羨ましい限り。明日は、鮎の解禁日。明後日は顕微鏡講座。


レモン色系のモリノカレバタケ属菌

2008年06月16日 | インポート

富山きのこクラブの皆様

有峰/砥谷半島のぶなの樹下で見つけた「コガネカレバタケ」について、井口さんからコメントを頂きました。とても興味深い内容でしたので、井口さんにお許しを頂いて、ここに転載します。
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伊藤春雄 さま:
 コガネカレバタケに対しては、「青森のきのこ(工藤伸一ら、1998)」の中でCollybia subsulphurea Peckの学名が当てられ、いちおう日本産のきのこ戸籍簿に追加されたことにはなっていますが、日本産の標本に基づく詳しい記載はまだ与えられないままになっています。
 「コガネカレバタケ」らしいきのこは、ネット上での情報検索などによれば、秋田・富山・千葉・神奈川・京都・兵庫・広島・三重などから見つかっているようですが、いかんせんこれらの情報のもとになった実物標本を詳しく検討することが難しくて困っております。

 学生時代(1981年)、北米ロッキー山脈内での某きのこの会の採集会で、Orson Miller博士から教えてもらった C. subsulphureaは、外観はやせ形のニガクリタケといった風情で、柄やかさは幼時からレモン色を呈し、柄の基部に付着した根状菌糸束は淡いオレンジ褐色(乾くと肌色)となり、柄の下方は完全に平滑なものでした(いまでも乾燥標本は保管してありますが、検疫を通過してないので、おおっぴらに発表できません^^;)。
 なお北米産の標本は、充分に湿った時には、かさの周辺部に短い条線を生じるが、オリーブ色を帯びることはない」という Miller博士の説明でした。

 長沢栄史先生も指摘しておられたのですが、「青森のきのこ」に図示されたものや、私が神奈川県川崎市(生田緑地)で採取したものは、柄が顕著にオレンジ色を帯び、かさは湿った時にもほとんど条線をあらわさない点で C. subsulphureaとするには疑問があります。神奈川県産の標本では、柄の下部はオレンジ色の粗毛を有することが多く、根状菌糸束はほぼ白色でしたので、やはり C. subsulphureaの学名を当てることには無理があるような気がしています。

 また、京都(スギ林)で採集したものは、幼時はかさが顕著にオリーブ色を帯び、湿った時にはかさの周縁部に短い条線をあらわすものでした。最初は「針葉樹林生でかさがオリーブ色を帯び、かさの縁に短い条線を生じるもの」と「広葉樹林に発生し、かさが最初からレモン色で、かさの縁にはまったく条線を生じないもの」の二つに分かれるのかと考えましたが、これらは、現時点での私的観察データに基づく限りでは同一種の変異とみるべきか、と最近では思っています。
 いずれにしろ、日本産のものに C. subsulphureaの学名を与えるのは現時点では無理があると思われます。C. subsulphureaは、もともと北米産の菌ですので、北米の菌を実際によく観察してから出ないと学名を決めるのは無理かな、と考えます(良心的なきのこ研究者としては)。

 なお、千葉県では、2~3月ごろにメタセコイア・ラクウショウ・コウヨウザン・スギの樹下のりター上に発生する類似種(これも学名はまだ未決定ですが)があります。
 この菌は、成熟しても、かさがやや緑色を帯びたレモン色(日本茶のような色)を呈し、ひだや柄はレモン色で、根状菌糸束も帯緑黄色を呈しています。担子胞子が、モリノカレバタケや日本産の「コガネカレバタケ」と比べて短くて丸みが強いことに加え、かさの表皮の構造においても異なるもので、北米で採集した C. subsulphureaと日本産「コガネカレバタケ」の中間のようなきのこです。
 C. subsulphurea≠「コガネカレバタケ」≠千葉県産の黄色い菌、ということで、「日本には黄色いCollybiaが二種分布するが、二種ともに、おそらくは北米産 C. subsulphureaとは別種であろう」というのが、今の時点での私の見解です。
 かさが黄色くブナ帯に生える菌(「青森のきのこ」や「北陸のきのこ」に図示されたもの)と、京都などから見出された菌(針葉樹林に発生し、かさが幼時にややオリーブ色を帯びるもの)とが同一種なのかどうかはさらに検討する必要がありますが、「針葉樹林生で緑色を帯びるもの」もまた、北米産の C. subsulpureaには当てはまりません。

 いずれにしても、まだ標本があまりにも少なすぎますので、逆に、レモン色系のモリノカレバタケ属菌が採集されましたら、ぜひ小生のもとへお送りいただきたいとお願いしたいところです。
 問題提起だけに終わってしまって恐縮ですが、協力して「黄色い Collybiaの正体」を明らかにしていきましょう♪

PS:生田緑地産の標本に基づく記載は、大略、以下のとおりです:
かさは粘性を欠き,径 1.5-5?程度,鈍黄色(中央部は橙黄色~橙褐色)を呈し,弱い吸水性を示す.ひだは密で幅狭く,柄に上生する.柄は長さ3~6cm,径4~8?程度,時に平たく偏圧され,橙黄色~淡橙褐色を呈し,基部は淡褐色の粗い毛状菌糸を備え,中空である.
担子胞子は一端がやや尖った楕円形~種子形で無色・平滑,非アミロイド性,時に微細な油滴を含み,大きさ 5.0-6.7×2.9-3.8μmである.側シスチジアはなく,縁シスチジアは円筒形で時にY字状に分岐し,無色・薄壁で大きさ 10.5-29.8×5.0-8.0μmである.かさの表皮はモリノカレバタケ型(菌糸はしばしば分岐し,かさの上面観においては不規則に絡み合う)をなし,構成菌糸の外面にはしばしば淡黄色の色素塊が不規則に沈着する.菌糸は多数のクランプを備える.
コナラ・シロダモ・シラカシなどを主とする広葉樹のリター上に,束生あるいは点々と発生する.
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