伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ほかに誰がいる

2006-10-29 08:17:13 | 小説
 同級生の女性「天鵞絨」に思いを寄せる少女えりの幸福・挫折・逸脱・破滅を描いた小説。
 どこか現実感のない幻想的な文章で、最初の5分の1、天鵞絨に彼ができるまでのところは幻想的な・詩的な物語として、結構美しい仕上がりでした。
 しかし、天鵞絨に彼ができてからの主人公えりの一方的な思いこみ、自己破壊から幻想よりも妄想的になり、天鵞絨の父親と考える中年男性と肉体関係を持って天鵞絨の分身を孕もうとするに至り、どろどろとした情念・執念の物語に変わります。この主人公の勝手な思いと行動のために、同級生の男性も中年男性も命を奪われますが、この主人公にはそれについての責任感も罪悪感もほとんど感じられません。
 ジコチュウ女が他人を巻き込んで勝手に滅びるという、主人公の破滅をシニカルに笑うことはできるでしょうけど、巻き込まれた人々が救われない感じで、読後感の悪い小説でした。


朝倉かすみ 幻冬舎 2006年9月30日発行
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パパとムスメの7日間

2006-10-29 08:01:09 | 小説
 家庭内で断絶状態にある47歳の事なかれ主義のサラリーマンの父親と16歳高1の娘が、交通事故の衝撃で入れ替わるという、現実にはあり得ないけどSFとしてはある種平凡な着想の小説。
 娘の小梅がいかなる事態になってもどこまでもジコチュウで(作者としては普通の女子高生として書いているのでしょうけど)、父親は娘の言いたい放題にも理解を示してしまうのが、中年男の読者にはやりきれない思いを持たせます。父親と入れ替わって会社に行っても娘が父親の苦労を理解する話ではなくて(瞬間的には理解を示す場面もありますが)、結局元に戻っても娘は基本的に前のままというのが、作者としてはありふれた安易なお話にしたくなかったからでしょうけど、やはり中年男の読者としては、読後感もよくありません。中年の父親の悲哀感ばかりが、最初から最後まで感じられます。日本のお父さんてこんなもの・・・ということなんでしょうけど、なんか救われないなあって感じでした。


五十嵐貴久 朝日新聞社 
2006年10月30日発行(この発行日って・・・明日)

追伸:朝日新聞社の(書評ではない)新刊案内(10月22日掲載だって)によると「ハートウォーミングな家族愛を描いた笑いと涙のノンストップ・エンターテインメント長編!」だそうです。私には、ハートウォーミングとは感じられませんでしたけど。
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