せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

西暦2022年を振り返って、思いがけない出会いや出来事をと面白る一年でした

2022年12月30日 | ユニバーサルデザイン


仕事納めの方、まだ年末年始関係なくお仕事の方
様々かと存じます。

当方は、今月29日より、冬季休業ですが、、、
そうなのです。年末年始、我が家で過ごす身としては、
今年も、おせちの準備などで、実は慌ただしくしています。

段取りと、買い物、片付けに、食器出しなど。。。
今年は、義母の代わりに、畑の手入れも加わり、
なかなか家事の時間増し増しの暮れです。
毎年、嫁としての、少しもの務めです。笑。

みなさまにとって、今年はどんな一年だったでしょうか。

コロナ禍の昨年に比べたら、行動範囲も広がり
人との交流も増えたのではないでしょうか。
そして、そのことをかみしめた
一年でもあったことと思います。

私も、面白い出会いが沢山の年でした。
ありがとうございます!

一方で、今年は本当に家族のことで、
いろいろなことが起きすぎて
気が休まらない一年でした。

どなたも通る道かもしれませんが、
それにしても、重なりました。

ブログに綴りたいこと、たくさんあったのに、出来ずじまい。
旧暦新年までには、ちゃんと記録しておきたいですね〜。

さて、今年一年を振り返ってみます。
今までとは、大きく変化があったトピックを綴ります。

1)仕事のこと

今年は、新しいチャレンジが続きました。
建築を通じて、今までとは、違う立場でのお仕事。
経験と、年を重ねたことによって、頂けた役割です。

一つは、公的な建築のものづくりの、審議委員。
委員の皆さんとの意見交換に始まり、設計案の審査まで。
事前資料に眼を通す、意見をまとめる、会議に参加する、
と、実に準備が大変でしたが、様々な学びがあり、
建築への熱い思いと、時に制度の壁に対する悔しさも混じりながら
なんとか、良き方向に導けたのではないかと思っています。
委員の皆様が、それぞれに違うお立場で、
その方々の意見を伺うのも、実に楽しみでした。
守秘義務があり、その喧々諤々をブログに綴れないのが、残念。
公表される内容については、順次、お伝えしていければと思います。

二つ目は、大学での講師のお役目です。
大学の校風もあるでしょうか。
伝統的な女子の大学ということもあり
学生さんは素直で、熱心な方ばかりでした。

私も、伝えたい!という想いが熱くなった授業でした。
図面やエスキスを添削して授業に臨むので
こちらも、準備は大変ですが、学生さんがどんどん技術を吸収し
発想力や構成力、まとめる力を身につけてくれたのは
うれしい限りでした。

学生さんの授業アンケートの結果も教員には知らされるのですが、
平均よりダントツに、「自分が成長したと思う」という点が
高評価だったのには、嬉しかったですね。
もちろん、平均以下の項目もあり、
反省点は、来年に工夫していきます。

2)プライベートではヘロヘロに。

母のホスピスケアに、葬儀。父の介護に入院。義母の救急搬送に手術。
途切れることなく、ハラハラの心配が続きました。

さらに、自分自身の心身の調整がなかなか大変でした。
結構、振り回されました。精神的に。
病院の手続き関係には詳しくなりましたけどね、笑。

今やっと、こうしてブログが綴れるということは
私自身も、元気になった証拠です。

3)健康のあたらしい習慣

そんな中、腰痛のリハビリも兼ねて始めた筋トレが
思いのほか良くて、助かってます。

もちろん痛みが消えることはありませんが
以前よりも、動かしやすくなっていることは事実です。
このまま、続けられると良いなぁ。。。

もう一つは、「分子栄養学」の学びと実践。
発達障害の専門家に紹介してもらいました。
(発達障害とはこれから言わなくなるようです)

朝起きれない子どもの健康のため
保険治療ではないのが難点なのですが、
根本的な体質改善の方法を模索し、自分自身の疲労回復にも
役立ち、共倒れにならないで済みました。

