ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 24ページ目 美しい切子のワイングラス 

2013-01-11 23:22:43 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【24ページ目】


鯵元社長はさらにひと口含んだ。


「私の答えはシャトー・ト」


彼がワイン名を答えるのを遮るように和音が突然話しかけた。


「さすが鯵元社長!」

「ええ?」


鯵元社長は和音が何を言っているのか理解できなかった。


「私は、鯵元社長のテイスティングを見てもっと悩むのでは思ったのです。

カベルネ・ソーヴィニヨンのテイスティングの後では、その味覚の余韻が

残っているはずですから」


和音は鯵元社長の目を見つめた。


「ところがそのワインをテイスティングするなり、ポムロールのワインだと言いました。

有名なワインはメルロ主体にカベルネ・フランがブレンドされているのです。

それらにはカベルネ・ソーヴィニヨンはブレンドされていない・・・」


和音は、鯵元社長に微笑みかけた。


「テーブルに並べられたボルドーの3本はすべてポムロールのワインですね?」

「和さんのテイスティングのヒントになりますから・・・・

私の答えはシャトー・トロタノワです。」


鯵元社長は一瞬動揺したが、和音がポムロールのワインだと判ってもいいと思い直した。

かえってシャトー・ペトリュスに間違えさせるチャンスだと思った。


「それでは和さん、1本選んでください」