眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

ユートピア

2007-10-05 | 
倦怠感に天使の白い羽が震える
 ひどく重たげな白い大理石の扉に
  柔らかな接吻を塗す
   部屋は昼間の喧騒を忘れさせ
    甘美な赤いワインのしじまに
     緩やかな飛行をざらつく舌で世界を舐め廻す
      醗酵した蒸留酒のすえて匂い
       天使の羽が風に舞い
        白濁した意識の華厳に草花の
         夕暮れ時の葉に注ぐ雫の一滴を想った

          ユートピア
           僕はワインを舐めながら
            地上の烙印をかみ締める
             ユートピア
              理想郷の中で
               トマス・モアは障害を持つ人々を 
                どの変に烙印したのだろうか?

                哀しい想いは生きてゆくための必要十分条件
               僕らは青い街灯の下
              雨の降りしきる夜に煙草に灯を点ける
             「幸せと不幸せはおんなじだってさ」
             友人が朝からビールの缶を空け
            酔いどれの軽躁状態に於いて
           泣き出しそうな記憶を笑い話に変換させた
          飲めよ 扉が開かれる
         あんたの実存は苦しみと安らぎのアンビィヴァレントの類さ
        ワインのボトルを一本空ける深夜
       僕らは限りなく自由だった
      落ちた筈の白い羽の幻視が宙空に舞い散った
     誰かが歌いだした
    懐かしい歌声が
   鳥だった記憶を映し出す
  深い井戸の底に鳥の化石が眠っている
 
   色彩が極度に磨耗した風景
    灰色に近い意識の香りは
     ようやく安定を図る
      水でシャワーを浴びてきりっと冷えたビールを飲み干す
       それでいいだろう?
        それで十分さ
         明日飲む酒の事だけ考えれば良い
          世界は空想の産物で
           僕らは夢と現実の界隈を徘徊したむろした

            白い羽を持った天使の記憶

             ワインの赤い痛みに凝固されても

              そんなに悪いことばかりじゃない

               抜け落ちた白い羽で手紙を書き

                大丈夫

                 堕天使の記憶に残る

                  白い羽の柔らかな感触

                   優しさのかけらは

                    得てしてそんなもんだろう

                     屋根裏部屋の少年

                      古い映画のユートピア




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする