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伊東良徳の超乱読読書日記

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風に舞いあがるビニールシート

2006-10-22 07:38:17 | 小説
 短編集を読まなくなって久しいのですが、子どもと読んでなじみの森絵都の直木賞受賞作なものですから、読んでみました。直木賞受賞後に予約を入れると順番が来るまでに結構かかりました。
 児童文学の方でなじんでいるので、性的なことや仕事の愚痴が書かれているのを見ると、そうか、児童文学を書いてるとこういうこと書けないから欲求不満がたまるのかなとか、文藝春秋の読者層に媚びてるのかなとか、ついうがった見方をしてしまいます。

 表題作は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の専門職アメリカ人男性と一般職日本人女性の夫婦のすれ違い・葛藤、離婚、男性のアフガニスタンでの殉職と女性の悲嘆→復活を描いたもの。
 公共心というか使命感を、照れからかどこか突っ走らせずに戯画的にあるいは性格的な欠陥を感じさせるように描いているような感じがします。エドと里佳の関係も体の相性がとんでもなくよかったから一緒になったみたいな描き方だし、いくら難民支援に燃えるUNHCR職員だからって、難民の不幸をあげつらった上で「自分の子どもを育てる時間や労力があるのなら、すでに生まれた彼らのためにそれを捧げるべきだって。それが、富める者ばかりがますます富んでいくこの世界のシステムに加担してる僕らの責任だって」(290頁)なんて言います?
 そのことは「犬の散歩」で捨て犬の里親探しの間の仮親のボランティアをする主人公の主婦がその費用のためにホステスをしたりするところにも現れていると思います。
 テーマには共感するのですが、そのあたりもう少しストレートでもよかったと、私は感じます。大人の小説読みのためにひねりが必要と感じたのでしょうけど。


森絵都 文藝春秋 2006年5月30日発行
コメント
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