ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

大人になるにつれ、かなしく(56)

2017-01-02 21:16:14 | Weblog
大学病院での患者へのカウンセリング終了後、いつものようにインスタントコーヒーを飲み、携帯のメールをチェックしていた。山野氏から「5万部突破しました」との連絡。こないだ山野氏と電話で話した時、もうすぐ5万は越えると聞いていたので、さして驚きはなかった。彼は前のめりで、「10万部はいけると踏んでいる」と鼻息荒く言った。さらに「次の作品の準備をして欲しい」と貪欲さを隠さない。

しかし、僕には当分、本を出版するつもりはない。「すぐに使える認知行動療法」でアウトプットしたのだから、しばらくはインプットに専念しなければならない。臨床心理士の資格とて、絶え間なく実践と研究を積み重ねていかなければ、維持できるものではない。

それに、この本を出版した動機は、有紗に本に携わる仕事を続けて欲しかったからだ。藤沢の回復しだいでは、退院して自宅介護という可能性もなくはない。それは喜ばしい事だが、有紗が書店員の仕事を続けるのは困難になる。出版することで、書店員としての有紗を自分なりに守ろうとしたつもりだった。出版が決まってからは、万一、印税が入ったら、有紗に半分渡すつもりだった。だからこそ、売れる本を書こうという意識が芽生えたのだ。しかし、その話をしても、彼女は相手にすらしてくれなかった。だから、もう本を書くエネルギーはない。

この後、K病院へ向かうつもりだ。藤沢に見せたいものがあるし、有紗に渡したいものもある

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