せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

人吉球磨地方のお宝建築が凄かった!

2018年09月25日 | 模型・実験・見学・講習・イベント




先週から、熊本に戻っています。

早速、現場監理に伺ったところ、
おかげさまで、現場も順調に進んでおりました。



棟札も、納まり、制振ダンパーも設置されました。



↓左の金属が一般の金物、右が制振ダンパー


大工さんはじめ、工務店さんには感謝です。
工事の進捗は、こちらにアップしました。

http://www.mk-ds.jp/newworks/2018/09/20189-02.html

先週に続き、三連休、皆様いかがお過ごしだったでしょうか。
私はというと、研修が続く秋です。

週末、泊りがけで、熊本県建築士会の主催する
ヘリテージマネージャー(=歴史文化遺産保全活用推進員)、
人吉大会に参加して来ました。



神社の階段の段数は7段、初七日を表すとか、7という数字は、彼岸花の花弁の数、
7の倍数が供養の日、四十九日など。豆知識も教えていただく。



球磨地方といえば、
五木村の葉枯らし木材でお世話になっています。

人吉はというと、水戸岡デザイン車両に乗るべく、
くま鉄を利用したことはありましたが、
じっくりと建築巡りを出来ていませんでした。

今回、人吉支部の方が、「相良三十三観音巡り」一斉開帳に合わせて
バスツアーを企画くださり、

茅葺き屋根の神社を巡らせていただくと同時に、
国宝でありつつ、地域で維持されてきたお宝である観音像を
拝ませていただきました。



茅葺き屋根の神社は、高いもので、
最高12Mとビル3~4階立てに相当します。

長いもので700年以上前の建立。
構造材は、スギ。



分厚い、茅葺きの屋根に守られた木製の観音像。

建築も、お宝も、
そして、地域の方の開帳時のお接待も見事でした。



右の像は、右足が浮いているポーズ


左の像は、左足膝が曲がっているポーズ


躍動感のある木彫りであることが、解説されてよくわ分かりました。

研修では
人吉市の歴史文化課からは、日本遺産(ジャパン ヘリテージ)の取り組み
のお話を伺い、地域の有志によるまちづくりの活動の発表などもあり、

建築と、ひとと、まちがつながる様子、
活動の展開と、課題が浮き彫りにされ

我々建築士の役割と方向性については、
焼酎を酌み交わしながら、話ました。

酒蔵で伺った話から
焼酎文化が、蔵元の多さと種類の多さは、実は
相良700年の当地で、隠れ里として育まれた地域の
賜物であったことが、よく理解できました。


麹を発酵させる場所は、湿気に強い栗の木の天井に断熱材は籾殻だそう。


木製建具も再び栗の木で新設。

駅舎関連の木造建築をレストランに改築した場所での
ランチは、借景が汽車の走行でした。



人参のムースと鹿のゼラチンが絶品のシェフの前菜。
鹿のツノに見立てた葉の演出がにくい。



知識と交流で、脳が満足、
地域のご馳走とお酒で舌と喉が潤い、身体が満足
温泉で疲労回復し、
緑豊かな田園の景色と、球磨川の清涼に触れ
癒されたことで、心のゆとりうまれた研修でした。

プログラム以外にも、駅前の散策で歴史的街並みや
西南戦争の爪痕などを見てまわり、建築と歴史、文化が
切り離せないことを、じっくりと味わいました。


武家屋敷のとこの棚は、打ち首の血が滴ってくるため、テーパーが付いていたの解説。
矢印部分

「世界遺産」に対抗して、「世間遺産」(造語)の現存する木造公衆浴場。
こちらの利用は、次回来た時ですね。



日本遺産」として、地域おこしを頑張っている
人吉球磨地方を応援したい気持ちが増したと同時に

ふるさと熊本に
このような素晴らしい場所が多く残っていることを
誇りに思う旅でした。

行きのSLでは、お向かいの席に
素敵なご夫婦が同乗されていました。

東京から再度人吉を訪ねてくださったそうです。
ありがたいですね。

SLも帰りに乗車した「かわせみやませみ号」も満席
乗り物の効果も絶大だと感じた次第です。



今回、主催、ご準備くださった建築士や
関係者の皆様には感謝です。

私も日本の建築文化を引き継ぐことに一役買えるよう
学びつつ、実践して参ります。

来年は、阿蘇地方で開催しよう!ということになりました。
また、お仲間に入れていただけたら幸いです。

ブログを最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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建築家地域評議会アジア[ACA18]とJIA建築家大会2018東京に参加して