免疫力アップにもつながり、おかげで
学校でも、仕事関係でも、コロナにかかる人が多いなか
なんとか、家族全員、かからず仕舞いできております。

4)対談デビュー

異色メンバーによる、対談が本に掲載されました。
その名も「神木女子」対談。
かみきではなく、しんぼく、です。
御神木について語っています。

SNSでは、発信していましたが、
ブログでは紹介していませんでしたね。

お正月に、詳しく紹介したいと思います。

神木女子メンバーが、強烈な個性で、
ユニークなお仕事をされていて。
私はとっても心地よいメンバーでした。

出版社と著者が、日帰り旅も企画してくださり、
それもまた面白い旅でした。

様々な出会いによって、建築という視点から、どんどん
視野が広がって、本当に、面白い年でした。

一年を通して、心身ともに疲弊した時期もありました。
トータルすれば、苦しい時も、いろいろな体験ができた
そいう点で、面白い方が勝るでしょうか。。。

私の得意の「面白がる力」
本当に今年は、これが試された年でした。

これからも、どんどん、面白がる力で、面白い船に乗って
面白い旅にでる人生でありたいなと思います。

かなり私的なまとめになりました。
みなさまも、来年に向けて、お疲れの残りませんように。。。

どうぞ、良いお年をお迎えください。


歴史的建物を訪ねる建物探検旅を、年内に無事に終えて

2022年12月26日 | 模型・実験・見学・講習・イベント


ヘリテージマネージャーの講座を受講していなかったら
出会わなかったかもしれない建築。

故安達謙蔵氏が、別荘として建てたその建物は、
今は、郷土資料館になっています。

正式名称は、「横浜市八聖殿郷土資料館」。

熊本の三賢堂→ 東京の哲学堂→ 横浜の八聖殿
と、年内に巡ることができました。

天井の梁が特徴的。


階段も八角形に添わせて変形


噴水も八角形なら、

門の柱頭も、八角形


建設時代の流れは、

明治42年~哲学大学(現東洋大学)創設者の井上円了氏が
全国巡業で講演や揮毫などで集めた資金で公園を拡張していった
東京中野区の「哲学堂」を参考にして、

昭和8年、安達謙蔵氏によって横浜の「八聖殿」が建てられ、
のちに、昭和11年に、熊本の「三賢堂」が建設されています。

後者の2つの建物が、熊本出身の政治家、故安達謙蔵氏の
「精神修養の場」として開放的な施設として、建てられたものです。

横浜の「八聖殿」は、1階が別荘で、2階が講堂。
8聖人の像があります。圧巻。

当時は、全館空調だったそうです。
天井にグリルも見受けられました。



熊本の「三賢堂」は、熊本ゆかりの3賢人が祀られ、敷地内に
隠宅があります。

なぜ、ここまで訪ねたかと言いますと、
熊本出身で、横浜に拠点を持ち、という点に
私と同じ!と親近感を持ってしまった、ためです。

それから、なぜ、熊本の三賢堂が円形のデザインなのか
謎だったからです。非常に不思議でインパクトの強い建物。

建てた「選挙の神様」と言われた政治家の故安達謙蔵氏。



まさかとは、思いながら、図書館に自叙伝もありました!
昭和35年8月2日発行、新樹社

幼少期に、西南戦争時に巻き込まれないよう
熊本の場所を転々と移られる下りは、
知っている地名も登場し、
その当時の苦労は、想像しがたいものの、
大変だったことは、想像できました。

建物を立てようと思った経緯や
聖人や、賢人を選んだことなども詳しく書かれていました。

残念ながら、自伝には、円形にしたデザイン経緯は、記載なし。
学芸員さんもきっと、当然同じ資料を読み込まれているでしょうから、
それ以上の発見は、ありませんでした。

でも、こうして、建物を訪ねて、
そのモチーフや、思想、作られた経緯を探る「建物探検」旅も
なかなかに、良いなと思いました。

今までは、子育て、介護、様々なことから
机上以外の勉強、出かけていくということが
何年もおろそかになっていました。

今年は、少し、自分を解放すべく
積極的に出かけていこうと決め、少しづつ時間を作っては
様々なところに、プチ一人旅をしてきました。
(時に数人旅)

