眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

白い羽と目覚まし時計

2008-05-17 | 
白い部屋に
 羽の折れた天使がうずくまる
  大理石の床に
   真っ白な羽が散乱している
    僕は金の燭台のロウソクの灯りで
     部屋を見渡していた

  平衡感覚の鈍い僕は
   薄明かりの深夜
    壁に頭をひどくぶつけた
     それを見て
      天使がクスリと笑う
     
    道化師かい?

   普通の人間さ
  普通じゃないってよく云われるけどね

 僕はワインのボトルとグラスを二本用意した

   天使ってお酒のむのかい?
    そりゃあ飲むさ
     神様だって葡萄酒はわれの血である、って云ってた
      それに
     羽のない天使なんて
    天使じゃないよ

  それで僕らは乾杯しワインを飲み干した
 天使は何故自分の羽が折れたのか
切々と語る
 待てよ
  祈りを聴くのはそっちの役目だろう?
   いつも祈りを聴いているんだ
    たまには自分のことも語りたい
     そうしてグラスのワインを空にした
  
天使が何を聴くのかしらないけれど
 試しにビートルズの「ラバーソウル」をかけてみた

  いい曲だ 他の奴らは断然モーツワルトが好みなんだけどね
   好きだよこのレコード

   君さ、だから羽折れたんじゃないの?
  僕が云うと天使は顔をしかめ
 ワインのボトルを僕からふんだくった

それから僕らは朝方まで飲み続けた

  ワインのお礼に
   あんたの祈りを聴くよ
    天使がろれつの回らない声で呟いた
     
     パンはさ、あいにく切らしてるんだけど
    僕が云うと
   大丈夫 聖体はいりょもパプテスマも要らない
  大事なのは
 真剣に祈ることだからね
そう応えて三本目のワインの残りをグラスに注いだ
 それに葡萄酒はあるわけだから

   それで何を祈る?

  天使が僕の瞳を覗き込んだ

  僕は

  僕は


           目覚まし時計が鳴った

           僕は夢から醒めた

           夢から醒めたんだ




  
コメント (8)
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