SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

バード・サンクチュアリ

2007年03月18日 00時00分01秒 | ピアノ関連
★メシアン:《鳥のカタログ》
                  (演奏:アナトール・ウゴルスキ)
第1巻 第1番:キバシガラス
     第2番:キガシラコウライウグイス
     第3番:イソヒヨドリ
第2巻 第4番:カオグロヒタキ
第3巻 第5番:モリフクロウ
     第6番:モリヒバリ
第4巻 第7番:ヨーロッパヨシキリ
第5巻 第8番:ヒメコウテンシ
     第9番:ヨーロッパウグイス
第6巻 第10番:コシジロイソヒヨドリ
第7巻 第11番:ノスリ
     第12番:クロサバクヒタキ
     第13番:ダイシャクシギ

           ニワムシクイ
                 (1993年録音) 
前回記事で触れたように、代々木公園にはバード・サンクチュアリなるカラスの巣窟、否、都心には珍しい野鳥の楽園がありました。

よく訪れる野鳥につき、看板まで掲示されていたようなので、それに倣って鳥にまつわる曲を収めたディスクをご紹介しようという趣向です。私にしては珍しく、きわめてまともな発想の記事だと考えております。(^^)v

まずは何といっても“鳥のカタログ”ですよねぇ。
代々木公園の看板など比ではないぐらい、多くの鳥たちが紹介されていますね。
このメシアンという作曲家は、日本の軽井沢でも鳥の鳴き声をテープに収録して音化するべく分析研究をしていらしたらしいのですが、やはり経験なクリスチャンが“神の使い”だと鳥のことを思っていた・・・その思いの強さを髣髴させる力作であると思います。

この作曲家の場合には、どこが何の鳥が何をしているところだとストーリーがちゃんと明確になっているようですが(解説に詳しく書いてあります)、私個人としては何の思い込みもなく、とりあえずこの作曲家の楽譜を下敷きにピアニストにより繰り出される音響を受け止めること、敢えて言うなら浴びることを心がけますね。
そうするとメシアンの曲に共感した手練れのピアニストが弾いた演奏であれば、人間くささも志の高さも、もちろん形而上的な要素も感じ取れ、何かしら心の内に信仰心にも似たイメージが浮かぶのを感じます。

全ての事象がとっても抽象的に表現されているのだけれど、感情に訴えてくるところだけはリアルに感じられるのよね。
常にじゃないけど人肌が感じられる瞬間があるのが、他のゲンダイオンガクカと呼ばれる人たちとの決定的な差でありますな。

ウゴルスキは、さすがこの曲にはきわめて強い共感を覚えたと言っているだけあって、手の内に入った素晴らしい演奏ではないかと思います。テレビの実演で本当に陶酔的にこの曲の一部を演奏しているところを見たことがあります。あの姿にうそはないと思いました。
ウゴルスキにとってのエポックメイキングな作品を、万全な準備のもとに細心の注意を払って(楽譜を確認しながら)弾き表していた・・・。
このCDの演奏でも、きっと自身の解釈を何度も確認してメシアンが感じたことをその極めてデリケートな感性で、ピアノのクラルテに託すことに成功した演奏だと思います。

そうはいっても大曲だし、現代音楽としてのソノリティーもふんだんに感じられる楽曲でありますので、人様に大声で一聴をお勧めするようなことはしませんが・・・。

それにしても、冒頭の曲がカラスだなんて、やはりカラスのしたたかさを感じますね。

★ひばりとカッコウ
                  (演奏:ヴァーノン・ハンドリー指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団)
   
1.ヴォーン=ウィリアムス:揚げひばり
2.ヴォーン=ウィリアムス:劇音楽「すずめばち」 ~アリストファネスの劇のため
3.ヴォーン=ウィリアムス:プレリュードとフーガ ハ短調
4.ディーリアス:間奏曲 ~歌劇「フェニモアとゲルダ」より
5.春初めてのカッコウを聞いて
6.そりすべり
7.イメルリン前奏曲
8.ラ・カリンダ ~歌劇「コアンガ」より (フェンビー編)
                  (1977年~1985年録音)

ヴォーン=ウィリアムスとディーリアスというカップリングの一枚です。
タイトルが“ひばりとカッコウ”だなんて、まさにバード・サンクチュアリというに相応しいディスクじゃありませんか?

この指揮者もこのテの曲が得意とみえて、何も変わったことはしていないと思いますけれど積極的にツボを押さえた聴かせる演奏になっています。
春の陽を浴びた幸せな楽曲・演奏と言えましょうか・・・。
ディーリアスの管弦楽曲といえば、ビーチャムやバルビローリの演奏が定評のあるところですが、この“ヴァーノン・ハン鳥ー(^^)v”の演奏も最も新しい名演奏と言っても過言でないと思います。

といって、いつもちゃんと聴くというより、ポケッと聞き流すか(殆どのディスクがそうだろう・・・とか勘ぐらないように!)、別の仕事をする時のBGMでかけ流していることが多いのですが・・・。
その意味ではとっても使い勝手があるディスクであります。

★サン=サーンス:チェロ協奏曲 第1番
                  (演奏:スティーヴン・イッサーリス) 
   
