小学生の時、近所にある図書館で借りた江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズが僕にとって、最初の小説の読書体験でした。
中学生になり、学校の図書室にあった星新一や、「刑事コロンボ」シリーズを読むようになり、置いてあった物は大半を読み終え、兄の部屋にも、星新一の小説があったので、それらも借りて読むようになりました。
中学2年のある日のこと、兄が持っていた星新一の小説も全て読み終え、何か他に小説が無いか、誰もいない兄の部屋を物色していると、「東海道戦争」という本が目に留まりました。
勝手に持ち出し、自分の部屋で読み始めました。
これが僕の筒井康隆との出会いでした。
凄い衝撃だった。
僕は貪るように読みました。
世の中に、こんなにも面白いものがあるなんて知らなかった。
中学2年生の当時、小説とは、固さがあり、且つ、何か、ためになるよなものであると、何処かで先入観みたいなものがあったのですが、そういったものが吹き飛びました。
小説って面白くて良いんだなぁ、と思いました。
物語は、大阪と東京で戦争をするというもの。
戦争の悲惨さを訴えるものでもなければ、戦争アクション物でもない、戦争を控え、浮き足立った人々や、実際に戦争が始まり、死んでいく人々を、滑稽に描いています。
主人公も滑稽に、そして、あっけなく死んでしまいます。
戦闘が始まり、間もなく物語が終わります。
戦争が終る訳でもなく、悪者が裁かれる事も無く、放り出すように物語が終ってしまいます。
この衝撃は、何と言ったらいいのか、お笑いとしての面白さと、背徳感が入り混じったものであったのかもしれません。
今でも、この「東海道戦争」を読んでいる中学2年生の自分の姿を、鳥肌が立っている腕を、鮮明に憶えています。
そして、時を経て、2006年。
僕はAKB48のチームKを知ります。
UHF局の何かの深夜番組で、AKB48のCMが流れ、何となく記憶に残り、ある日、ネットで調べてみました。
秋葉原にある劇場で毎日公演をしていること、その入場料が1,000円であること、チケット販売時間の少し前に並べば、買えること等を知りました。
アイドルが歌って踊るのを1,000円で観ることが出来るなら、と比較的軽い気持ちで、公演に行ってみようかな、と思いました。
ちょっと気になる映画を観に行く位の気持ちでした。
当時はチームAとチームKの公演の曜日は固定されていて、週末であれば、土曜日がチームK、日曜日がチームAでした。
観に行くチームを選んだのも、動き易い土曜日を選び、それがチームKだったということです。
そして、初観覧の6月4日を迎えました。
凄い衝撃でした。
「PARTY!」と言って始まる公演は、可愛らしい女の子たちが、可愛らしい衣装を着て、歌い踊り、しかも、3列目で観たので、まさに至近距離の目の前で、それらが繰り広げられていました。
パフォーマンスに対して、拙いとか、未熟であるとか、そういうふうには全く思いませんでした。僕には、完成された、プロのショーとして映りました。
曲も、当時の「PARTYが始まるよ」公演は直球のアイドルソングといった感じで、とても馴染み易いものばかりでした。
楽しい空間を、メンバー達が創り上げ、それに身を委ね、楽しさを全身で享受するような時間でした。
終った後は、夢うつつのような、「いいなぁ、いいなぁ」と頭の中で繰り返していました。
このふたつの大きな大きな衝撃は、僕の人生に大きな影響をもたらしました。
そして、先日、2月11日から13日まで上演された「ビリヤード・グリーン」での、めーたんの演技は、これらふたつの出来事と、同等か、或いは、凌駕してしまうほどの、大きな大きな衝撃でした。
「東海道戦争」を読んだ日、劇場公演を初めて観た日と同様に、僕はこの3日間のめーたんの演技を一生忘れることはないと思います。