詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

神谷直樹「ウミウシの朝」

2020-06-20 18:49:07 | 詩(雑誌・同人誌)
神谷直樹「ウミウシの朝」(「六番目の母音」5、2020年06月15日発行)

 神谷直樹「ウミウシの朝」は、ウミウシのことを書いているか。ウミウシに神谷を託して書いているか。

鰓(えら)と
触覚とを
獲得した

 この書き出しはウミウシのことを描写しているようにも見えるが、いのちの長いはじまりのようにも感じられる。神谷が、遠いいのちに自分をつなげているとも受け止めることができる。

遠くまで
光と
風と
感応できるよう
置き去りにしたナメクジ
追い抜いたカタツムリ
四六時中這いまわり
狡猾なトカゲの真似をして
移動してみたい
手というもの
指というもの
その強靱にあこがれた
はるかなにち月

 これはウミウシの気持ちだが、同時に神谷の気持ちだろう。「遠く」は「はるか」と言い直され、「にち月」と言い直される。
 空間ではなく、時間なのだ。
 しかし、時間と空間は、簡単に分離できない。

微睡(まどろみ)ながら
太古の空にとどろいた
雷鳴からの指令として
  尿管など
  肛門など
暗く
長くつづく
未踏の洞窟の
その出口にこそさらに下げて
  口腔など
  眼窩など
  鼻腔など
洞穴として
空にひらく
その入り口にこそ高みに掲げて

 空間と時間は、「肉体」のなかで合体する。「肉体」のなかでおきていることは空間と時間に置き換えられるということか。
 そして「肉体」とは「管」であり、「管」には「出口」と「入り口」があり、それは「空(宇宙)」に向かって開かれている。
 ウミウシも人間も同じなのだ。
 いのちを生きる。時間を生きる。宇宙になる。
 繰り返される「など」ということばが必要かどうか、私にはわからない。ない方が、私の好みである。
 一行の短さが、私は気に入っている。


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