ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

大人になるにつれ、かなしく(18)

2016-12-20 21:20:19 | Weblog
「えっ、何で?」

「電話で話している時も、様子がおかしかったし、矢野は今日も来ないし」

「ああ、別れた。去年の暮れ、クリスマスまで持たなかった」
藤沢はあっさり認めた。

「だったら、そう言ってくれればよかったのに」
僕は少し不満だった。

「あの時はなあ。誠も大事な時だったし。それとどこかで、有紗とよりを戻したい気持ちがあったのかもしれない」

「ああ、そうだったのか」

「今日だってここへ来るように誘ったんだよ。連絡は取れる関係なんだ。だから、お前におめでとうと伝えて欲しいと頼まれたのは本当だ」
藤沢は少し淋しそうな顔をしていた。

「いま、俺たちがここにいることは知ってる訳だから、気が変わって来るかもしれないな」
藤沢への慰めの言葉でもあり、実際に、彼女が姿を見せるのではないかという、淡い期待を抱いていた。

「無理だよ。あいつ、新しい彼氏できたんだ。やっぱり過去は今にはかなわないって事だ。同じ大学の奴らにはかなわない。それは俺もだ。キャンパスの女の子が眩しく見えるんだ」
藤沢は苦笑しながら言った。

「さあ、ナポリタンできたよ」
少し沈んでしまった場を再び浮かび上がらせるように、白川さんは声を張った。

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