6月上旬のイギリス旅行前、オックスフォードに1泊2日を計画していたので資料を探した時にこの本のことを知りました。
令和天皇がまだ昭和の時代に2年間留学したオックスフォードについて書いたもの・・・
旅行の参考になるかどうかは別にして、興味を持ったので図書館を検索したら、折しも「令和ブーム」のせいか予約待ちが多くて、今ごろ借りることができたのでした。
結果、天皇のオックスフォード滞在は1983~5年ともう36年も前から、にもかかわらず、あの街の歴史からして(古いコレッジは12世紀から)情報としての古さはない。
それよりも、さすがに留学生としての大学生活と学者研究者の話や、皇族として英国やヨーロッパの王族や貴族、旧家との交流についてを一人称で書かれた文章を読むのは、絶対に自分にはできない体験手記としてとてもとても興味深いです。
例えば、「入学式で新入生全員の点呼の時、Mr. Naruhitoと呼ばれて同級生大爆笑だった」というくだりがあって、私は最初すぐにはピンとこなかったけれど(本にも解説はない)敬称はPrinceだし、それに皇族には名字がないのでファーストネームに敬称をつけてしまった、という点でも2重におかしかったのでした。
学生としては広い、ベッドルームと書斎が別になった2部屋に専用のバスルームがついた寮部屋を使い、隣室には警護官(おお、ボディガードですね)も寝泊まりしている点は平民とは違うけれど、
共用の洗濯機で自分の洗濯物をして街で買ってきたアイロンとアイロン台で自分でアイロンをかけた話や、ディスコに繰り出したらジーンズ着用で断られた(自分が何者であるかを言うような無粋なことはしない、とも)話など、
一般人のような自由な暮らしができてとても楽しめた海外生活だったようです。
とはいえ、それは街中での話で、
オックスフォード入学前の、3ヶ月間の語学研修期間も、日本で英語教師経験のあるご夫妻のご自宅にホームスティが準備され、
日本大使館の援助、
英国王室との交流だけでなく、ヨーロッパの各王室にご招待され、平成天皇夫妻がヨーロッパを訪問された時にはその先の王室に招待されて家族と再開など、
ドラマ「ヴィクトリア」で見たようなシーンが、日本語で回想されているのを読むのはおもしろいです。
そして、「このような暖かいもてなしを受けられたのは両親が各王室と友情を築いてくれていたおかげだ」と感謝の気持ちを述べて「次の世代に受け継がねばならない」との感想に、下世話ながら、友情を引き継げる社交の才能を持った美しいお妃を選びたいとオックスフォード時代に決意されたに違いない、と私は思ったりしたのでした。
スコットランド訪問の時には、クランの方々と話をして、イングランドに征服されたためにスチュアート朝直系の自分たちの王を英国王にできなかった無念怨念を幾度となく話された、と、スコットランドの貴族が歌う「スカイボード・ソング」を聞いて故国への愛着を汲み取りイングランドとスコットランドの歴史を超えた対立に言及する察しの良さに、改めて新しい天皇にもっと政治的権力があった方が日本のためなのでは・・・とも思ったのでした。