2018年09月20日 | ものづくり

↑大会テーマ

先週の東京には、アジアの建築関係者が集いました。

日本建築家協会の全国大会(今年は東京)と、
アルカジア(建築家地域評議会アジア)の大会と合同開催。

世界で活躍する面々が、キースピーカーとして登壇し、
各テーマについてのシンポジウムが開催されました。

https://aca18tokyo.com/

熊本と横浜との往復の生活を始めて、
なかなかタイミングが合わず、これまで数年参加できていませんでした。

今年は、アジアの方々が日本に来てくださるとのことで
私も、日本にいながら、参加しないのでは、
勿体なさすぎると、頑張って(!?)、3日間通いました。

そう、平日昼間イベント参加や、勉強するということは、
設計業務が滞るので、仕事が夜になります。

さらに、早朝から夕方までのプログラムに参加するには、
家事を早朝と夜間にこなさなくてはならず、睡眠が削られます。

電車移動も満員電車時間。まぁ、体力がいりました、笑。
それでも、得るものは多く、無理を押して参加できて良かったと思います。

残念ながら、夜のホテルでのレセプションや懇親会は見送りました。
(とっても、楽しそうでした)

アジア各国の方も、日本の方も皆さんのプレゼンは、英語。
英語を話せるようにして、
懇親会の参加もできるスケジューリングをして、次回ですね。

シンポジウムの中身はというと、

欧米の登壇者からは、
現在、グーグルの本社も手がけている欧米で活躍する建築家の
15m2のミニマム木造仮設住まいから、ドバイの近未来計画、
火星の計画など、大きなスケールの話。
会場はそのムービーに釘づけでした。

↓産業廃棄物として問題になっているコンテナ再利用のアパートメント

ヨーロッパ諸国の課題も知りました。

建築の技術では追いつかず、造船技術を用いて完成させた
ドイツの、20年経ってできた駅舎建築など

アジアからは、

災害復興や貧困層の生活支援としての建築のものづくりで
活躍するパキスタンの女性建築家からは、
「建築家は、1%の富裕層を相手にするだけではいけない、
99%の人々の生活支援を建築ですべき」の提言。先の発表の真逆のよう。

↓女性の自室支援の拠点となる建築


これまでの、彼女の具体的な事例が説明されると、
会場からは拍手が起こりました。

↓洪水を配慮して,2階が入り口になっている地域の木と土でできたミニマムな住まい
基礎の石灰はコンクリートのように強くなり、コンクリートよりエコであることを知りました。


水墨画を得意とする建築家の、
自然と融合した公園や住まいのものづくりも
アジアの気候風土を生かしており、興味深く拝聴しました。

日本からは、4 ワールドトレードセンターを手がけた
槇文彦氏が90歳という高齢を押しての登壇。

これまでの建築人生を称えるような
満場の拍手が送られました。

↓スカイツリーの構造家より、地震に対する免震効果は、
五重塔の心柱が構造設計のヒントになった話。


他にも、2020年オリンピックエンブレムデザイナーの野老さん
(実は彼も建築を学んできた方)と
フランスでも活躍する日本の若手建築家の対談など、
盛りだくさんでした。

↓東京2020 NIPPON フェスティバルのデザインが、東京五輪のエンブレムから派生したデザインであることの説明を木パズルで説明。


数学者の計算では、何百万通りにもデザインできることになっていると説明。
大会テーマの、素と多相のデザインの話となり、大変ユニークで日本的でした。

それぞれから、感心したこと、考えさせられたことに加えて、
自分のものづくりを振り返りながら
自分の立ち位置を確認すること、
これからの自分の建築への取り組みの方向性を考えることで
頭がフル回転でした。

まさに、脳は汗をかいていたことでしょう。

多岐に渡る建築の世界を再確認しながら、
建築は社会を創り、文化を創ることを改めて噛み締めながら

カタチやデザインの斬新さだけではなく
プログラムの側面の素晴らしさも含め
人々の生活に寄り添っていくのが、やはり建築ではないか

との想いを強くしました。

アジア各地で起こる地震と洪水、ハリケーン
災害に対してどう向き合っていくのか、、、
そういったことが、すべての講演や発表の根底にありました。

災害にしっかりと向き合って、心はおおらかに、
アジアで活躍する建築家たちを知り、

日本でも、今年は台風被害、洪水、地震に、土砂災害と
まさに、めまぐるしく災害が起きている中での開催だったので
余計に身につまされ、自分も精一杯頑張っていこうと誓いました。

