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偏狭な民族主義者の過敏症

2006-05-23 10:41:35 | 中国異論派選訳

金海涛

先日ある雑誌に日本ペイント株式会社の、「龍の巻」と題する広告が載った。メーカーが広告を使って製品の販売を促進するのは本来正常な商業活動である。しかし、この広告のメーカーは日本企業であり、しかも使ったのが中国を象徴するといわれる龍であった。そこで、一部の中国人は過敏となった。しかも、彼等は広告に「政治」を見た。そこで、長期間の教育にはぐくまれた「愛国主義者」の民族主義的熱情が噴出した。この広告には中国の古典的なあずまやがあり、東屋の2本の柱に一匹づつ龍が巻きついている。左側の柱の色は暗いが、龍はしっかりと柱に張り付いている。一方右側の柱の色彩は鮮やかだが、龍は地面に滑り落ちてしまっている。広告の寓意は明らかに、日本ペイントの塗料の品質がよく、滑らかで光沢があるということである。しかし、この広告のデザイナーが予想もしなかったことに、広告が一部の中国人の過敏な神経を刺激することとなった。彼ら「愛国主義者」は「龍は中国の象徴であるのに、なんで小日本(日本人の蔑称)がもてあそぶのか?」と大々的に非難し始めた。そして次から次へと愛国的激情がエスカレートしていった。

インド人がゾウを自分たちの文化的トーテムとし、ロシア人がホッキョクグマを自分たちの文化的トーテムとするように、中国人は自分たちを「龍の子孫」とする。ゾウとホッキョクグマはそれでも実際に地球上に存在する動物であるが、「龍」は虚構のものにすぎない。たとえ、仮に昔々地球上に実際に龍のような動物がいたとしても、それは上下に飛びまわるのであり、飛びまわったり滑り落ちたりはいずれも正常な運動の形である。龍が飛びまわるのが中国の興隆を意味し、滑り落ちるのが中国の崩壊を意味するなどとはいえない。ましてや、日本ペイントの広告は商業的な角度から製品を宣伝しているのであって、政治的な意義を持たせたものではない。別の塗料の広告でヤモリがツルツルの壁から滑り落ちるのと同じであり、どのようにメッセージを表現するかの違いにすぎない。ところが、共産党国家の長期間の教育のもとで一部の人々は、なんに対しても政治の色眼鏡で見ようとするようになった。とりわけ、日本関係の事物に対して。

第二次大戦が終わってからもうすぐ60年だが、一部の人は日本国と日本人に対していまだに怨み骨髄である。この面では、私はわが党(共産党)の「愛国主義」教育の「功績」を認めざるをえない。このあいだ次のような記事を見た。韓国と日本から来た留学生が南京のあるレストランで食事をしていた。二人は楽しそうにおしゃべりをしていたが、使っていたのは日本語であった。突然一人の中国人の男が彼らに近づいて、何も言わずに韓国人留学生にビンタを浴びせた。明らかに韓国人留学生を「日本鬼子(日本人に対する蔑称。もとは日本軍に対する蔑称。)」と間違ったのだ。傍観していた人々は、少しも動揺した様子を見せなかったが、多分日本人を殴るのは「愛国主義」の表現と思ったからだろう。彼らがそこで食事を取ったことで、誰かに迷惑をかけただろうか?この中国人の男は一体何の権利があって野蛮なこぶしで他人を侵害するのか?日本人の「珠海売春」や、西安西北大学の日本人留学生の「中国を侮辱する演技」や、アジアカップサッカーでの反日騒動などなど、どれをとっても一部の偏狭な民族主義分子の神経過敏が引き起こしたドタバタではないか。はては、中日両国の子供が中国でサマーキャンプを行ったことについて、ある報道がサマーキャンプで日本の子供の方が中国の子供よりも自活能力が高かったことは、中国の家庭教育に問題があるからだと伝えたことまでが、一部の中国人の不満を引き起こしている。故意に日本人に媚びを売っているというのだ。

1979年に始まった日本の対中援助は、2003年度までに約3.3兆円に達した。しかも、1999年から、中国は連続4年間、日本の借款の最大供与対象国となっている。これは、日本の中国人に対する善行である。しかし彼らが受け取るのは一部の人の日本に対する敵視である。世の中にこんな奇妙なことがあろうか!

一部の中国人が偏狭な民族主義の過敏症をわずらっているのには原因がある。原因のひとつは彼らが長期間にわたって受けてきたわが党の偏った「愛国主義教育」であり、理性的考え方はみな骨抜きにされ、排外感情が養われている。「日本軍国主義」に対するものであれ、「アメリカ帝国主義」に対するものであれ、まとめて敵視する態度を植付け、大清帝国時代の義和団の遺風を思わせる。原因のふたつ目は、この強烈な民族主義で隠された劣等感である。例えば、前述の「龍の巻」広告に対する過敏な反応は、表面的には「龍の子孫」の自尊心の現れのようだが、しかし、このような過敏な自尊心で他人を傷つけることは、自らを傷つけることでもある。ある人はうまいことを言った。「最も自信のない人が最も敏感である。最も敏感な人が最も自尊心が強い。そして、最も自尊心が強い人が最も劣等感が強い」。熱狂的な民族主義者は実は最も劣等感の強い人々である。そう思いませんか?
2004年10月7日
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/
e/3133e95b5b046ee5f87e8ba0a2613460

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