動きたくても、動けないモヤモヤとした気持ちからの
開放というのは、本当にスッキリします。
ありがたいことです。

自伝を読んだおかげで、建築の資金集めが
呼びかけによる寄付+自己資金という仕組みは、
今でいうクラウドファウンティングさながらですし、

熊本にも建てる予定だからと、横浜の際には
同郷には寄付を呼びかけなかったりなど、戦略も分かりました。

銅像製作の人選選びに至るまで、実にきめ細やかに、
建築プロデユーサーでもある安達謙蔵氏。

さすが、政治家。
人と人をつなげ、そして実行する手腕と心意気。

やはり、政治家は最終的には建築を作りたがるものですが
この方もその一人なのだなと。

ただし、税金をつぎ込む昨今の政治家とは違い
私財ですからね.なかなかできないことです。
(といってもお給料は税金からですから、
出処は、同じかもしれません)

今では、いずれの建物も自治体に寄付され、
公的な運営に委ねられており、地域還元という形をとっています。

ただ、その建築の活かし方が、
両者では違ったことに、少しだけ違和感を覚えました。

横浜の八聖殿は、横浜の海の歴史を伝える場所が必要と
市民からの要求からこの場所が選ばれています。
また、講堂を活かし、歴史の講和なども開催。

熊本では、特に、講義などが行われる様子もなく
窓の開け閉めもされていない様子。

こちらは、八聖殿の窓。スチールサッシが美しい。


後者の方が後に建てられたのに
手入れがされていないのか、古びた印象でした。

建築って、やはり使われてなんぼですよ!

八聖殿は、展示ケースで一部の窓がふさがれたりして、
展示の仕方は、決して上手いとは言えませんが、
放って置かれる施設よりは、断然良いです!

1階の展示は、洋館の中に和のテイスト。


使い方については、いろいろと考えさせられてしまいました。

ここで、すれ違うのは犬の散歩の方ばかりでしたが
周辺の公園緑地も、眺めも素敵な場所でした。

海風を防ぐ松林は、当初のままでしょうか。


高いところにあり、主要道路からは伺い知れません。
そんな不思議な場所も、政治家さんの別荘ならでは。
とは、こちらの学芸員さん。

道路の部分は、以前は海。こんもりとした山の中に八聖殿はあります

以前は、崖の下は海だった話など、横浜の海の変遷をレクチャー頂き、
その点は勉強になりました。ブラタモリ的で面白かった、感謝!

