せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

再築大賞」被災地部門に応募中です。 投票をお願いします!

2018年11月30日 | A06設計監理_熊本県M邸古民家再生



熊本復興で関わらせていただいた伝統家屋の修復が無事に終わり
現在、仮設住宅から引っ越され、無事にお住まいです。

出会いから、ヒアリング、調査、工事と実に約2年間かかりました。

今回、依頼主さまの御許可をいただき、
「再築大賞」(被災地部門)に応募致しました。

復興の激務の中、丁寧に修復して下さった工務店さん、
各職方の頑張りの賜物です。

応募は、共同設計者の福岡の方との連名になっています。
(web上は記名はありません)

2次審査にいけるかは、投票の数となっております。
リンク先のページの一番下に「投票」ボタンがあります。

図々しいお願いではありますが、
ブログを覗いてくださった方には、
ぜひ、一票をお願い致します!

12/14が締め切りです。
拡散いただけたら、幸いです。

「蘇る先代からの住まい」
http://www.saichiku.com/7144/

ご覧になっての感想などもありましたら
嬉しいです。
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次の世代の資産として建築とまちづくりを考える

2018年11月26日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

↑道路の拡張に伴い、軒先を切られた建物を保存活用した形跡が残る街並み


ヘリテージマネージャーの講習会で、
先週、福岡県八女福島で、重要伝統的建造物群保存地区のあり方を学びました。

城下町の町割りに沿って、建築が残っているのが、まちの特徴である
重要伝統的建造物群保存地区、略して「重伝建」


↑城下町だったために、枡形だった道路。その跡が残る角の建物

せっかくの学びを自分自身が忘れないためにも、
そして、皆さんとも共有したく、ブログに綴ります。

熊本復興にも関わってくださっている
八女市の設計事務所のNさんに、

地域一丸となって、八女福島の歴史的建物の保存活動に
取り組んで来られた経緯を伺いました。

最初は、一人二人が捨て石になって(私財をつぎ込んで)
建物を改修はじめた後に、NPO法人などの組織化、
行政の施策、、、補助金の活用など、

活動を広げていったことを、順を追って説明くださいました。
いろいろな苦労や、大変な思いもあったことでしょう。

淡々と、説明されますが、まちの人を、行政を巻き込んで活動、
やはり並々ならぬエネルギーを感じます。

講習を受けた方からの質問
「資金源も大変なのでは?」

補助金があったとしても、その関わりへの時間は相当なもの。
N氏の答えは
「自分の代では、投資した資金も回収できないかもしれない。
だから、次世代に引き継ぐための手続きもしている」とのこと。

それは、つまり、今の自分のエネルギーと財力を、
次の代のために、まちの建築の維持に注いでいるということ。

歴史的な街並みの継続は、
そういった人の社会全体の利益を見据えた
利己ではない、他利への熱い思いが、原動力なのかもしれない。

建築が好き、故郷が大事、の思いを超えた、
その時代の先を見据えた環境への想い。

これまでの建築の文化も、これからの建築の文化も
そんな人々の熱い想いに支えられてきたのだろうと
想像を馳せました。

伝統的な構法で住まいづくりに取り組む、知り合いの大工さんも
自分の仕事は、200年先を見ていると、おっしゃっていたのを思い出しました。

伝統的な建築を通じて感じるのは、

建築の仕事は、創るだけではなく、
建物の生命を引き継ぐことも、大きな仕事なのだなと、

歴史的な建築の造りや、工夫、
地域の特徴といった、建築の物質的なものだけではない
建築の大義を学んだ気が致します。

人がいてこその建築、そして、建築あってこそのまち。
当たり前のことが、じんわりと心にしみた講習でした。

観光的な町並み散策では得られない
大きな学びに感謝致します。

それでは、具体的な物質的な部分のレポートです。

2階が単独の窓だと倉庫だった証で、商人型の町家。
蔵が離れてあるのではなく、住まいと一緒になっている土蔵のような「居蔵造り」
防火の備えも兼ねています。


2階の窓が連想窓だと、職人さんの住居だった証で、職人型町家だそう。


お隣と一枚の壁を共同で使っている「もやい壁」が残っている貴重な場所


修復のディテールでは、石場建ての周りに、軒が切られたことにより
より雨仕舞いをよくするために、道側は地覆木が用いられたり


蔀戸の跡が残っていたりします。


八女といえば、お茶が有名です。
お茶の選定をした場所は、自然光の間接照明。

その建築的仕掛けが、なんとも格好が良いのです。




他にも、ポイントはたくさんありましたが、この辺で。

私自身、熊本から近いものの、八女を訪れたのは初めて。
たくさんの感動がありました。

いろいろとありすぎて!?
見きれないくらいでした。

ぜひ、また訪ねたいですね。
今度は家族や、興味のある友人知人と来ようかな。
解説できるくらいに、詳しくなって、かしらね、笑。
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内装木質化の木材選定に山へ行く

2018年11月19日 | A07設計_熊本県P店舗


雨が降ると、、、
お休みになる職業とは?