3日間、多くの方々の発表により
いろいろなアイデアが湧きました。
社会の今後の課題も見えてきました。

今回は、参加傍聴が精一杯でした。
分科会などで活躍する諸先輩方を拝見し、
いつかは私も話す側に回れるよう、日々精進をしていこうと思うのでした。

開催の御挙力をいただいた方、スタッフの方々
そして遠方日本に来てくださった方々、
建築家の皆さんには、感謝申し上げます。

最後に、
ブログ更新が月曜日を越しての投稿となってしまいました。
月曜にサイト更新チェックくださった方には、本当にごめんなさい。

また、良かったら訪ねてくださいね。





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里山で自然排水の作り方を学ぶ〜土砂災害を予防するには

2018年09月10日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト

↑千葉の棚田の様子


日曜日には、民家の学校で、スタッフである私たちも
貴重な体験をさせてもらう。

水はけの悪い土地の雨水をどう、
大地に浸透させるのか、
川へ流すのか、

千葉県にある里山再生を目指しているご夫婦の元に
電車、バス、車を乗り継いで、集まって学んだ。

1)まず、竹やぶを刈り、植林のスギやヒノキを伐り、
山の地面に光を入れる。



2)実生の広葉樹を植える。日当たり、土壌などを見極めて。

3)尾根の周囲を伐採すると、枯れた沢の水みちが見えて来る。



(ここは、大雨の時に一気にあふれる恐れがあるので、
周辺を伐採するのは、私は正解だと思う)

4)コンクリートやアスファルトで覆われた道の排水は流れず、
ヘドロとなって土が腐っている。

まずは、それを取り除き、溝を作り、
炭を入れる(伐採した木を燃やしたもの)



5)その上に、朽ちた木々(これも伐採して放置しておいたもの)
を敷き詰めて、バクテリアが生きやすいようにする。



6)最後に枯葉をかけて終わり。



ふかふかの土が、水の流れを作り、
地面内で川へと流れていく。

実際に、これを行った場所は、
大雨後も水たまりができにくくなったそう。


↑道路沿いに完成した様子

昨年も、同じ時期に訪れた民家再生協会の仲間は、
確実な変化を目の当たりにして、感激していた。

私も、そのコツコツと作業をなさり、
水、空気、光の環境改善に取り組まれているご様子に、

大地の呼吸を取り戻してくれている!!