本当に知らないことだらけですね。
街の変遷と、移り変わる歴史的背景と、そこに佇む建築。

時空を超えた感動があるのも、
建築探訪の醍醐味と改めて、感じました。

自分時間を少しだけ取れて、
暮れに満たされた1日です。

余談:
先週末、義母が2度の手術を無事に終えて退院。
まだ、自宅養生と自宅リハビリが必要ですが
なんとか、日常生活が送れるように。。。

そんなこともあって、プチ旅がなかなか出来ませんでしたが
家人が在宅の際に実行。時々は、こうして息抜きも必要と
改めて思います。

皆様も、いろいろなことが起こった一年だったことでしょう。
どうぞ、年末年始、ご無理のありませんように。。。


これからの建築のあり方を問う02 〜万博や、再開発の日本の動向に疑問を持って〜

2022年12月21日 | まちづくり


東京年整備局のHPより

昨日は、東京神宮外苑の再開発についての
【緊急オンライン集会】
@衆議院会館みんなで考えよう!神宮外苑再開発問題
を視聴させてもらいました。

建築家の先輩から、
この再開発案には大きな問題があると
話を伺った時は、正直、当初はピンときませんでした。

都民ではない、蚊帳の外の私などが
関わることなのかどうか。。。一瞬のためらいもありました。

しかし、その中身を伺うと、唖然とすることばかり。

大きな物事が、市民(この場合、都民)抜きで
決められていく恐ろしさに、鳥肌が立ちました。

今現在は、様々な専門家が危惧を示し、懸念し
あってはならないことと、提言を繰り返しています。

その発起人は、なんと海外から日本に移住してきた方と
言うから、驚きです。
私自身も、署名活動には参加させてもらいました。

昨日の集会の中で語られた課題を整理してみます。

まず、大きな問題は、

1)実際に暮らす、生活する人々が置き去りにされていること

明治神宮の内苑に対しての外苑という歴史的な場所の再開発が
都民の意見を聞くこともなく、描かれていること。

この部分に関しては、
横浜市のIR誘致のパースを見たときの衝撃に似ています。

(IR誘致は白紙として、選挙をした当時の市長が、
当選した途端にパース提示した際、
すでに出来上がっていた案に、
騙されたと思った市民も多かったことです。
その後、市長のリコールが起きました。

ご存知の通り、次の選挙で、市長そのものが変わり、
現市長は、誘致を撤回しています。

パブリックコメントを求めたり、
環境アセスを検討したりというのは
実は、ほとんど形式的なもの。

反対意見を述べるチャンスや、疑問点を解決しようとする
動きはほとんどないものです。

そして、HPで「綺麗にまるで問題がないかのように」
回答が綴られています。

東京都都市整備局 神宮外苑の再開発についてのQ&A

問題となっている樹齢100年超の樹木伐採については
上手にかわしています。緑化率という%を使うことで。

私も、内部事情を知らなければ、
どこが問題なのか、気が付かなかったかもしれません。

次に、建築的な課題です。

2)持続可能な時代を推し進めなければならないことに、逆行する新築

建築の高層化、なんと190Mの高層ビルになります。
まだ、築40年のビルが、改修工事でのリニューアルで使うことよりも
容積率を上げ、高層ビルとし、賃料で工事費を生み出すという
現代版錬金術とも言える手法。

RC造の場合、新築床面積1m2作るのに、
なんとCO2が1.0t排出されるとの指摘も。


3)歴史的な文脈の分断、継承されない計画

この外苑の樹木が、大正時代に、寄付を募ったものであること。
全国の有志による植樹ボランティアの労働力による
志しの集った場所であったというのです。

私自身知らなかったことです。

この緑地を、樹齢100年を越す樹木も一部伐採してしまう
計画になっています。

4)樹木をモノ化して扱うことへの危惧。

ここの4列に及ぶ銀杏並木。
実に美しく、わたしも訪ねたことがあります。
再開発の計画では、当初一部伐採でした。
地域住民の反対により、
それを残る案に修正はされたものの、

ギリギリまで建物を建てた場合、
根の損傷、風通しの悪さ、日当たりの減少などにより
樹木へ多大な負担がかかるという警鐘を専門家がしています。

東京におられない方でも、
テレビドラマで度々登場する場所なので
多くの方が、目にされているはずです。

「神宮外苑、イチョウ並木」でググっていただけると、
あ〜この場所!っていうくらい画像が出てきます。

5)大事な話が、一部の企業や組織で進められていく

再開発を許可するのが東京都ということもあり
最初に、この開発を先輩建築家から教えてもらった際に、
見直しをするには、
議員さんに動いてもらうことはできないでしょうか?
 というお話を少ししました。当時、都議会に、後輩がいたからです。

ところが、今はなんと、政治家の方々が
超党派で動いておられるとのこと。
ある意味で心強く、そしてまた、その方たちは
クリーンなのかな???とも素人考えで思ったりして。

こんかいの集会では、議員の方からの発言もありました。
それによると、東京都の容積率緩和を伴う再開発は、
当初は難しいという判断だったのが
なぜか、急に許可されている。

その前には、これもなぜか、地権者でもない事業者が
再開発の協議に加わっていたという資料が出てきた
ということでした。(10年以上前)