自然と共にあるお仕事といえば、、、

林業ですね。 (上記写真は雨の中の山の様子)

お休みと言っても、雨の日には道具のお手入れや
木材の整理、経理や様々なお仕事も、もちろんあります。

伐採は、雪の方が、まだ作業がしやすいとおっしゃいます。
雨の日はとにかく滑って危険だそうです。

先週はじめの雨の日に、
店舗を木質化される依頼者の方を
お店の定休日に合わせて

林業の方に、山で木材を見せてもらう約束をしていたところ、
ちょうど雨の日と重なりました。

もちろん、山への道中が雨では滑りやすく
依頼主の方には、ちょっと足元への注意で
ご不便をおかけしました。

繁忙期にあられる林業家に、細かく対応してもらえたのも
雨の日ならではと思うと、

むしろ好都合だったのかもしれないと
天の計らいを感じました。

雨の中、来てくださった使い手と、
お休みで、なさりたいこともあられたでしょうに、
お時間を割いて下さった山の担い手と

こうして結びついていただくことに、
私自身は、大感動!しておりました。



山の川上と川下が繋がった瞬間ですものね。

雨の日だろうが、寒かろうが、そんなことは気になりません。

「これにします。」と、選んでいただいた
奥様のにっこり笑顔に、私も、うっとりしました。

↓積んだ状態で、まずは選定


↓立ててみて実際の感じをつかんで、OKをいただく


まだ、まだ、一歩一歩ですが、
日本の木のファンが広がって、
どんどん活用されていきますように!

次は、、、うまく、施工できるよう
大工さん(作り手)との結びつきを続けます。

進捗は、また報告します。お楽しみに!
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 伝統構法に学ぶ週末、想うこといろいろ

2018年11月12日 | 模型・実験・見学・講習・イベント


↑土壁を落とした軸組、屋根付きの倉庫の中で、修復中。

先週、立冬を迎え、紅葉も見頃な熊本です。
皆さまの地域では、いかがでしょうか。

先週末、熊本県建築士会のヘリテージマネージャーの研修会に、
やっと参加できました。(まだ、2回目)

今月は、今週末も含め、建築を見るフィールドワークの講義です。
紅葉狩りならぬ文化財狩り!?でしょうか。

県下で修復が進む木造の文化財の現場にて、
その様子を拝見するとともに
立ち入れる部分を一部、実測してみるというものでした。
( 所有者の方への配慮で、場所や詳細は伏せます)

講義担当は、歴史的建物が専門の大学の先生です。
実際の現場案内は、設計監理の方。

↓どの瓦が一番古いか?の質問。わかりますか?
時代が古いほうが簡素かな?と思いつつ見ていたら、、、



左側が一番古く、右が一番新しいそうです。

木組みフェチとしては、たまらない解体部材保管庫。
先人たちは凄い!としか、言いようがありません。じっくり見れなかったのは心残り。





伝統的な建物や文化財の修復は、毎度ながら、
考えさせられることが多いので
私なりのいつも想うところのポイントについて、綴ります。

1) 耐震補強はするの?、しないの?、どうやるの?

以前熊本で見学した補助金利用の復興のお住まいは、
担当者に質問したら、「しない」との回答でした。

理由は、大きな地震で倒れなかったことと、傾きが少ない事、
予算がないこと、を理由に挙げられました。

今回は、国の指定文化財となっており、
さずがに耐震補強をしないわけにはいきません。

JIAの再生部会の勉強会で、
文化庁は、「耐震補強をしないと認めない」課題があると伺い、
今回の担当の方にも尋ねると、、、、

「する」そうです。そして、なんと、合板も使うとか。

基礎は、コンクリートで打ち直し、
その上に、地覆石にも穴を開けて、ボルトを貫通し、
基礎と緊結するそうです。



石場建てのままでは、現行法に乗っ取らないからですね。

しかしながら、そのやり方では
縦揺れの揺れを逃がしてくれる石場建ての
伝統構法の特性も失うことに。。。

別の場所で知り合った、新築で伝統構法を施工する大工さんに
ボルトに遊びを設けるなどしないと、
動いた時に木部に負担がかかり過ぎると、伺ったばかり。

これから、100年以上はもたせて欲しい文化財。
大きな地震をまた受ける事になるはず。

その時に、ボッキンと行かないように上手に力のバランスを
考慮した補強をしていただけるようお願いするしかありません。

制振ダンパーとか、用いないのかしら?
いろいろと議論したい点はあるものの、時間切れに。

お話を伺いながら、何をどこまで、行うのか、、、、
設計監理者としての苦悩も共有しました。

2) 官民での予算格差!?文化財に登録するメリットとは?

修復の事業費用を伺って、一瞬、目が飛び出そうに!

