白珠だより

札幌にて美人画と武者絵を扱っております白珠画廊のブログです。

美少女コンテスト

2012-07-06 | 画廊の様子
あやめ、かきつばた、はなしょうぶはいづれも日本の誇る名花です。
それぞれ菖蒲、杜若、花菖蒲と言う文字を持っていて、いっそうその姿が
美しく演出されています。
この花たちにはその美しさにまつわる哀しい物語が伝えられています。

業平を慕う恋人杜若姫は旅にでた彼を追って行ったけれど
その姿を見失ってしまいこの橋の下に身を投げたと言う悲恋物語の舞台、
三河八橋は今も姫の化身とも思われるかきつばたの名所になっています。
室町時代のこんな物語もあります。
源頼政は怪物、ぬえ(鵺)を退治した褒美としてかねてから
噂に聞いていた美女、あやめの前を賜ることになりました。 
何人もの美女の中からあやめの前を探しだせと言われて困り果て
    五月雨に沢辺のまこも水たえていづれあやめと
         引きぞわづらふ
と歌を詠んだそう。
ここから~いづれあやめかかきつばた~と言う美女を比べるときに
使う決まり文句が生まれたとか。
あやめ、かきつばた、はなしょうぶは甲乙つけがたいよく似た姿で
美しさを競い合う美女たちです。

歌舞伎の京鹿の子娘道成寺の第六段、花笠踊りで唄われるわきて節は
古くからの民謡で~あやめ杜若はいずれ姉か妹やら、わきて言われぬ
花の色ェ、さよえ、かわゆらしさの花娘~とあります。

美人の定義はつけにくいものですがいづれにせよその時代の人々の
感性によって決められるものなのでしょう。

今日の一枚の絵  「遊歩がしたそう」 月岡芳年 風俗三十二相
                    明治風俗  木版    

浮世絵風の面立ちと日本髪に華やかな帽子、鹿鳴館風のドレスを
纏い、花菖蒲の庭園に佇む上流階級の女性は画家が描いた新しい
近代美人の理想像でありロマンあふれる文明開化の象徴でもある
のでしょう。

さて、今風の美人てどうなの?
個性が美を創り出す時代?
すると周りには美人がいっぱいいるわけね。
だから…わたしは…つまり目に見えない美、
心の中で誰にも証すことのない美しさを競っていくことにしよう。
今日から明るく生きて行こう。
                 s・y

 札幌市の月寒にある八紘学園花菖蒲園は七月半ばまで
 開園公開しています。