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朗士林:「優遇」を「取締り」の口実にするな

2007-01-26 10:26:24 | 中国異論派選訳
人民日報は2006年10月18日「北京の出稼ぎ労働者の子女が無料で公立学校に入学」と報じている。出稼ぎ農民子女でも無償教育を受けられるようになたという。
http://www.china.org.cn/
japanese/266921.htm
しかしこれは真っ赤な「ウソ」。そのことは、2007年1月24日付け甘粛日報の下記の批判記事からも明らかである。農民学校強制閉鎖で1万人以上が教育の場を失ったのに、この人民日報によると公立校に転校できたのは4千人ほどにすぎない。6千人以上の子供は学校に行けなくなるか、親と分かれて戸籍地に一人帰るしかなかったのだ。
ちなみに、人民日報は中国共産党中央委員会の機関紙、甘粛日報は中国共産党甘粛省委員会の機関紙で、身内からの批判である。

「優遇」を「取締り」の口実にするな
朗士林

原文:
http://comment.gansudaily.com.cn/
system/2007/01/11/010233518.shtml

1月9日付け「蘭州晨報」に載った二つのニュースは一緒に読むに値する。一つは「上海が出稼ぎ農民子女学校を一校閉鎖」という記事。内容は、上海市普陀区にある建英希望学校が先週の金曜日に関係当局の派遣した300人によって強制閉鎖されたというもの。この学校は10年間続けてきたが、教育局は許可証を得ていないことと、安全リスクがあることを閉鎖の理由にあげている。もう一つは、「『四証優待』が就学の道を阻んでいる」という記事。内容は、はじめて発表された「蘭州市出稼ぎ農民子女教育の現状」という社会調査のなかで蘭州大学副教授の張咏梅が、蘭州市が打ち出した出稼ぎ子女入学優遇策は実際の運用においては農民子女の入学の関門になってしまうと指摘しているということ。この二つのニュースはある共通の事実を明らかにしている。それは、出稼ぎ農民子女が教育を受けるのは難しく、政府の政策の合理性と実効性に疑問が投げかけられていることである。

このことから去年の7月、北京市海淀区が30校余りの出稼ぎ農民子女学校を強制閉鎖し、1万人あまりの出稼ぎ農民子女が突然教育を受ける機会を失ったことを思い出す。この行動は、あまりに荒っぽいとか軽率であるなどと世論の強い疑念を呼んだ。北京市教育当局が当初準備した出稼ぎ農民子女の処遇は、「五証」(暫住証、居住証、労働許可証、原籍で発行した無監護人証明、戸籍簿)を取得して、居住地の街道弁公室(区の下の行政組織)あるいは郷鎮政府に行って「在京入学許可証明」を発行してもらい、その後近くの公立学校に転校するというものだった。この「五証一証明」はのちに非常に高いハードルであることが明らかになった。身分と境遇が特殊な出稼ぎ農民にとっては、このハードルはほとんど越え難いほど高いものだった。蘭州市が2004年に打ち出した「出稼ぎ農民子女学校義務教育実施に関する通知」もこれに似ている。規定によると、出稼ぎ農民は「四証」(転出証、暫住証、計画出産証、賃貸もしくは持ち家の住居証)があれば政府が指定する小中学校に子女を入れられ、借読費(学区外戸籍生徒から徴収する割増学費)は徴収しないという。張咏梅の調査によると、このあたかも優遇しているような政策は、実際は出稼ぎ農民子女の都市における就学の制限になっている。なぜなら、出稼ぎ農民にとって、「四証」を全部そろえることは、非常に時間と精力を労し、つてを頼り、あちこち役所を回って、やっと全部そろえられるからだ。とりわけ住居証はほとんど発行してもらえない。

出稼ぎ農民子女入学の優遇政策はなぜ往々にして入学の障害に転化するのか? 政府当局も出稼ぎ農民も内心よく分かっている。都市の教育資源には限界があり、公立学校の収容能力も限界があるので、高額の借読費は解消することのできない「不合理な存在」なのだ。このような状況の下で、教育資源は都市戸籍住民の子女に傾斜配分され、もしくは独占されている。「平等に教育を受ける権利」が絵空事にすぎないのであれば、なぜ政府は口先だけの「優遇政策」で出稼ぎ農民の脆弱な神経を逆なでするのか? そして、毎回の「強制閉鎖騒ぎ」が過ぎるたびに、教育秩序は正常化されるかもしれないが、多くの人の教育を受ける権利は堪えがたい侵害をこうむる。蘭州市城関区で優遇政策を受けられた出稼ぎ農民子女は僅か16%に過ぎないことがその明らかな証拠である。同様な「優遇政策」を実施した南昌市では、出稼ぎ農民子女30万人の内、僅か300人しか公立学校に受け入れてもらえなかった(「中国青年報」2005年11月13日の記事)。

私が疑いを抱くのは正常な教育秩序や優遇政策を実施する本意ではなく、その合理性と実効性である。政府通達がもたらすものは事実上の権利の平等であるべきで、文章が太平の世を謳歌することではない。政府は少なくとも次の2つの点に留意すべきである。一、いわゆる「優遇政策」が実際の効果を上げていない間は軽率に民間学校を取り締まるべきではない。二、出稼ぎ農民子女学校により多くの支援と指導を与え、調和社会の積極的な力として利用すべきである。
(了)

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