韓寒：カルフールのボイコットは市場の冷やかし
2008年4月20日
この問題について、みんなの理由は非常にたくさんある。まず、カルフールの社長がどうか、フランス政府がどうか。次に、理由はともかく、我々の目的は国際社会に我々の態度を思い知らせ、いくつかの国に我々の力を知らしめ、謝罪させることだ。
謝罪は簡単だ。しかし、我々に対する態度と見方を変えさせるのはとても難しいし、こんなことがあると多分もっと難しいだろう。
なぜ、カルフールでなければならないのか？ 別にカルフールでなくてもいいだろうし、そうなったらまたなぜ×××でなければならないのかと聞かれるだろう。しかし当局はモデル作りが好きだから、感化されて、庶民もモデル作りができるようになったようだ。
思うに、カルフールボイコットは実際非常に意気地がないことだ。本当に愛国的かどうかの弁別には代償が伴う。君が経済と生命の損失をこうむる時、心の中の信念のためにそれを甘受するというのが本当の愛国である。カルフールに行って騒ぐというのでは、非常に格好が悪い。ほかの国が君を侮辱したから、君は自分の国でスーパーマーケットに難癖をつける。そのスーパーに対して、ボイコットしたり、横断幕を掲げたり、デモをしたり、野次馬になったり。人によっては、100元札で小物を買ってつり銭をなくさせたり、カルフールが掲揚していた中国国旗を自分で降ろして、写真を撮ってカルフールが半旗を掲げていると非難したりている。私はこうした行為をどれも人に見せるのが恥ずかしい。とりわけ最後の例は、下品なうえに火に油を注ごうとしている。愛国は時には自助であり、しかし、時には格好付けであり、いまの我々は不恰好である。
もちろん、ならおまえは少しは格好のつくことをしたのか、フランス大使館包囲デモはしたか、フランスに行って抗議したか、エアバスA380を爆破したかと言って私を非難してもいいだろう。しかし、問題はなぜ私がそんなことをしなければならないのかだ。私はそんなことを考えたこともない。私はいつもどおり職務を行い、文章を書き、カーレースをし、毎年進歩している。いま我々のラリーのレベルはすでにアジアクラスだ。レースのレベルの非常に高い日本人も割と高いマレーシア人も注目している。しかも、彼らに負けないどころか勝つこともある。しばらくしたらわが国のレーサーとレースのレベルはヨーロッパの二流に達するだろう。できればトップレーサーを送ってヨーロッパのトップレーサーと対戦させたい。……最終目標はフランスの世界ラリー選手権優勝者ローブである。その可能性があるかどうかはともかく、これはいままさに取り組んでいることだ。ところが一部の人がやっているのは一つのスーパーの攻撃であり、それに参加しなければ、漢姦と売国奴にされる。
外国人が我々を少し批判し、少し罵ったら、国中上から下まで怒り出して、しかも激怒しながら得意になっている。得意になっているのは「民族の団結力」と「祖国はついに強大になった。だから一部の国は我々を恐れて、国を分裂させよとしている」からだ。しかし、私は世界中を怖がらせる国と民族が備えるはずの勢いをまったく感じない。君がカルフールを攻撃して、君たちおおぜいの中国人が半日間攻撃し続けたら、カルフールの中国人従業員は板ばさみだ。そうこうするうち、もっと大勢の中国人が取り囲んで、悪事を働く中国人がぶち壊しを始める。そうすると中国の機動隊が出動する。目にするのはすべて中国人に関する報道で、なんということか一人もフランス人は出てこない。
私たちは、私たちを支持し、私たちを誉めそやすのが、私たちの友人だと思っており、私たちに反対し、私たちをけなすのが、私たちの敵だと思っている。しかし、この価値判断は単純すぎるし、メンツにこだわりすぎている。
私たちの民族的自尊心はなんでこんなに脆弱で表面的なのだろう。人が君を暴徒と言ったら、きみは人をひとしきり罵り、できることならひとしきり殴りたくてたまらない。そのあとで、「俺たちは暴徒じゃない」という。これではまるで明君が君をバカだと言ったら、明君のガールフレンドの弟の犬に大きな看板（それには「俺はバカじゃない」と書いてある）を振り上げるようなものだ。この情報は確かに明君に伝わるが、それでも明君は君をバカだと思い続けるだろう。君自身悔しい思いをしたが、本当は明君のほうがバカだと君が思っているのと同じように。
今日になって、悲しい傾向が出てきた。つまり、有無を言わせず、とにかくボイコットするかどうか態度表明しなければならないという。もしボイコットするなら、気骨がある。お前は中国人だ。正しい陣営に立っている。もしお前がボイコットしないなら、お前は漢姦だ。もし態度表明しないなら、お前はまぬけだ。もしいまフランス政府がカルフールをボイコットする中国人の帰化申請を認めたら、どれだけ大勢がフランスに潜入したがるだろう？
思うに、今の状況では、カルフールはまるで、人のうっぷん晴らしのために抱かれるダッチワイフだ。一方で彼らは普段ストレスが大きいためか、それを無料のはけ口にしている。もう一方で、うっぷん晴らしをしながらダッチワイフとそのメーカーに、俺は強いだろう、俺は強いだろうとしきりに聞いている。横で見ているダッチワイフに興味のない人は、彼らを性的不能者と言って眉をひそめるだろう。
5月1日に何が起こるか、私にはわからない。しかし私は君たちが内心本当にそんなに激怒しているのか疑っている。ずいぶん長くデモや集会をしていないからか？ デモは面白いし集会はにぎやかだろう？ 愛国主義の庇護の下でのデモと集会はとても安全だろう？ もし君が本当に我慢ならないのなら、今の状況が8カ国連合軍の侵略（訳注：1900年の義和団事件に対する外国軍の出兵）と同じなら、外国の侵略に直面しているのなら、情勢が切羽詰っているなら、四面楚歌なら、そして解決のためにはスーパーマーケットへの抗議が絶対必要なら、私も君を尊重する。私も最終的に君の気持ちを理解する。ただ、私は君が実は市場を冷やかしに行くだけではないかと思う。
原文：http://www.bullog.cn/blogs/twocold/archives/128296.aspx
韓寒：1982年生まれの上海の作家、カーレーサー。
2008年4月20日
この問題について、みんなの理由は非常にたくさんある。まず、カルフールの社長がどうか、フランス政府がどうか。次に、理由はともかく、我々の目的は国際社会に我々の態度を思い知らせ、いくつかの国に我々の力を知らしめ、謝罪させることだ。
謝罪は簡単だ。しかし、我々に対する態度と見方を変えさせるのはとても難しいし、こんなことがあると多分もっと難しいだろう。
なぜ、カルフールでなければならないのか？ 別にカルフールでなくてもいいだろうし、そうなったらまたなぜ×××でなければならないのかと聞かれるだろう。しかし当局はモデル作りが好きだから、感化されて、庶民もモデル作りができるようになったようだ。
思うに、カルフールボイコットは実際非常に意気地がないことだ。本当に愛国的かどうかの弁別には代償が伴う。君が経済と生命の損失をこうむる時、心の中の信念のためにそれを甘受するというのが本当の愛国である。カルフールに行って騒ぐというのでは、非常に格好が悪い。ほかの国が君を侮辱したから、君は自分の国でスーパーマーケットに難癖をつける。そのスーパーに対して、ボイコットしたり、横断幕を掲げたり、デモをしたり、野次馬になったり。人によっては、100元札で小物を買ってつり銭をなくさせたり、カルフールが掲揚していた中国国旗を自分で降ろして、写真を撮ってカルフールが半旗を掲げていると非難したりている。私はこうした行為をどれも人に見せるのが恥ずかしい。とりわけ最後の例は、下品なうえに火に油を注ごうとしている。愛国は時には自助であり、しかし、時には格好付けであり、いまの我々は不恰好である。
