『 資 本 論 』 を 読 ん で み ま せ ん か
新年、明けまして、おめでとうございます。
菅首相は、年頭記者会見で「三つの理念」を掲げ、その最初に「平成23年を平成の開国元年としたい」と述べました。「平成23年を、そうしたヒト・モノ・カネばかりではなくて、明治維新や戦後に続く、日本人全体が世界に向かってはばたいていくという、そうした開国を進めていく元年としたい」と。記者の1人は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の問題は「平成の開国に対する本気度をはかる試金石」だと述べ、その交渉の是非をいつごろまでに判断するのかと質問。首相は、「6月頃というのが一つの目処だ」と答えていました。
貿易の自由化を明治維新に例えるのは、大げさではありますが、それだけこのTPPには根強い反対勢力があるからでしょう。TPPは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)21カ国・地域のうち、米国やオーストラリアなど9カ国で交渉が進む経済の枠組みのことですが、コメなど農産物を含む原則すべての関税の撤廃や、投資や貿易の円滑化、サービス、金融など幅広い分野で「障壁」の除去を取り決めようとするものです。
日本の農業は、コメの関税が政府の公式試算で490%(世界貿易機関の新ルールだと700%を超える)であることに象徴されるように、手厚い保護政策と高い関税障壁によって守られてきました。だからそれを撤廃すると日本の農業は壊滅的な打撃を受けるといわれています。
しかし打撃を受けるのは、安い外国産に太刀打ちできない生産性の低い日本の農業であって、生産力を高めれば、日本の農業も十分外国産に対抗できると主張する農業従事者もいます。だから日本の農業そのものが壊滅するかにいうのも大げさであって、反対に、生産性の低い農業が淘汰され、日本の農業生産も、生産性の高い工業の技術力と結合させて、生産力を飛躍的に高める出発点にならないとも限らないのです。
菅首相がTPPの推進を叫ぶのは、FTA(自由貿易協定)の推進など、先行する韓国などに決定的に立ち遅れ、焦燥感を募らせている日本の大資本の意向を受けてのことだと思いますが、他方で、それに反対する政党(民主党の一部も含まれます)もただ小農業者の票を失いたくないがためのものにすぎません。
労働者は原則的には貿易の自由化には賛成です。それは自由化によって労働者の境遇や生活の改善がなされるという目先の利益からではなく(自由化そのものは、労働者が搾取されている現実には何の変化ももたらさないでしょう)、自由貿易は小農を淘汰し、農業でも生産の変革を迫ること一つをとっても、社会変革を押し進めるからであり、そうした革命的意義を認めるからにほかなりません。
マルクスは「世界貿易と世界市場とは、16世紀に資本の近代的生活史を開く」(『資本論』第1巻、全集23a191頁)と述べています。そして世界市場こそは一般に資本主義的生産様式の基礎をなしその生活環境をなしているのだと指摘しています。そして次のようにその意義について明らかにしています。
「歴史のブルジョア時代は、新世界の物質的基礎をつくりださなければならない。--一方では、人類の相互依存にもとつく世界的交通とこの交通の手段、他方では、人間の生産力の発展と、物質的生産を自然力の科学的支配に転化すること、これがその基礎である。このような新世界の物質的諸条件を、ブルジョア商工業は、地質上の革命が地表をつくりだしたのと同じように、つくりだしているのである。将来、偉大な社会革命が、このブルジョア時代の成果である世界市場と近代的生産力とをわがものとし、これらをもっとも先進的な諸国人民の共同管理のもとにおいたとき、そのときはじめて人類の進歩は、うま酒(ネクタール)を死人の頭蓋骨からだけ飲もうとする、あのいとうべき異教の偶豫に似ることを、やめるであろう。」(「イギリスのインド支配の将来の結果」全集9巻217-8頁)
まさにこうした意味で、労働者は貿易の自由化に原則的に賛成するのです。
新しい年も、『資本論』をさらに深く理解して、あらゆる問題について、労働者の原則的立場を堅持する年にしたいと思います。是非、『資本論』を一緒に読みませんか。
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第31回「『資本論』を読む会」・案内
■日 時 1月23日(日) 午後2時~
■会 場 堺市立南図書館
(泉北高速・泉ヶ丘駅南西300m、駐車場はありません。)
■テキスト 『資本論』第一巻第一分冊(どの版でも結構です)
■主 催 『資本論』を読む会
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