藤井猛九段による終盤のファンタスティックな〇〇 2001年 第14期竜王戦

2019年04月09日 | 将棋・好手 妙手

 藤井猛九段の将棋は、なにかとネタにされやすい。

 前回は鈴木大介九段による終盤の魔術的勝負術を紹介したが(→こちら)、今回も「振り飛車御三家」つながりで藤井猛九段の話題を。

 藤井猛といえば、

 

 「藤井システム」

 「藤井矢倉」

 「角交換四間飛車」

 

 など、序盤戦術とともに取り上げられるのが終盤のポカ

 

 「信じられないような芸術的逆転負け」

 

 そう本人も自虐するような、たしかにとんでもないウッカリもあるが、そこがクローズアップされすぎると、ちょっとと感じることもあるものだ。

 たしかに「羽生世代」の中では、スプリント勝負を得意としているタイプではないが、それはあくまで、「あのバケモノ集団」とくらべての話。

 まあ、ふつうに考えれば終盤が弱い人がA級八段タイトルホルダーになれるわけもないし、われわれファンもわかっておもしろがっているわけだけど、あらぬ誤解が広がっても、それはそれで困りもの。

 論より証拠と、今回は藤井猛九段のいい手を見ていただくことにしたい。



 2001年の第14期竜王戦

 「一歩竜王」の防衛劇(それについての詳細は→こちら)に続いて、羽生善治四冠(王位・王座・棋王・王将)を挑戦者にむかえている。







第2局の最終盤、飛車の王手で先手が負けに見える。

 ▲38になにを合駒しても、△同飛成で詰んでいるからだ。

 投了しかないかと思われる局面だが、ここで「次の一手」のようなしのぎがある。

 

 

 






▲48歩が軽妙な一手で、先手玉に詰みはない。

△同飛成▲17玉で、になって△39角成がなくなっている。

 なんとも、センスのいい手ではないか。 

 

 

 

 

 きれいなワザだが、このあたりでは藤井も読み切りだったのだろう。

 数手進んで、この図。







 先手玉は一目受けなしで、後手玉はまだ詰まない。

▲22金打、△同角、▲同金、△同玉、▲41成桂△42歩で、遠く△42の地点を守っているのだ。

 この綱渡りの終盤が「羽生マジック」かと思われたが、ここで先手に決め手がある。

 

 

 





▲39銀と打ったのが、実にさわやかな一手。

一段目に引きずり降ろして、威力を半減させる手筋だ。

 △同竜タテの利きが消え、上記の手順で△42合駒できないから詰む。

 本譜は△同金で詰めろが解除され、▲53成桂まで藤井勝ち。

 美濃囲いの特性を知りつくしたような、華麗な手筋の2連発。

 振り飛車党の方には、ぜひ盤に並べて観賞してほしい終盤術だ。

 

 (西山朋佳の剛腕編に続く→こちら

 

 

 


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