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ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 147ージ目 盲目のソムリエ  金色の人魚 

2015-03-08 00:27:48 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【147ページ】


「私も右脳を鍛えれば、和さんや粉河さんのように、ワインを飲んだ時、イメージ
を浮かべられるようになるでしょうか?」

「ええ、もちろん!

車のナンバーを活用するのもいい方法でしたが、ワインを愛する大沢理事長なら
もっといい方法があります。」

「あっ、和さん、判りました!

ワインのヴィンテージを活用するのでは?」

「正解です。

ワインのヴィンテージは、車のナンバーと同じように4ケタです。
打田さん、今飲んでいるワインのボトルを貸していただけませんか?」


 打田は、テーブルから紙に覆われたボトルを持ち上げ、和音に手渡した。


「例えば、このワインのヴィンテージが20-03年とします。

車のナンバーと同じように20-03読み、又が逆に30-02と声を出します。
そしてワインのラベルには、シャトーやワイン畑や動物や魚や植物等のデザイン
が描かれていて、ワイン名も記載されています。
例えば、金色の人魚のデザインが描かれているのなら、そのイメージをワイン名と共に
右脳に焼き付けるのです。

では、実際にこのワインを使って、右脳トレーニングをやってみてください」


 和音は、手に持ったワインを大沢理事長に渡す。


「ラベルを覆っている紙を取り払ってどうぞ」


2011年シャトー・ジスクール/マルゴー/750ml/赤ワイン
クリエーター情報なし
CH.GISCOURS マルゴー


※金色の人魚のデザインのラベルはシャトー・ジスクールです。



ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 146ージ目 盲目のソムリエ  右脳の働きがいいから 

2015-03-04 15:29:46 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【146ページ】


 和音は、粉河がワインを飲むのを確認してから訊いた。


「粉河さんは、このワインを飲んで何かイメージが湧きましたか?」

「目に浮かぶのは、美しいシャトーと広大な敷地にある森と湖、そして
広がるワイン畑」

「私も同じイメージが浮かびました。」


 大沢理事長は、ワインを飲みながら首を傾げた。


「私には、カシス、スミレ、プラム、干しブドウなどの豊かな香りを
感じ取ることができるが、お二人のようなイメージは湧かないなあ・・・」

「大沢理事長、それは私が盲目だからですよ!

一般の人よりも右脳が発達しているのだと思います。」

「それでは、和さんはどうして?」

「私は、小さい頃、家族と熊野古道をハイキング中、突然神隠しにあったかの
ように消えてしまったそうです。

崖の窪みに落ち込み、そこで何日か眠り続けたと聞いていますが、その時の
影響で感性が非常に強くなったのです。

粉河さんと同じく右脳の働きが活性化されたのでしょう。

両親は、私の右脳の働きを衰えさせないために、車のナンバープレートを
一日20台読み取るように言いました。

例えば、32-48のナンバーなら3248と声を出し、次に右から8423と言う
事を繰り返しました。するとナンバーを瞬時に映像として捉えることができるように
なったのです。」




ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 145ージ目 盲目のソムリエ  広大なワイン畑が浮かぶ 

2015-03-03 15:57:47 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【145ページ】


「その王子とは、3代目オーナー、エマニュエル・クルーズ氏が経営に加わったから
でしょう?」

「ええ、シャトー・ディッサンが長い眠りからやっと覚め、目覚ましい復活を遂げるのです。」


 和音は、シャトー・ディッサンを口に含み、話を続ける。


「おや、今度は目覚めた森の美女が王子と華やかに踊っているシーンが浮かぶ。
なんて、エレガントでフィネスな王女なんだろうか?」

「この格調高いシャトー・ディッサンは、素晴らしい成功を収めたヴィンテージ
すなわち2008年だ」


 専属ソムリエの打田が、ラベルを覆っている紙を取り除く。

ラベルには、2008年のヴィンテージが印刷されていた。

「粉河さん、ヴィンテージが当たっていましたよ」

大沢理事長が、粉河に告げ、彼は頷く。


「和さん、3本目を開けましょうか?

何番がいいですか?」

「それでは3番のワインをお願いします。」

専属ソムリエの打田は、3番と書かれたワインを手に取り、手際よく抜栓し、

3つのグラスに注ぐ。


「和さん、粉河さん、3本目のワインをどうぞ」と大沢理事長が勧める。


 和音は、ワイングラスを手に取り、一口含む。
目の前に広大なワイン畑が広がり、美しいシャトーが目に浮かんだ。


ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 144ページ目 盲目のソムリエ  眠れる森の美女  

2015-03-02 11:45:58 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【144ページ】


「大沢理事長、眠れる森の美女の話の内容をご存知ですか?」



眠れる森の美女 クラシックバレエおひめさま物語
クリエーター情報なし
講談社





 和音が、大沢理事長に訊いた。


「ええ、民話なので、さまざまなパターンがあるようですが、私の知っている話
はこうです。

あるところに子供をほしがっていた国王夫妻に、ようやく女の子が授かった。
祝宴に一人を除き国中の12人の魔法使いが呼ばれ、魔法使いは一人づつ
魔法を使った贈り物をする。

11人目の魔法使いが、贈り物を贈った時、招待されなかった魔法使いが
現われ、王女に『王女は錘が刺さって死ぬ』と魔法をかける。

一度かけた魔法は取り消すことができない。

そこで、12人目の魔法使いは『王女は錘が刺さって100年間眠りにつく』
と修正の魔法をかけた。

100年後。近くの国の王子が、王女が眠っているという噂を聞きつけ、城を訪れる。
王女は目を覚まし、2人はその日のうちに結婚、幸せな生活を送ったそうだ。」

「大沢理事長、私が眠れる森の美女のことを訊いたのは、シャトー・ディッサンが
眠れる森の美女に思えたからです。

かつて一級シャトー、マルゴーと並び、

マルゴー地区の二大シャトーと称されていたディッサンが長い眠りにつき、
格付けにふさわしくないワインだと酷評されていた。

ところが、1994年に、王子が現れたのです!」


※錘・・・錘糸をつむぐとき、その糸を巻きつける心棒

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 143ページ目 盲目のソムリエ  シャトー・ディッサン   

2015-03-01 15:09:50 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【143ページ】


「格付けが変わらずとも、160年の間に、低迷したワインもあり、目覚ましく品質が
向上したワインもあります。

メドックのワイン格付けにこだわらずに、いいワインを探し出す楽しみが
ありますね?

大沢理事長の一番のお気に入りが、第1級のシャトー・マルゴーではなく、第3級シャトー・パルメ
になったのには理由があるのですか?」


「5本のワインの中でシャトー・パルメが出てきたときに、聞いていただけますか?

2本目はどれにしますか?」

「4番のワインでお願いします。」


 専属ソムリエの打田が、4番と書かれたワインを手に取り、抜栓し、3つのグラスに
注いだ。


「和さん、粉河さんもどうぞ」と大沢理事長が勧める。


「粉河さん、このワインは暗いガーネットの色合いです。

スミレの花や香水のような香り・・・」



「スパイスやプラムのジャム、カシスなど香り高いアロマが感じられる」

 和音のテイスティングコメントに続き、粉河も感想を述べる。


「まるで眠れる森の美女に登場するひときわ美しいシャトーが目に浮かぶ」

と和音と粉河が同時に発した。


「おやおや、お二人とも同時に同じイメージが浮かんだようですね?
このワインは、私のお気に入りの一つのシャトー・ディッサンだ」


シャトー・ディッサン 2006 赤
クリエーター情報なし
シャトー・ディッサン