馮正虎入国拒否事件に関する報道資料
上海の人権活動家馮正虎は中華人民共和国国民であり上海市民である。彼は2009年6月7日に午後3:05(日本時間)に出発する中国国際航空公司CA930便に乗って、午後5:20(中国時間)上海浦東空港に到着しが、上海市公安局浦東空港出入国検査所の警官に不当かつ不法に入国を禁じられた。さらに悪質なのは、上海警察のニセの豚インフルエンザ検査員が機内検査をし、馮正虎が発熱していると嘘をついて機内に足止めして、他の乗客が全員降りてから、彼を空港内の事務室に拘留し、彼は病気に感染していないと言った上で、彼の所持品を詳細にチェックし、全過程をビデオに収めたことである。最後に警官たちは馮正虎に入国を禁止すると告げた。この入国禁止にはいかなる理由もないし、書面による裁決告知もなく、上司の口頭命令に過ぎない。
警官は馮正虎に何度も警察が無償で提供する全日空のチケットで日本に戻るよう要求し、馮正虎の中国国際航空CA930便の荷物を勝手に全日空NH0154便に積み替えた。馮正虎は搭乗を断固拒否し、この違法なやり方に対し、中国政府に自国の国民の入国を拒否する権限はないし、もしその国民が犯罪者であれば捕まえて国に連れて帰るべきだと抗議した。上海浦東空港で、馮正虎は7、8人の警官と1時間半近く押し問答をしたが、飛行機の出発直前になって警官は彼に全日空NH0154便の搭乗券を押し付け、彼を無理やり飛行機に乗せ、夜6:45に上海を離れさせた。
夜9:25(日本時間)、馮正虎は日本の大阪の関西空港に到着した。馮正虎は関西空港で日本入国を拒んだ。馮正虎は中国の警察により強制的に日本に送られたのであるから、再び飛行機に乗って帰国することを求めて、中国大使館もしくは日本の警察がこの人権侵害事件を処理するよう要求した。日本の出入国管理所の係官は馮正虎がなぜ日本に入国したくないのか、なぜ中国が自国の国民の帰国を妨げることができるのか理解できなかった。馮正虎は日本に入国せず、再び国に戻ることを求めて空港で2時間ほど踏みとどまったが、これは両国の尊厳を守るためである。一つの国が自国民の入国を認めないのではその国は尊厳を失うし、もう一方の国が外国国民本人の意思を尊重せず、外国政府による当該国民の帰国権侵害行為を助けるとしたら、やはりその国も尊厳を失うことになるからである。
6月7日は日曜日で、夜11:30は深夜であった。やむなく馮正虎は入国に同意し、全日空職員が手配してくれたホテル日航関西空港に宿泊し、翌朝、新幹線に乗って東京に戻った。午後2:00、朝日新聞、読売新聞、北海道新聞、TBSテレビなど日本のマスメディアの取材を受けた。VOA、RFA、台湾中央放送局など海外メディアも取材に訪れた。中国が自国民の入国を禁止するというのは信じがたいことである。しかもこの事件の当事者の馮正虎は著名な日本留学経験者である。
記者の馮正虎への質問:「この事件が発生してから、あなたは日本に戻る道中どんな気持ちでしたか?」。馮正虎の回答:「私は大変悔しい思いをしましたが、今はすっかり落ち着いています。ただ、私は自分の国が哀れです。上海の地方官僚は身勝手で、全く国の体面を考えずに行動し、一貫して無法の限りを尽くし、再び日本で中国の恥をさらしました。このような自国民に対する振る舞いは完全に自信に欠けており、大国の取るべき態度ではありません。中央政府は上海地方政府のこの行動を知らないに違いないし、私も韓正上海市長が今回の警察の行動を知っているかどうか分かりません。韓正はそんなにバカではないはずです」。
馮正虎は記者に語った。「私は2009年4月1日に目立たないように出国し、今回の帰国に際しても目立たないように、家族以外上海の誰にも知らせず、しかも、六四の敏感な日が過ぎてから帰国し、上海当局のメンツを立てました。ですが、今回空港で入国を阻まれたとき、警官は私に帰国前に相談すべきだと言いました。いったい誰と相談するのでしょう? 来週帰国する前に、私は帰国公告を出して、中国と日本の両国政府機関に通知し、この馬鹿げたスキャンダルの再演と、さらに外国に居住する国民の帰国禁止によって引き起こされる外交紛争を避けようと考えています」。
2009年6月9日午前9:30、馮正虎と日本に居住する家族は中国駐日本大使館に今回の人権侵害行為を報告し、大使館が職責を履行して在日中国人の合法的権益を守るよう要求した。馮正虎はまた国内の妻、兄および弁護士に頼んで上海市公安局出入国管理局の不法行為を告訴することを検討している。ますます多くの海外メディアと民衆がこの悪質な人権侵害事件に注目している。国民が自国に戻ることを禁ずるというのは世界の珍事であり、中国の恥である。自分の国がごく少数の有力者と警察によって辱められることが無いようにするのは、全ての中国人の責任である。馮正虎は2009年6月17日に再度帰国することを決定した。
2009年6月10日
関連新聞記事
