５ ドイツワインの勉強③ ９１ページ目

　
【９１ページ】


和音　　　　　　マスター、このワインのラベルを良子さんに見せてあげて！

マスター　　　　田辺さん、ワイン名はこれです。

良子　　　　　　やはりモンラッシェだったわ！

マスター　　　　もう一杯いかがですか？

良子　　　　　　和さんがまだ飲んでいないようですが？

和音　　　　　　良子さん、もう一杯もらったら？

　　　　　　　　しっかりテイスティングして、モンラッシェと他のワインとの区別

　　　　　　　　をできるようになってね！

良子　　　　　　もう、和さんのいじわる！


　マスターは、モンラッシェを田辺のグラスに注いだ！

良子　　　　　　おいしい！

　　　　　　　　とても幸せな気分だわ！　

和音　　　　　　次は、『黄金のしずく』を飲もうか？　　

良子　　　　　　ええ、黄金のしずく？　　

　　　　　　　　神秘的なワインかしら？

和音　　　　　　マスター、黄金のしずくを二人に入れてください。　　


　マスターは、ドイツワインを抜栓し、二つのグラスに注いだ。


マスター　　　　どうぞ！

良子　　　　　　いただきます。

　　　　　　　　レモンやグレープフルーツのような柑橘系のいい香り！


　　

５ ドイツワインの勉強③ ９０ページ目

【９０ページ】


良子　　　　　飲んでみたい！

和音　　　　　マスター、良子さんにドイツの珍しいシャルドネを！


　マスターは、あるワインを抜栓し、グラスに注いだ。

ワインのラベルは、田辺から見えないように手で隠していた。


マスター　　　どうぞ！

良子　　　　　いただきまーす。

　　　　　　　わー、おいしい！

和音　　　　　ブルゴーニュのプレミアムワインに負けないおいしさだろう？

良子　　　　　ええ、ほんとに！

　　　　　　　マスター、このワイン１ケース仕入れてくれないかしら？

マスター　　　いいよ。

　　　　　　　でも１ケースも買うと田辺さんの給料の何ヶ月分になるのだろう？

良子　　　　　ええ？　そんなに高いの？

　　　　　　　このワイン、和さんからの差し入れ？

マスター　　　実は、そうなんです。　

良子　　　　　マスター、これドイツのシャルドネではないでしょう？

マスター　　　和さんに聞いてください。

良子　　　　　私を騙したでしょう？

和音　　　　　良子さんにおいしいワインを飲んでもらいたいと思っただけ。

良子　　　　　このワインはモンラッシェ？

５ ドイツワインの勉強③ ８９ページ目

【８９ページ】


良子　　　　　マスター、今晩は！

　　　　　　　暑いわね！

マスター　　　いらっしゃ！

　　　　　　　今日から、梅雨明けだそうですよ。

良子　　　　　マスター、夏バテしないでね。

マスター　　　田辺さんも気をつけて。


　良子は、マスターと会話を交しながら、和音の隣に座った。


和音　　　　　お疲れ！　　　　　

良子　　　　　今日も、忙しかったわ！

和音　　　　　マスターも言っているように、体に気をつけて！

良子　　　　　ありがとう。　　

和音　　　　　ところで、ドイツワインの勉強進んでいる？

良子　　　　　マスターが、毎日基本的なドイツワインを紹介してくれるのよ。

　　　　　　　ドイツワインの初級コースをマスターしたところかしら？

和音　　　　　今日は、珍しいドイツワインが入荷しているらしいよ！　

良子　　　　　マスター、本当かしら？

マスター　　　ドイツのシャルドネですよ。

良子　　　　　ええ、シャルドネ？

　　　　　　　リースリングでなくて？

和音　　　　　飲んでみる？

５ アグリ星人 ８８ページ目

【８８ページ】


アグリ　　　　うーん・・・・・。


　アグリはひと言発した後、和音の６本目のワインのテイスティング言葉を思い出して

いた。


奥山社長　　　何か気にかかることでも？

アグリ　　　　和音さんは、スペインのワインと見抜いていたのでは？

奥山社長　　　そんなことひと言も言ってないよ！

アグリ　　　　ええ、でも少なくともブルゴーニュのワインではないと。

奥山社長　　　その根拠とは？

アグリ　　　　ブルゴーニュ風ですよ。

　　　　　　　和音さんは、６本目のワインをブルゴーニュ風と言って、決してブルゴーニュ

　　　　　　　とはコメントしていません。　

奥山社長　　　ブルゴーニュに似せたワインすなわちブルゴーニュのワインではないと

　　　　　　　言っていたのか！

アグリ　　　　そうだと思います。

奥山社長　　　我々の完敗ということだね？　

アグリ　　　　ええ。

奥山社長　　　祝勝会用にモンラッシェを準備していたが、残念会ということで

　　　　　　　皆で飲もう！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

５ アグリ星人 ８７ページ目

【８７ページ】


アグリ　　　　　トリックに引っ掛けたとはどういう意味ですか？

奥山社長　　　　アグリさん、本当に申し訳ない！

　　　　　　　　実は、６本目のワインは、ブルゴーニュのワインではなかったのです。

アグリ　　　　　ええ、本当ですか？

　　　　　　　　ブルゴーニュのシャルドネだと思ったのですが・・・・。

奥山社長　　　　テイスティングにかけては、トップソムリエも敵わない和さんも

　　　　　　　　間違うほどのワインなのです。

アグリ　　　　　ワイン名を教えていただけますか？


　奥山社長は、ラベルを隠している紙を取り払った。


奥山社長　　　　これです！

アグリ　　　　　トーレス・ミルマンダ。

　　　　　　　　スペインのワインですか？

奥山社長　　　　そうです。

　　　　　　　　スペインにフランス系の高級ブドウを導入した先駆者ミゲル・トーレス

　　　　　　　　によるシャルドネなのです。

　　　　　　　　冷涼な高地の完熟ブドウを房のまま搾り、フレンチオークの小樽で醸造、

　　　　　　　　オリ引きをせず数ヶ月間酵母をかき混ぜる醸造法は、ブルゴーニュで　

　　　　　　　　しばしば行なわれている製法そのままなのです。

アグリ　　　　　ブルゴーニュにそっくりのワインということか！　　

奥山社長　　　　それを和さんも見抜けなかったのです。