この辺りを紐解いていくと、もしかしたら
東京オリンピックの際のような、
いろいろなお金の流れも出てくるのかもしれません。

6)都市の緑地は増やしても、減らしてはならない。

東京都のサーモカメラによる気温分布のデータとともに、
グリーンアイランド、グリーンスポット、グリーンゾーン、
の必要性、重要性も、専門家より提示があり、

高層ビルの壁による夜間の熱の放出が
ヒートアイランドの原因の一つであること。

など、様々なことが、専門家からリレー方式でお話がありました。

****

私自身、このブログでは、政治的な話は書かないと決めていたのですが
今回、あえて投稿するのは、

東京都の話、、、、ですが、
きっと日本全国、同じだからと思うからです。

再開発の名の下、、、
置き去りにされていく暮らしと環境と人々。

署名活動に、参加した都民の方の声を語った中には、
「気になっていたけれど、何をしていいのかわからなかった。
署名ができて嬉しい」というものがあったそうです。
声を上げるチャンスも、見当たらないのです。

そこで、わたしも得た情報を発信することにしました。

実際に、168本のイチョウを全て調べたという
イコモスの石川幹子氏がおっしゃるには、

まずは、この銀杏並木を国の「名勝」として指定し、
保護していくという提案でした。

そのためには、4列のうち、二列は都のものだが、二列は明治神宮のものだそうです。ですので、事業主体でもある明治神宮の合意がないと出来ない、ぜひその動きであった欲しいとのことでした。

初詣に、明治神宮に行かれる多くの方々が、
ぜひ、銀杏並木を生きた形で
残せるかどうかは、神社にかかっているということを知って、
お詣り頂けたら幸いです。

長くなりました。

このような機会を提示してくださった
先輩建築家に感謝するとともに、
まだまだ、学んでいかなくてはと思っています。
そして、何ができるのかも考えて行動します。
  
慶應義塾のサイトにコラムがありました。
このブログで関心を持ってくださった方は、
直接、読んでいただければと思います。

演説館、石川幹子氏

以下、今回お話を伺った皆さんのお名前をご紹介しておきます。

【プログラム】
◉13:30~開会挨拶と現況報告
司会・進行/迫田朋子(ビデオニュース・ドットコム キャスター/元NHK解説委員) 
船田はじめ議員(神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟 発起人代表)
西川直子(神宮外苑を守る有志ネット事務局)

◉13:50~ゲストスピーカー(リレー式に順不同)
◉石川幹子先生(日本イコモス理事・中央大学研究開発機構教授・東京大学名誉教授)
 /近代文化資産、危機に瀕するいちょう並木

◉大方潤一郎先生(都市計画 明治大学特任教授・東京大学名誉教授)
/再開発・都市計画の視点から
◉森山高至氏 (建築エコノミスト)/神宮外苑再開発の何が問題か(仮題)
◉三上岳彦先生(気候学・都市気候 東京都立大学名誉教授)/都市の樹木とヒートアイランド
◉ロッシェル・カップ氏(経営コンサルタント・オンライン署名発起人)/再開発と民主主義
◉糸長浩司先生(地球環境建築・日本建築学会脱炭素社会推進WG主査)/再開発・脱炭素の視点から
◉若山徹氏(新建築家技術者集団東京支部)/神宮外苑再開発と代替案

ビデオメッセージ
◉原科幸彦先生(環境アセスメント・環境計画政策 千葉商科大学学長)
◉藤井英二郎先生(環境植栽学 千葉大学名誉教授)

その他発言者
*「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」国会議員
*都議会議員*区議会議員
*環境保護団体
*有志ネットメンバー他市民の方々


これからの建築のあり方を問う 〜万博や、再開発の日本の動向に疑問を持って〜

2022年12月20日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

写真は、TECTURE MAGのサイトより
下記にリンクを貼っておきます。

昨日のブログで、ちらっと触れた万博に関連する
ニュースが入って来ました。それに補足する形で綴ります。

大阪で予定されている万博、
正確には、2025年日本国際博覧会
(略称「大阪・関西万博」)

テーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」

ここに来て、パビリオンの入札が不調だそうです。
資材高騰だけが理由ではなく、
各デザインへの施工者の技術的懸念が大。

東京オリンピックの際のザハ・ハディットのデザイン案なら
海外の建築家とやるのは、難しいと言い逃れもできたかもしれません。

しかし、今回は、日本人が提案しています。

建築家だけではなく、著名なアーティストや映画監督。
それらのデザイン性重視に待ったがかかったようです。

日経新聞より

一方で、2030年の万博案の一つがこちら。
ザハ・ハディド・アーキテクツの案です。
(ザハは亡くなっていますが、事務所は存命)

TECTURE MAGのサイト

少しだけ万博の背景を、
大阪の次の2030年開催の候補地ですが、
韓国、ロシア、イタリア、ウクライナ、
サウジアラビアの5か国が競っていました。
ロシアは今春取り下げています。

最終的には、博覧会国際事務局総会で3回から4回の
プレゼンテーションを通じて誘致を競い合い、
2023年6月に会員国による投票で
開催国が決まる予定だそうです。

その中の、ウクライナのオデッサを会場とした案が
ザハの案です。

これだけの曲線のデザインですが、
近未来的なデザインは、ザハらしいといえば、
そうなのですが
明らかに、当初のザハとは、違っています。

私の知る初期のザハは、それはもう重力に逆らう、
これでもかといった尖ったデザインでした。

事務所が大きくなるにつれ、歳を重ねるにつれ
丸みを帯びましたね。

ザハ亡き後でも、時代の先端を走るというDNAは
事務所にしっかりと引き継がれています。

この万博案は、すべてのパーツを再利用できるよう
モジュール設計になっているようです。

効率性、斬新さ、リサイクルの観点、からも
先端を行く理念です。

実現には、相当緻密な作業が伴うとは想像できます。
設計も、施工も。

もし、オデッサが、選ばれたら、
きっと私はウクライナに行くでしょう、笑。

この空間と環境を味わってみたいものです。
CGとは違ってヒューマンスケールで
実際のところ、どうなのかを確かめてみたいですね。

比較してはいけないのを百も承知で、
書きますと、

日本の各パビリオンの担当者の
我の強いデザインに比べて
さすが欧州でしょか、統一感があります。

日本人は「和する」のは好きですが、
こう言った他国との関係性や、全体のバランスセンスは
統一感のない町並みを見てもわかるように、
経済事情なども含めて、好き勝手する方向にありますね。

デザインルールがありません。建築家がしっかりしていれば、
デザインコードなども決められるのでしょうけれど。。。
なかなか、難しようですね。

まぁ、もともと、パビリオンは
いろいろなものが集まる面白さがありますから。
私も、そういう点では好きでした。

ただ、ザハの案を見たとき、
時代は転換期を迎えていると強く感じました。

今、求められている持続可能な社会を見据えつつ、
技術的案もの、マテリアル的なもの、それぞれに
解決さ案を提示する形になるのではないでしょうか。

高さを競う建築から、横への広がりへ
これからの建築は、
自然環境との真の意味での共生を成し遂げたいものです。

この案にそれを期待するのは、私だけではないことでしょう。

さらに、本日は、東京外苑の再開発についての
【緊急オンライン集会】@衆議院会館みんなで考えよう!
「神宮外苑再開発問題」を視聴させてもらったため、
より建築の将来性に関して、気持ちが
熱くなっているのかもしれません。

非常に思うことありました。先輩の建築家からの紹介で
すが、都民ではないけれども、非常に注目していますし、
署名活動には参加させてもらいました。

このレポートも後ほどまとめます。
本日は、ここまで。


ワールドカップ2022にみるカタールのスタジアム最新建築

2022年12月19日 | 模型・実験・見学・講習・イベント
ワールドカップが終わりましたね。

関係者の皆さん、選手の方々、
そしてサポーターの方
お疲れ様でした!

