「川柳歳事記」

攻め
ほんのりと赤みがさして攻められる
水攻めも火攻めも自若たる砦
愛一つ零さぬようにして攻める

「川柳歳事記」

ストレス
ストレスの谷間で揺れている正義
ストレスが溜まる太陽を裏返す
丹田に消化不良の石がある

「川柳歳事記」

時代
ありすぎて結局何もない時代
変貌の時代へ花の種を蒔く
時代からこぼれぬように生きている

「川柳歳事記」

魚
鰯やーい鰯やーいと呼んでいる
魚になった戦友が還らない
土壇場で一度まばたきする魚

「川柳歳事記」

腰
喝采へ深あく深く腰を折る
腰からの上下を語る雑学者
オーイお茶ギックリ腰が呼んでいる

「川柳歳事記」

煙
スモークになりそう混んだ喫煙所
排気ガスエコの視線をじっと耐え
斎場の真っすぐ天へゆく煙

「川柳歳事記」

雲
復興の汗を労わる茜雲
戦雲がなびかぬ地球祈るのみ
旅好きの雲と故郷を語り合う

「川柳歳事記

旧
旧習を語れば家族そっぽ向く
新築でも旧態依然家の中
旧かなの崩し字前後勘で読み

「川柳歳事記

角度
直滑降で降ってきました焼夷弾
寂聴尼角度の違う目で法話
絶頂に立てば三百六十度

「川柳歳事記

押す
パソコンの中に押し込む隠し事
一押し二押し賞味期限の無い命
もう一つ余生の扉押し開ける