伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

きみを想う瞬間

2006-10-30 08:15:03 | 小説
 結婚記念日の12月23日のデートの帰りに脳内出血し、あと12時間の命と宣告された妻とその家族のクリスマス・イブの話。
 意識は鮮明で痛みもないけど12時間後には死ぬということがわかっているという希有の(小説としてとても都合のいい)状況ではありますが、自分のこととして突きつけられれば、考えさせられるシチュエーションではあります。
 ただこの小説では、主人公のローラがあまりにてきぱきとやるべき事を進めていくので、う~ん、まあそういうこともあるかなとは思いますが、私は今ひとつ感情的に入れませんでした。娘がひねくれているところとそのために妻の死後夫が苦労したと思われる(具体的な描写はあまりありませんが)ところは、かえって現実感があるように思えましたけど。

 訳者あとがきでは「究極の夫婦愛、せつない純愛の物語」と書いていますが、作者は、涙と感動の物語にはあえてせずに、ドライに進めていくことで考えさせたかったのだろうと思います。


原題:Christmas,Present
ジャクリーン・ミチャード 訳:田栗美奈子
主婦の友社 2006年11月10日発行 (原書は2003年)
(この発行日付、ひどくない?)
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水曜日のうそ

2006-10-30 08:10:36 | 小説
 教師夫婦と娘の家族が、父親が大学の助教授のオファーを受け新たに子どもも生まれることを機会にパリ郊外からリヨンに引っ越すことになったが、近くに住み毎週水曜に尋ねてくる祖父が反対することが予想されるので祖父に黙って引っ越して水曜日には戻ってくることにしたという設定の家族ドラマ。
 なんとか祖父に知られるまいと芝居を続ける父親、同級生との遠距離恋愛を続ける娘、娘の同級生と祖父との交流を軸にストーリーが展開します。

 お話は娘の語りで進められ、従って娘と同級生との話に焦点が当てられがちなのですが、メインテーマは素直に愛情表現をできずにいらだちを見せながらしかし強い絆を持つ父子(祖父と父親)関係の葛藤と、私は読みました。
 祖父が死んだ後の父親の苦悶・後悔が描かれてはいますが、同時に嘘をつかずに最初から話していればという収め方でもなく、人間関係の綾というか難しさの余韻を残して終わっているところにこの作品の味わい深さを感じました。


原題:Mercredi mensonge
クリスチャン・グルニエ 訳:河野万里子
講談社 2006年9月25日発行(原書は2004年)
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ダリ シュルレアリズムを超えて

2006-10-30 07:54:28 | 人文・社会科学系
 ダリの画集付き解説書。
 タッシェン・ジャパンのものよりさらにコンパクトで図版のサイズが小さくなり字数が少し多い。
 解説は、歴史的事実やダリの自伝的著作からの引用はほぼ同じですが、絵に対する評価はやはり著者の個性が出ていてちょっと違います。だまし絵的な作品には「ただの視覚遊び」「行きづまり」(92頁)とはっきり書いているのは好感が持てました。ダリの絵に頻出する「大自慰者」のモチーフの読み方にも違いがあったりして、続けて読むのも意味があるかなと思いました(もう1冊読もうとまでは思いませんが)。


原題:Dali  Le Grand Paranoiaque
ジャン=ルイ・ガイユマン 日本語監修者:伊藤俊治
創元社 2006年10月10日発行
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