ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

喝采を浴びるために彼女は

2024-03-25 11:53:37 | 

すらりとした長身

端正な顔立ち

パリオリンピックの代表選考会

女子200メートル決勝

第4レーンに大橋悠依の姿はあった

 

彼女は東京五輪の個人メドレー200・400mの金メダリストである

しかし、この選考会で女王は窮地に立たされていた

400mは4位で代表を逃した

10才程も若い力に屈したのだ

「200で代表になれなければ多分やめる」

偽りのない本音だろう

もはや彼女に後はなかった

 

このレースに全てをかけた気迫に

持ち前の美しさを加えた泳ぎ

背泳ぎ、バタフライ、平泳ぎをこなし、トップに立った

残り50メートル、自由形の勝負

大橋は若手の追随を許さなかった

体半分のリードを保ち、逃げ切った

 

しかし、これでオリンピックの切符が手に入った訳ではない

設定タイムを上回らない限り、代表落選となるのだ

大橋は電光掲示板を見上げた

少しして彼女は安堵の混じった笑顔を見せた

記録は設定タイムを大きく上回っていた

 

東京五輪で金メダリストになり、モチベーションの維持に苦しんだ

しかし、まだひとつだけ手に入れていないものがあった

東京はコロナ渦で無観客だった

次のオリンピックでは満員の観衆の前で泳げるのだ

彼女は喝采を浴びるためにパリへ行く

 

 

 

 


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