庭園や石垣、蔵、長屋門など、いくつか建物もあります。
広さからすると、相当な予算がかかることは想像がつくのですが、

地震被害に遭われた時に、持ち主が途方にくれたお話を伺っていただけに
いつ、その予算がついたのか、自己負担は大丈夫なのか、
そのお話も、次回は伺おうと思います。

結局、残そうという想いだけでは、残らない建築。

復興基金や補助金をどう活用できたのかも、
今度リサーチしなければ、と思うのでした。

JIAの再生部会のメンバーから、相続税の免除があるので、
有形登録文化財を相続前に行ったという報告も聞きました。

住まい手や持ち主に、メリットになり、
更に地域や国の文化を残すことができたら、
皆がハッピーですものね。

3)伝統的建物修復の担い手は人材不足?

ご担当の方の会社は東京とのことでした。

熊本には、人材がいなかったのでしょうか。。。。
それとも、引き受けられるだけの余力がなかったのでしょうか。。。。

瓦の製作はかろうじて地元で。
襖や板戸は、、、京都まで持って行かれているそうです。

城下町としての熊本は、かつて全ての職人さんがいました。

しかし、伝統的な建築を新築する機会はほとんどなく、、、
技、手仕事、そういったものが切り捨てられて行ったのだなと
これは、悲しく思うことではなく
仕方ないと思うことしかないのか、複雑な心境になりました。

トータル7年間のプロジェクトに、
実に遠方から、ご家族で
熊本に引っ越してきて下さっているそうです。

ありがたいと思うと同時に、
私たちも対応できるように知識アップとスキルアップが必要と
ますます、ちゃんと学ぼうと思うのでした。

余談ですが、

横浜で出会ったPTA のお母さんが、
夫の仕事で数年前に熊本から戻ってきたという
お話の中で、子どもは熊本の給食が美味しくて喜んでいた
という話を伺っていたので、
お子さんも、そうだといいなぁ、と帰路では想いを馳せました。

最後に、

伝統的なものに関わると、
昔と今の日本の経済事情や文化、
いろいろ考えさせられることが多いです。

学生時代は、古いものの調査なんて、何が面白いんだろう?

と疑問に思っっていたことが、

今、歳を重ねると違う視点で観れ

建築の学びは、その歳にも、よるのかもしれないと、思っています。
目覚めが遅かったというだけかもしれません、笑。

これからの私の課題、
どのような形で、伝統的な木の建築に関わっていけるか、
関わっていくか、、、

法律優先なのか?
伝統的建物の構造特性優先なのか?
予算優先なのか?

この折り合いが、伝統的建物修復の一番の肝と考えています。

これからも、大学の研究者、専門家、そして学ぶ仲間とともに
常に、学びを繰り返しながら、その落とし所を見つけられるような
設計者になりたいですね。

ちょっとオタクなネタにお付き合い頂きまして、
感謝いたします。
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杉の外壁も仕上がってきて、出来るところは住み手、自ら参加して

2018年11月07日 | くまもと型復興住宅02



月曜更新予定のブログが水曜日に持ち越しました。(ごめんなさい)
読者の皆様には、アクセス下さりありがとうございます。

現場に、相談会にと出かけていおり、
PCにじっくりと向かう時間が遅くなりました。

くまもと型復興住宅も、いよいよ仕上げ工事に入ってきました。
杉板張りの外壁も、塗装が施され、印象が一変しました。

塗装前の様子はこちら、HPにアップしています。
http://www.mk-ds.jp/newworks/2018/10/201810-02.html

ご近所から、「この色にしたとね?」と珍しがられるほど
個性的な色です。

工務店さんには、何色か見本を作ってもらい、

日光に当てたり、

日陰で見てみたり、

雨の日の色の濡れ具合など、

設計段階から様ざまなシチュエーションで検討してきました。

今回採用する色は、最終的にこの3色に絞られました。
部分によって塗り分け予定です。

家族での意見交換も何回も。。。。
そして、とうとう外壁が塗られた感じは、木目が残るグレーです。

木は経年変化で、亜麻色になります。
そしてやがて、銀鼠色になってきます。

グレーとは、最初からその経年変化を経たような色。
なかなかに、シックです。

良い色をお選びになったと思います。

そして、先週末には、軒天の杉板をご家族で塗られました。

塗装前の様子




塗装後の様子




杉の木目が綺麗な軒天は、クリア塗装。
より艶が出ました。

「首が痛くなった〜」と笑って、おっしゃっる建主さま。
大変さの中にも、どこか嬉しそうで、こちらもほっとします。

減額する意味もありますが、
できるところは自分たちで参加して
という心意気が嬉しいです。

愛着もひとしおかと存じます。

次は、内部の漆喰塗りに挑戦予定。
楽しみですね!

ここまで、安全かつ順調に施工くださっている大工さんはじめ
設備担当やメーカーの担当の方
皆様に、感謝致します。
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