眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

優しさと哀しみ

2024-03-12 | 
 「優しさと哀しみ」

   いちばんきれいな心
   優しさと哀しみ
   精神のあやうい均衡
   脆くなった気持ち
   大好きな君と
   あの捨て猫は
   飼い主を見つけられただろうか

   たまごは
   見るのも
   食べるのもすきです
   空から
   たくさん 空き缶が降ってくる
   それは
   どしゃぶりの雨のような音
   長い長い夢を見た
   目覚めた時
   ぼんやりとしていた
   窓ガラスを
   石で叩き割った
   評判が悪くても
   僕は
   僕でいたい
   ただ 抱き締めた
   君の背中が
   茶色の下の遠い景色のようで
   猫が泣いていた
   自転車の
   油の切れた音がする
   頭を
   ボリボリ掻いて
   しらんぷりした

   「少シ様子ヲ見テミマショウ」

   永遠に続くものなんて
   ありはしないんだね

   みんな夢だった
   夜更かしの夜も
   あの子供の夢も
   手首切りたくなるような
   心の震えも
   誰かを愛したことや
   裏切られたことや
   それら 全ての犠牲は
   もう忘れなくては

   「残念ナヨウデスガ
    君ニハ 印ガ
    アリマセン」

   いちばんきれいな心
   優しさと哀しみ
   僕は
   みすぼらしい
   花壇の花にさえ
   存在をおぼえた

   僕らは残酷だ
   自分より
   弱い生物を
   探している
   ねぇ 僕
   僕は何もしていないよね
   何も知らないとき
   僕はいつでも
   そんな風に言っていた
   
   ごはんを残すと叱られるので
   無理してでも詰め込んだ
   食事のあとに
   一本だけ
   煙草がもらえた
   食堂の明かりが おれんじ色で
   夜の太陽なんだね
   冷房が効きすぎていて
   空気が
   とてもひんやりとしていた

   「   サン、大丈夫デスヨ」

   でも
   雨に濡れていた
   三本足の犬の
   その目が忘れられない
   そうして逃げ出した
   夜の道端で
   あの猫が
   ぐちゃぐちゃになって
   動かない
   限界だと思った
   何度も吐いた
   
   壁を叩く音がする  
   強く叩く音
   弱く叩く音
   あの声は
   誰のものだろう
   たどたどしく
   日本語で言う
  
   「タスケテクダサイ」
   「タスケテクダサイ」

   繰り返されるフレーズ
   暗転
   あのとき
   あのとき 僕は
   疲れていた
  
   ダカラ ドウカ

   神さま
   見捨てないで
   どうか
   皆をあわれんで

   いちばんきれいな心
   優しさと哀しみ
   僕は
   祈る術を
   知らない

   そして
   それだけが残った


   優しさと哀しみ



                   1997・11・29






   
   

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