同級生の女性「天鵞絨」に思いを寄せる少女えりの幸福・挫折・逸脱・破滅を描いた小説。
どこか現実感のない幻想的な文章で、最初の5分の1、天鵞絨に彼ができるまでのところは幻想的な・詩的な物語として、結構美しい仕上がりでした。
しかし、天鵞絨に彼ができてからの主人公えりの一方的な思いこみ、自己破壊から幻想よりも妄想的になり、天鵞絨の父親と考える中年男性と肉体関係を持って天鵞絨の分身を孕もうとするに至り、どろどろとした情念・執念の物語に変わります。この主人公の勝手な思いと行動のために、同級生の男性も中年男性も命を奪われますが、この主人公にはそれについての責任感も罪悪感もほとんど感じられません。
ジコチュウ女が他人を巻き込んで勝手に滅びるという、主人公の破滅をシニカルに笑うことはできるでしょうけど、巻き込まれた人々が救われない感じで、読後感の悪い小説でした。
朝倉かすみ 幻冬舎 2006年9月30日発行
どこか現実感のない幻想的な文章で、最初の5分の1、天鵞絨に彼ができるまでのところは幻想的な・詩的な物語として、結構美しい仕上がりでした。
しかし、天鵞絨に彼ができてからの主人公えりの一方的な思いこみ、自己破壊から幻想よりも妄想的になり、天鵞絨の父親と考える中年男性と肉体関係を持って天鵞絨の分身を孕もうとするに至り、どろどろとした情念・執念の物語に変わります。この主人公の勝手な思いと行動のために、同級生の男性も中年男性も命を奪われますが、この主人公にはそれについての責任感も罪悪感もほとんど感じられません。
ジコチュウ女が他人を巻き込んで勝手に滅びるという、主人公の破滅をシニカルに笑うことはできるでしょうけど、巻き込まれた人々が救われない感じで、読後感の悪い小説でした。
朝倉かすみ 幻冬舎 2006年9月30日発行