サルバトール・だれ?  by 澁澤寅彦

笑いは地球を救う。
妻Rは足下をすくう

WTC

2001-09-16 14:07:50 | Weblog
暗い話 1

WTC、WFCからは、ハドソン川を挟んで、ニュージャージーが見える。
多くの人は、ニュージャージーからフェリーを使って、WTC、WFCに通っていた。
今は、このフェリーは、遺体をニュージャージーに運ぶのに使われている。
ニュージャージー川のフェリー乗り場の近くには、駐車場がいくつもある。
テロから二日くらいの間に、ここでは多くの高級車が盗難にあった。
二度と戻ってこない持ち主、マンハッタン島が孤立して、脱出できない持ち主。
そんな持ち主の不幸に付け込む泥棒。


暗い話 2

テロの首謀者が取り沙汰され始めると、アラブ人、インド人に対する攻撃が一部で始まった。
マンハッタンでターバンを巻いて歩いていたインド人が、襲われたと言う話を聞いた。
近所のスーパーの近くで働いているインド人は、いつも大きなターバンを巻いているが、最近はターバンの周りに布を巻いて、ターバンを見えなくしている。
あまりに頭が大きくなったその姿は、滑稽で悲しい。


WTC

2001-09-16 13:26:07 | Weblog
無力感

僕はこのテロの中で、誰かの役に立っているのだろうか。
爆発音がして、両側のビルのガラスが落ちてきて、みんなと一緒に走り出したとき、前の人を突き飛ばしはしなかったが、後ろを振り返って、倒れている人はいないかと、見回す余裕は無かった。
家についてテレビをつけて、ボランティアの消防士、医師、看護婦が募集されているのを見ても、僕は参加できない。(ボランティアで駆けつけて、その後、崩れ落ちたビルの下敷きになって亡くなった消防士の人達もいる)
輸血用の血が必要だと言われて、市民が夜中過ぎまで行列をしているのを見ても、90年代に英国にいた僕は、こちらで献血ができない。(狂牛病のおそれがあるから)
瓦礫の撤去に参加しているボランティアも、防塵マスクが足りないから、もう人数は間に合っているとの事。
結局、銀行員なんて何の役にも立たない。
水・木・金と、夜中に家に戻って、土曜も、日曜も出勤しても、やっているのは、オフィスを失ったうちの会社の業務を、いかに早く復旧させるかと言うこと。テロの被害にあった人には、何の役にも立っていない。
とりあえず目の前に仕事がある間は、気が紛れていろいろなことを忘れていられる。家に戻って、ふっとやることがなくなると、無力感で気分が悪くなる。
金は出すが、兵隊は出さない日本のように、募金をする。
何もできない罪悪感から、募金をすることで逃れようとしているのか。


WTC

2001-09-16 13:23:39 | Weblog
テロの翌日には、水がスーパーの棚から無くなり、ガソリンの価格も一部で4倍になっていた。
周囲との橋・トンネルが閉鎖されて、マンハッタン島は完全に孤島となっていた。
ようやく近くのスーパーに水が並んだ。橋も一部が開いたようだ。
テロから何日たったのだろう。今日は何曜日なんだろう。
すごく長い時間が経ったような気がする。

テロの翌日夕方に入った、取引先ののオフィス。
ミーティングの途中で、突然避難命令。
同じブロックの、グランドセントラル駅で、避難命令が出たそうだ。
仕方なく、次の仮のオフィス、グループ会社のオフィスに向う。結局最初のオフィスは一日しか使えなかった。
途中でロックフェラーセンタービルを通り過ぎるが、このビルも今日、避難命令が出たそうだ。
途中で和食レストランに入るが、そこも、館内アナウンスで、グランドセントラル駅の爆弾騒ぎの話をしている。
新しいオフィスの窓からは、ロックフェラーセンターが見える。あのビルがやられたら、一発だな。
ロックフェラー近辺から避難した人は、こちらでの滞在先に向って歩いてきたようだ。妻Rは、それを窓から見ていたのだが、誰も何が起きているかを教えてくれないし、館内放送はないし、かなり不安だったようだ。私の携帯電話も全くつながらなかったし。

高いビルを見ると、気分が悪くなる。エレベーターで高くに上がると気分が悪くなる。
妻Rはテロの日からずっとおなかが痛いと言っている。ヨルダン人の同僚が泊まった日から、目が痛いと言っている。
同僚が埃だらけの真っ白な姿で入ってきたのだが、コンクリートの粉で目をやられたのかも知れない。彼も目を真っ赤にしていたし。

深夜から雷を伴う激しい雨が降り出す。(飛んでいるはずの無い)飛行機の音かと思って、ドキッとする。