すべての試合を観戦した訳ではありませんが、

テレビ中継で映し出される選手の活躍、
各国の子どもから大人までの
応援席の喜怒哀楽の表情を見ていると、

人間って、どの国でも同じなんだなぁと
しみじみ感じました。

世界の人々の一体感を感じたのは、
私だけではなかったはずです。

もちろん、参加できていない国の方が多いのですけれど。

見所は、もちろんスポーツそのものなのですが、
興味があるのは、スタジアム建築ですね。

試合中は、一部しか写りませんから、
もう少し、観たいなぁ、、、と思っていたら

FIFAの公式ページに、スタジアムの紹介コーナーがありました。
試合が終了してから、ご紹介するのも、なんなのですが

興味のある方は、ページがあるうちに
ぜひご覧ください。


スタジアムの中でも、私が注目したのは、
日本がベスト8入りを懸けてクロアチアと戦った試合会場の
『アル・ジャヌーブ・スタジアム』です。

亡き女性建築家のザハ・ハディド氏が設計を手掛けた建築。
日本では東京五輪の誘致の際に採用されて、
実現出来なかったザハ案のスタジアム。

案は違えども、日本ではできず、
カタールでは建設可能なんだなぁ、、、と
複雑な心境でもありました。

デザインが美しいだけではなく、
設備も画期的です。
屋根の開閉システムも動画を見る限り見事。

先のFIFA+のページには、

「スタジアムのデザインは伝統的なダウ船の帆をイメージしており、
アル・ワクラの船乗りの歴史に困難を表しています。」とあります。

(翻訳ソフトの間違いで、「歴史の困難」だと思います)

日経アーキテクチュアの記事によれば、
「太陽光を動力として稼働する最先端の冷却システムを搭載。
ピッチ脇と観客席の足元に通気口を設け、
地上付近にたまりやすい冷気を施設内で循環させる。
開閉式の屋根と冷却システムによって、
夏場でも施設内の温度を18~24℃に保てるという。」

だそうです。現地で見てみたかったですけどね〜。
『アル・ジャヌーブ・スタジアム』

そのほかにも、再利用できるコンテナを組み立てて
作ったスタジアムや、かつてカタールや湾岸地域で遊牧民が使っていたテント
「bayt al sha ar」に由来した『アル・バイト・スタジアム』など。

そして、メインスタジアムとも言える
『ルシル・スタジアム』

光と影、伝統的なモチーフなど
用いてデザインされています。

こんなにも、実験的で、美しく、差し先端の技術で
いくつものスタジアムを建ててしまうカタール恐るべしです。

近代的な建築が軒並み立っている開催国カタール。
イギリスの保護領という歴史からでしょうか。
イギリスの建築家も多く手がけています。

独立してからの年齢は、私よりも若い国。
石油マネーで、裕福な国のイメージが強いですね。

国民は、大学まで無償で通えるとか、
手厚い国の支援がある国、というと、羨ましい!?

実際には、人口の1割ほどしか国民がいない。
残りの約9割は、外国から移住してきた労働者。

NHKのニュースでは、建設現場で働く
海外からの労働者が賃金未払いで、
強制的に帰国させられることが問題になっていると
報道していました。

建築のデザインの光と影が、
国の光と影をも象徴しているとは!!

どれだけの人が気がついたでしょうか。。。

世界を沸かしたスポーツのお祭りも
それぞれの国の光と影があることでしょう。

先の日本で実現しなかったザハのスタジアムは、
デザインは、近未来的で美しい曲線の案でした。

建設できなかったのは、
スケールアウトだったことと、
予算がかかり過ぎることが大きな理由でした。

日本が、建築の技術的なチャレンンジをしなかった
ことには失望したものですが、

他国の労働力で、無理をさせて建築を
造らせる国でなかったことには、安堵したいと思います。
(そうあって欲しいと、希望も込めて)

これから日本での大掛かりな建設といえば
大阪で開催される万博ですね。

そのままIR会場になったりして!?
と思うくらい、費用を掛けてやりますね。

その国の建築のあり方は、
その国の政治経済、そのものの象徴でもあるので

専門的な方以外でも、建築の動向には、
これを機に、注目してもらいたいと思います。

そして、本当にその建築が必要で
環境に沿ったものであるのかも含めて、
考え、意見をもってもらえれば。

私も考え続けます。

アスリートの活躍にみる粘りの力のように
決して、希望も捨てないで、
行動したいですね!

暮れに大きな勇気と
課題をもらった一年のしめくくりです。