ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

片隅のユミ

2024-05-09 12:11:56 | 

ユミはいつものように

教室の机にもたれ掛かって眠っている

教師が二度ほど机を叩いた

目を覚ます気配はない

教師は舌打ちして通りすぎた

 

ユミ、パパは仕事で帰りが遅くなるから

ママのこと、よろしくね

学校が終わったら真っ直ぐ帰ってな

出来る限りでいいから

父はありがちな笑みを浮かべ、玄関を出た

 

学校から自宅に戻ると

ユミは母と共に過ごす

夕食を作り

入浴を介助し

夜中は肩を貸し、トイレに連れていく

 

憧れていた男子生徒からの誘いも、断り続けた

終いには「そんなに俺が嫌いか」と捨て台詞を吐かれた

彼のせっかちな背中を

見詰めるユミの目から涙が溢れ

やがて頬を伝った

 

ユミはいつものように

教室の机にもたれ掛かって眠っている

髪が羽根のように拡がっていた

それは深い眠りだった

もう目を覚ます必要はない

ユミは夢の中で誓った

 

 

 


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