1.チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33 (オケ:マイケル・ティルソン・トーマス指揮 ロンドン交響楽団 )
2.白鳥 ~「動物の謝肉祭」より (ピアノ伴奏:マイケル・ティルソン・トーマス&ダドリー・ムーア)
3.ロマンス 二長調 作品51 (ピアノ:パスカル・ドゥワイヨン)
4.ロマンス ヘ長調 作品36 (ピアノ:パスカル・トゥワイヨン)
5.チェロ・ソナタ 第1番 ハ短調 作品32 (ピアノ:パスカル・ドゥワイヨン)
6.サッフォー風の歌 作品91 (ピアノ:パスカル・ドゥワイヨン)
7.ガヴォット (遺作) (ピアノ:パスカル・ドゥワイヨン)
8.アレグロ・アパッショナート 作品43 (ピアノ:パスカル・ドゥワイヨン)
9.祈り 作品158 (オルガン:フランシス・グリエール)
                  (1992年・1993年録音)

イッサーリスによる、チェロ名曲の定番の演奏であります。
このディスクをチョイスした理由は、数ある“白鳥”のディスクのうちでも元々サン=サーンスが書いたとおりの2台のピアノによる伴奏によるものであるためであります。
作曲者は、もともと私的な演奏会程度を念頭に作曲しており、これを公にするつもりはなかったのだといわれてますよね。
リストがこれは出版すべきだと推したとかいう話・・・。ホントかしら!?
いずれにしても、これが本来の“白鳥”の演奏スタイルであるのは間違いないところであると思います。

しかも、その伴奏ピアニストは1人目がマイケルティルソントーマスであることはともかく、もう一台のピアノは俳優のダドリー・ムーアなんですって!
彼がピアノに堪能であることはつとに有名ですが、こんなところに名前を連ねるなんて、やはり相当の腕前なんでしょうね。小市民の私は、思わずあら捜しのために耳を立てましたが、ごくごく流麗に曲は流れていきます・・・。恐れ入りました。
まあ、曲の説明は無用でしょうし、演奏は可憐にカンタービレなカンティレーナという“か”の3段活用ってことで・・・あとは特に付け加えることはござんせん。
それはそれで、いいことなのかどうかわかりませんが・・・もしかしたら、褒めていないかもしれませんね。

“白鳥”のディスクとして選んだ理由にウソは有りませんが、このディスクを紹介したかった理由はもう一つあります。

それは、最後に“祈り”というオルガン伴奏の1曲があるから・・・です。

もちろん“白鳥”がサン=サーンスの最も有名な作品であり、すこぶるつきの名曲であることに異存は有りません。
作曲者の思い入れの深さがどうだったかは知りませんが、後世の人間にとって、“白鳥”以外のサン=サーンスの作品を知っている人のほうが少ないのではないかと思いません?
逆に“白鳥”を聴いたときに、よしんば作曲者を知らずとも曲まで聴いたことがないという人もまた少ないのではないでしょうか。

私はチェロの荒庸子さんによる“白鳥”の演奏をかぶりつきで聴いた時に、息の長い旋律の半ば、ボウイングする弓の圧力をグッとかけられると、ガッと心をつかまれるような思いがしたのを生々しく覚えています・・・。
名演奏家の手にかかると、心がサイコキネシスで振り回されるような気がするときってしばしばありますよね。まさに、そんな感じだったのです。

こんなに有名で、名演奏にも事欠かない作品であるにも拘らず、私にとってはこの“祈り”が存在するがために、サン=サーンスの最高の作品として認識されていないという事実をお伝えしたかったのです。
簡単に言えば「“祈り”は稀有な名曲ですよ」言いたいだけだったりして・・・。
この静謐で敬虔な空気に満ちた小品、サン=サーンスの人生最期の瞬間にこの世に遺してくれた作品がもっと人口に膾炙したものにならんことを願っています。

ここまで引っぱった理由は、サン=サーンスの“白鳥の歌”だと言えば「鳥の関係の曲になるな!」と思ったためでありますが、私は本当に掛け値なしの名曲であると信じていますですよ。


このほか鳥に関するディスクといえば、以前の記事でご紹介した中にもキーシン・有森さんによる凄く耽美的な楽曲であるグリンカ作曲(バラキレフ編曲)“ひばり”のそれぞれに特徴ある演奏やら、高橋多佳子さんのみならず多くの人の録音があるムソルグスキー“展覧会の絵”の“殻をつけたヒナの踊り”なども挙げられるんでしょうけど・・・。

さらにさらにご紹介したことのない曲では、例えばグラナドスの“ゴィエスカス”に“嘆き、またはマハと夜ウグイス”とか出てくるし、コロラトゥ~ラ・ソプラノの超絶的な曲も鳥がらみのものがあったような気がしないでもありません。これらは、またの機会にご紹介できればと思います。


最後の最後に、私が子供がつまんないことを言ったときなどにあざけって歌う鳥の歌を・・・

 ♬~ しぃらけどぉりぃ とぉんでゆぅく~ みなみのそぉらぁへ みじめ・みじめぇ~~~

(鳥だけに)トンデモでもいい、たくましく育ってほしい! (^^)v