事前相談

結婚式の打ち合わせではないかと

思われるような若い二人が、担当者と

一緒にうれしそうに話している光景を

時々見かけることがあります。

二人のお顔は笑みを浮かべ、目は輝き、

喜びに溢れています。



先日、生前の事前相談でお邪魔した

お宅ではご相談をお申し出になった

６０代のご子息様と対象者のお母様

がいらっしゃいました。

「お母さんも一緒にお話しを窺って

みたら・・・・」と言う声に誘われて

お母様も同席されました。

お話しが具体的になっていくと同事に

対象者、つまりお母様のお顔が妙に

はにかんだ様な表情をされている事に

気が付きました。

ご子息様はやがて訪れるであろう日を

思い、事前の準備をしっかりとしておこうと

いうお考えでご相談をされていらっしゃるの

でしょう。

しかしお母様はそのことは充分理解されて

いるとは思われますが、実際にお棺や

火葬場のお話しになると、さすがに戸惑いの

表情が見え隠れしているように思われて

仕方有りません。


お母様はとてもお茶目なお顔立ちです。

そしてチャーミングです。


ご子息様を全面的に信頼しておみえなのか

「後はおまえに任すから、私が天国へ

行けるようにうまく考えてくれればいいの」

とおっしゃるとそのまま奥のお部屋に

下がってしまわれました。


やがて一通りお打ち合わせが終了し、おいとま

をするために玄関まで進むと、お母様が

お見送りのため、奥のお部屋から出て

来てくださいました。


「私が万が一の時は、もうあなたに会うことは

　できませんね。そしてお話しする事もできませんが

　なにとぞよろしくお願いします。・・・
　
　天国のお父さんのところまでうまく送ってやって

　下さい・・・・」


そして私の手を握ってお見送りをして下さいました。


過去ご主人様とご結婚の時、お見せになったお顔の

表情はきっと光り輝いていたことでしょう。

今お母様はご自分の終末をおむかえになる困惑の

表情と、ご主人様との再会のうれしさにきらめく

表情とが交錯しています。


「お母様、ご安心下さい。すべて私にお任せ下さい。」


そうおいとまのご挨拶をさせていただくと、

お母様のお顔は一段とチャーミングになって

いました。

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