@「葦は見ていた」身分の差で武士との婚姻が出来ない遊女が侍の出世を邪魔しないようにと、家財等を売り飛ばすまで支えた侍の一途の恋心を忘れないために遊女の行く場所を見つけた。それはこのままの幸せを抱いたままで自殺をすることだった。物悲しい女心の終末はその時代背景もあるが、現代でも家系を重視した婚姻関係は続いている世界がある。特に金と権力を持った世間離れしている特権階級と名乗る世界だ。
『山本周五郎33集』山本周五郎
「みずぐるま」
次席家老の家督を引き継ぐ寸前に姉弟に不運が襲った。それは姉が自殺、弟の世継ぎが延期となったのである。母は悲しみ病気がちとなり養女の話が姉に似ていると言うことで芝居小屋の娘にを向かい入れる。娘は何故姉が自殺したのかをある侍から聞くと弟はその理由は母しか知らないのに何故その侍が知っていたのか・・・実はその侍が姉を嫁に行く前に妊娠させていたことが分かった。
「葦は見ていた」
江戸に父の葬儀に来た侍がある遊女と親しくなり身も心も離れ難い関係となった。侍が地元に帰るとそれを追いかけるように遊女も一人地に着いた。やがて互いが知るところになると以前のように密接な関係を保つようになり借金の山を抱え、家財等を売りながらも関係を深めた。一切合財を売ってまでも愛した侍との幸せを胸に、遊女の女にとっては許嫁がある侍との婚姻は不可能だと自殺を心に決めた。
「夜の辛夷」
年増の遊女に一人の男がついた。だが泊まると言うのにソバ寝はしないという。ある日岡っ引がその男の胸に刺青等があるか調べてほしいと依頼され、確認すると匕首で刺された痕があり盗人の一人だと言われる。すると遊女はその男を逃そうとするが年貢の納め時と諦める。遊女は一晩だけの思いをその男と共にした。