もちろん、ならおまえは少しは格好のつくことをしたのか、フランス大使館包囲デモはしたか、フランスに行って抗議したか、エアバスA380を爆破したかと言って私を非難してもいいだろう。しかし、問題はなぜ私がそんなことをしなければならないのかだ。私はそんなことを考えたこともない。私はいつもどおり職務を行い、文章を書き、カーレースをし、毎年進歩している。いま我々のラリーのレベルはすでにアジアクラスだ。レースのレベルの非常に高い日本人も割と高いマレーシア人も注目している。しかも、彼らに負けないどころか勝つこともある。しばらくしたらわが国のレーサーとレースのレベルはヨーロッパの二流に達するだろう。できればトップレーサーを送ってヨーロッパのトップレーサーと対戦させたい。……最終目標はフランスの世界ラリー選手権優勝者ローブである。その可能性があるかどうかはともかく、これはいままさに取り組んでいることだ。ところが一部の人がやっているのは一つのスーパーの攻撃であり、それに参加しなければ、漢姦と売国奴にされる。
外国人が我々を少し批判し、少し罵ったら、国中上から下まで怒り出して、しかも激怒しながら得意になっている。得意になっているのは「民族の団結力」と「祖国はついに強大になった。だから一部の国は我々を恐れて、国を分裂させよとしている」からだ。しかし、私は世界中を怖がらせる国と民族が備えるはずの勢いをまったく感じない。君がカルフールを攻撃して、君たちおおぜいの中国人が半日間攻撃し続けたら、カルフールの中国人従業員は板ばさみだ。そうこうするうち、もっと大勢の中国人が取り囲んで、悪事を働く中国人がぶち壊しを始める。そうすると中国の機動隊が出動する。目にするのはすべて中国人に関する報道で、なんということか一人もフランス人は出てこない。
私たちは、私たちを支持し、私たちを誉めそやすのが、私たちの友人だと思っており、私たちに反対し、私たちをけなすのが、私たちの敵だと思っている。しかし、この価値判断は単純すぎるし、メンツにこだわりすぎている。
私たちの民族的自尊心はなんでこんなに脆弱で表面的なのだろう。人が君を暴徒と言ったら、きみは人をひとしきり罵り、できることならひとしきり殴りたくてたまらない。そのあとで、「俺たちは暴徒じゃない」という。これではまるで明君が君をバカだと言ったら、明君のガールフレンドの弟の犬に大きな看板（それには「俺はバカじゃない」と書いてある）を振り上げるようなものだ。この情報は確かに明君に伝わるが、それでも明君は君をバカだと思い続けるだろう。君自身悔しい思いをしたが、本当は明君のほうがバカだと君が思っているのと同じように。
今日になって、悲しい傾向が出てきた。つまり、有無を言わせず、とにかくボイコットするかどうか態度表明しなければならないという。もしボイコットするなら、気骨がある。お前は中国人だ。正しい陣営に立っている。もしお前がボイコットしないなら、お前は漢姦だ。もし態度表明しないなら、お前はまぬけだ。もしいまフランス政府がカルフールをボイコットする中国人の帰化申請を認めたら、どれだけ大勢がフランスに潜入したがるだろう？
思うに、今の状況では、カルフールはまるで、人のうっぷん晴らしのために抱かれるダッチワイフだ。一方で彼らは普段ストレスが大きいためか、それを無料のはけ口にしている。もう一方で、うっぷん晴らしをしながらダッチワイフとそのメーカーに、俺は強いだろう、俺は強いだろうとしきりに聞いている。横で見ているダッチワイフに興味のない人は、彼らを性的不能者と言って眉をひそめるだろう。
5月1日に何が起こるか、私にはわからない。しかし私は君たちが内心本当にそんなに激怒しているのか疑っている。ずいぶん長くデモや集会をしていないからか？ デモは面白いし集会はにぎやかだろう？ 愛国主義の庇護の下でのデモと集会はとても安全だろう？ もし君が本当に我慢ならないのなら、今の状況が8カ国連合軍の侵略（訳注：1900年の義和団事件に対する外国軍の出兵）と同じなら、外国の侵略に直面しているのなら、情勢が切羽詰っているなら、四面楚歌なら、そして解決のためにはスーパーマーケットへの抗議が絶対必要なら、私も君を尊重する。私も最終的に君の気持ちを理解する。ただ、私は君が実は市場を冷やかしに行くだけではないかと思う。
原文：http://www.bullog.cn/blogs/twocold/archives/128296.aspx
韓寒：1982年生まれの上海の作家、カーレーサー。