と感極まる。

里山を守ってくださる方あってこその、私たちの命の源。
水と空気が育まれる。

多様な生き物が棲む森が、
彼らの糞が、
土壌のろ過装置となってくれるのだ。
水がきちんとろ過されて飲み水になり、田畑に行き渡り、
食物も育ててくれる。

土砂災害が頻繁に起きる日本の山。

そこには、根が張らない植林の下の、
手入れがされずに腐った土がある。雨の浸透もしずらい。

実生(種から育った)ではないため、根が張らず、
大地をしっかりと固定できていない現状がある。

地震の起きた北海道の胆振地区の大規模な山崩れも、
報道写真では、スギのモヤシ林
(手入がされず、幹が細い、表面は緑の山でも、中は真っ暗な山)
にとても似ている。

北海道といえば、人工林はカラマツのはず。
ということで、林業試験場の
「森林土壌情報データベース-北海道・民有林」を見てみた。

興味のある方は、下記にアクセスしてみて下さい。

http://www.fri.hro.or.jp/idafos/map/jpn/mapframe.htm

やはり、被害の大きかった厚真町には、カラマツの人工林がある。
隣接する穂別町には、トドマツ人工林もある。
早来町にも。

人工林は、林道とセットと考えると、、、
その林道が、先に書いた状態だと
周辺の土はヘドロ状態となり、、、、

根が張っていない植林が地滑りを起こしやすくなっている
ということが、想像できる。

2012年の熊本阿蘇地方での土砂災害から
毎度、各地の土砂災害報道を拝見して、
多くが、地質のせいにされている。
火山灰だからしょうがないというような。。。

でも、それだけではない、確信が、
山に入ってきて実感としてある。

被害地を歩いてみて、植林の根を見て、
土を見て、雑木のたくましさを見て。

今回訪ねた場所には、竹やぶの手入れから見えてきた沢と思われる場所に
祠があった。岩のような石を神に見立てているようだ。

他にも、いくつかあり。



この石が土砂災害を防いでくれていると崇めて置かれたのか、

土砂災害の起きやすい場所には、
祠をおいたらしいという説通りなのかもしれない。
そんなことを思いながら拝ませていただく。

私が建築に日本の木を使うことへのこだわりがあるのは、

海外の違法伐採や森林の消滅を避けたい気持ちとともに、
やはりこれ以上、土砂災害を起こしたくない想いが強いからだ。

価格競争という名の元で、負けてきた国産材。
(このカラクリは、実はおかしいのだけれど)

カラマツは、暴れやすく建材に不向きとされ、
電柱や、杭としての用材だったのが、
現代では出番がなくなり、、、

スギ、ヒノキの人工林でさえ、放って置かれたのだから
北海道のカラマツ人工林は、
手入れがされてこなかったことが容易に想像出来る。

実際に、研究者の論文にもそのようなことが書かれており、
背景を知ると辛くなる。

長野のカラマツは、構造材としてお世話なってきたけれど、
北海道は、まだ広葉樹しか採用したことがなかった。

熊本生まれの私にとっては、旅行先でしかなかった場所の北海道が、
同じ震度7の体験、そして人工林の問題の噴出に、
同じ日本なのだと、改めて思いながら、

地震国だからこそ、台風が上陸する列島だからこそ
やはり、踏ん張って、日本の木を適正に使っていきたい。

旧暦8月1日の新月の夜に、誓うのでした。

(新月の宣言、願いは叶いやすいこともあり)

最後まで読んでくださった方には
私の、にわか勉強と想いにおつきあいいただき、感謝です。
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棟上げしました! 〜工事現場は近隣の目を大切に〜

2018年09月03日 | くまもと型復興住宅02

↑建て方の様子

前回の工事進捗のブログで、ご紹介した
「天然乾燥、葉枯し材」活用の現場が、無事に上棟しました。

建主様には、おめでとうございます!!
皆様のご協力には、感謝です。

配筋検査の様子など、工事の進捗は、HPにアップしました。
http://www.mk-ds.jp/newworks/2018/09/20188-02.html

こちらでは、感謝日記でもあるので、
私が大事に思っていることをも踏まえて、
素敵なエピソードご紹介します。

棟上げの時には、クレーンを使う為、道路を塞いでしまいます。
そこで、建方の前には、施工者が近隣にご挨拶します。

また、音、匂い、ホコリなど、どうしても工事中には
周りの方に影響があります。仮囲いで覆ったとしても、です。

近隣へは迷惑をなるべくかけないように
気遣いしながらの仕事です。

ゴミが落ちていたり、 中でタバコを吸っていたりしないかなど
監督さんも厳しくチェックしますが、毎日見張るわけにもいきません。

定例会議の時には、監理者が来るからと、
きれいに掃除をはじめる現場もあります。

それでも、定期的なもので、
実際は毎日の掃除や、段取りと気遣いが大事です。

建主さんも、毎日現場に足を運べるとは限りません。

そうなってくると、誰の目が一番大事か、、、、

もう、みなさん、おわかりですね。
そう、近隣の方々の目です。

一番、気にしてくださるのが、
毎日その場に居合わせる、近隣の方なのですね〜。

現場がうまくいくのは、
建主さん、監督さん、監理者の連携だけではないのです。

そうです。
近隣の方とも、ぜひ、連携しましょう!

以前、別の現場で
建主さんが棟上げの時に、近隣の方が、
木が組み上がるのを見て

「あなたのところは、良い家ができるね〜」と
声をかけてもらいました。と、伺ったことがあります。

一般の方でも、木材の良さって分かるものなのだなぁ、、、
と感心した記憶があります。

今回は、「あなたのところは、良か大工さんね〜」と
声をかけてもらったそうです。

ということは、監督の目がないところでも、
きちんとして下さっているということです。

これは、嬉しい!
ですね。

復興住宅なので、周囲でも工事がどんどん行われています。
そんな様子を見ている近隣さんだからこそ、
人にも目が向けられたのですね。

これから本格的に、大工さんの工事がはじまります。

工事の安全を願いつつ、
建主さん、施工者さん、監理者、が連携しながら

そして、近隣の方々の目をお借りしながら
より良いものづくりに、取り組んで参ります!

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