せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

木造建具から始めよう!〜デザイン力で日本の山を救う!!〜

2020年11月30日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト


建具の設計デザインの仕事が、大好きです。
(事例写真は、最近完成したお宅から少し紹介します)

玄関引き戸は、建築の法律で
延焼ラインのかからないところは
スギ板(軒の出が多い場合)やヒノキで造ります。

依頼主さまから、特にご要望がなくても
全部の建具を、機能的に、そして、美しくデザインし、
製作したい思いが強い、設計者の一人です。

設計事務所に勤めたこともある 
大学の恩師から、「『建具を100個デザインしろっ!』て
師匠に指導されたものだ。」

との話を聞かされ、
学生の時に、ワクワクしたものです。

しかし、現実の設計は、すべてオーダー物となると
とんでもない予算が必要になってきます。

もちろん、建具の微妙な寸法は、
箇所箇所によって、すべて、違ってくるので、
実際にはオーダーなのですが
それを良い材料で、良い金物で、
凝ったデザインでとなると、です。

ですから、独立してからは、
ここは予算をつけよう
ここは、壁の扱いで主張をなくした
シンプルな建具で良いね。

などと、依頼主さまと
膝を詰めながら、決めてきました。

事例)メインの出入り口は明かり窓付きの
スギ無垢板框建具。

隣の茶箪笥は、
フラッシュ戸でコストダウン。

おかげさまで、当事務所に依頼してくださる方は
木製の建具好きの方が多く、

最近は、こんなデザインが良いのです!
と、外国の木製建具のカタログのイメージを
見せていただく方も、出てきました。

コストダウンも考慮して、
一般材のスギ板幅で
デザインすることも覚えました。

事例)玄関の下足入れも杉板貼りです。
(フローリング材のあまり程度)

板を縦横使いで、リズミカルにした吊戸棚


実際、設計業務としては、手間のかかる建具。

監理者としても、建具やさんとの打合せが
半端なく多くなります。

どれだけ、既製品が楽だろう。。
と、疲れてくると、思うこともあります。(笑)

それでも、既製品の建具を選ばないのは
単純につまらないから。。。

木の空間に、塩ビシート貼りの建具は似合わないから。
接着剤のシックハウスが心配だから。

などなど、理屈をつけていきますが
やはり一番は、空間の質のバランスを良くしたいから。

現場の大変さ(木枠はすべて大工さんの加工手間が
必要になってくるため)は、承知しています。

それでも、建具は譲れない、笑。

稼ごうと思ったら、設計デザイン料は
増えなくても、建具も家具もデザインする私は
おバカかもしれません。

でも、なるべく日本のスギ、ヒノキを使って
家の中に、無垢の質感を取り込むことと
山への還元を考えて、粘って仕事をしているところです。

建具となると、その木の材質も問われるので、
木材選びから行うことも、あります。

そんな私が、師匠!!ともお呼びしたい方の
講義が、先週末、神奈川建築士会で開催されました。

リモートではなく、会場での勉強会。
久しぶり、建築士の皆様のお顔拝見。

そして、何と、神奈川の建具屋さんが、
スギの木で、家具を作って下さるそう。



座ってみて、
暖かくて、軽くて、嬉しスギました。

職人さんがいないと、
私たちの設計も全く意味をなしません。

伝統構法や伝統的な匠の技術をユネスコにて
無形登録文化財にしようと、
建築士会とは別の所属団体でも応援しています。

神奈川県の建具組合さんのお話もあり、
以前は500社あったのが、
今現在、加入者は、90社だそうです。

建築士とタッグを組んで、
匠の技を絶やさないようにしよう!
の志を持って、私たちも、取り組もうとの、
勉強会となりました。

最近は障子もほとんど設計しないと
副会長から。設計させてもらっている我が身のありがたさ。

和室の欄間は、現場監督さんから、
「このサイズなら、いらないのでは?」
と再三反対された小さなもの。

襖を閉じた時の明かりが少しでも、欲しい。
開け閉めできれば、通風の意味もあると説得。


出来上がってみて、
「やっぱり合ってよかった」と
ご本人も感じたそうです。

譲らなくて、良かった、笑。

そして、メイン講義は、1993年の台風で、
杉山の甚大な被害を受けた日田のスギ風倒木が、
燃やされる予定だったのを、
救った家具デザイナーの小田原健氏のお話し。



木製建具と言わず、「木造建具」とあえて言うのは
無垢材を用いたいからだそうです。

話しの入口は、建具にスギヒノキなど、
日本の木を使いましょう、でしたが、
デザインの力で、山を森を蘇らせよう!
と、壮大なスケールへ。

大共感です!

大先輩の実績と頑張りに、
豪雨被害で、球磨川流域のダム復活の話が出るなど、
故郷熊本の動向に、ずっと、モヤモヤしていたので、
勇気をもらいました。

熊本県の蒲島知事には、二期目の選挙時に、
農業の次は、熊本の林業と山の整備を!と直談判して、

森と樹と暮らしを繋ぐコミュニティラボで製作している
絵本[植えない森]=針葉樹ばかりではなく、
治水効果のある広葉樹も実生で植える
も、手渡したのに、、、。

また、ダムを撤回された
熊本県五木村の森林活性化の事業に参加したのに、
協定者は、解散の方向になってしまい、、、。

次の一手はどうすれば⁈
と、全く先が見えずに、います。

ダム建設反対を牽引されてこられた
つる祥子さんも、被災地を歩かれる中、
「くまがわ春秋」9,10月号(あれから3ヶ月)に、
水害は、山問題とハッキリ書かれています。

私自身は、世の中を変えたいとか、
有名になりたいとか、
大それたことを望んでいる訳ではないです。

生きもの命を守り、先達が苦労して植えた、
スギを生かし、山を本来の姿に還していきたいだけなのです。

そんな中、小田原先生の話で、
少しだけ、光が刺しました。

週末、神奈川県は「ステージ3警戒宣言」を出し
外出を控えるように、指導があっています。
いつもなら、講師を囲んで、
中華街に繰り出す仲間も、帰宅へ。

移動もままならない身ですが、
山のこと、木のこと
故郷のこと、
考えて後、あらたに行動に、移します。

講師の皆様、会場設営準備の皆様
このタイミングでの講座の開催
誠に、ありがとうございました。


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