朝日新聞5月29日
http://www.asahi.com/international/shien/TKY200905270087.html
北海道新聞6月8日
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/international/170089.html
朝日新聞6月9日
http://www.asahi.com/special/kajin/TKY200906090210.html
12月5日追記
私は彼の6月初めからの中国への帰国要求を支持してきたし、今も支持している。民主党や日本政府は小沢訪中や習近平来日の折に、中国側に彼の受け入れを要求すべきだと思う。
しかし、彼のこれまでの全日空、ノースウエストに対する批判(非難)はその多くが的を得ていないと思うし、彼を乗せて送り返さないと飛行機を離陸させないと中国当局に脅されやむなく彼を乗せて戻った全日空に対して、拉致犯呼ばわりするようなやり方には賛成できない。今回全日空は彼の北京行き搭乗を拒まなかったために中国当局に彼の日本への返送を強制された。もし返送を拒んでいたら、いつまでも離陸許可が下りないため離陸できず、また、ブリッジを外され乗客を降ろすこともできなくなっていただろう。全日空が折れるまで、全乗客を監禁状態に置くことになっていたはずだ。
7月以降彼の声明文の転載をやめたのは、そのような彼の矛先の向く方向に対する疑問のためである。
最近彼の成田籠城を巡ってごく一部で議論が沸騰しているようなので、皆さんの議論の参考としていただくためにその後の彼の声明文のリンク先を下に記す。
アメリカの会社の責任(英文) 7月3日付
第五回帰国公告 7月7日付
米国の会社の恥:第五回帰国阻まれる(漢語) 7月10日付
第六回帰国公告 7月11日付
米国の会社の悲哀:第六回帰国阻まれる(漢語) 7月17日付
第七回帰国行動報告(漢語) 8月7日付
中国国民の帰国権 8月15日付
計7回の帰国行動のまとめ(督察簡報の中の記事)(漢語) 8月20日付
帰国の道は歩いて踏み固めるものだ(漢語) 8月29日付
胡錦涛あて手紙(漢語) 9月1日付 (以下2010年1月24日追記:この中で2009年11月からの成田空港立てこもりを予告している。つまりそれまでほとんど上海当局に抵抗することなく全日空機で送り返されていた馮正虎が、成田空港籠城を決めた今回だけ激しく抵抗し、全日空職員まで離陸時に実力行使して彼が暴れるのを抑えなければならない状況を作ったのは彼が当初から予定していた作戦の可能性が極めて高い。その目的とするところは単なるニュース性の拡大というよりは共通の敵としての日本人像を作り出すことで、上海当局に妥協を迫るつもりだったように思われる。「被拉致者の救出」ストーリー。)
第八回帰国公告 10月28日付
12月6日追記
また、上記声明文とは異なるが、籠城開始後11月16日の艾未未工作室(アトリエ)メンバーによる馮正虎氏のインタビューに彼の気持がよくあらわれているのでリンクを記す。この中で彼は籠城をやめる条件を中国政府が帰国を認ることではなく、全日空が上海便に彼を乗せると約束することだとしている。上海で中国当局と交渉すると。
12月8日追記
11月17日RFIのインタビュー(全日空は当局に脅されていたという馮正虎の証言)
11月11日のフィナンシャルタイムス(同様の全日空の証言)
本ブログ内関連記事:
4月18日 RFA:中国当局に拉致監禁されていた馮正虎が日本に出国(漢語)
4月27日 馮正虎の記者会見を聞きに行く
6月6日 馮正虎:六四天安門事件を忘れず、政治改革を推進しよう
6月12日 人権活動家馮正虎氏の6月17日帰国(2回目)通告(漢語)
6月19日 馮正虎氏、中国国際航空が搭乗拒否
6月25日、6月26日 それぞれ第3回目の帰国行動の短報
6月28日 第三回目の帰国の試みの報告(漢語)
いつもお世話になっております、宇宙犬です。
馮正虎さんについては、11月からの成田籠城の報道で知り、大きな関心を持っております。
馮さんも零八憲章の署名者のお一人ということで、貴重な関連情報としてこちらのエントリのURLを今回もmixiチベットコミュの零八憲章トピックにてご紹介させて頂きたく、ご許可頂けますと大変幸いに存じます。
何卒宜しくお願い致します。
ご無理をお願いし誠に恐縮に存じます。
ご厚意に深謝申し上げます。
本件、普段我が国に於いてはただ外国の事象として捉えられがちな中国の民主活動と日本との関係について、真剣に考える機会にもなるのではと、個人的には思料しております。
今後もし、お気の進まないお願いがございましたら、どうかお気兼ね無く仰って頂けますと幸いに存じます。
これに懲りず、これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。