せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

伝統構法の住まい改修、安全祈願祭〜熊本地震を乗り越えて〜

2017年02月20日 | A06設計監理_熊本県M邸古民家再生


この春で、築125年目になる
古民家の改修工事がいよいよ始まります。

日曜日は、お天気も良く、
梅の花の蕾も膨らみ、春はそこまでという気候の中、
工事の安全祈願祭を行いました。



熊本地震で倒壊を免れた伝統的な住まいの改修工事です。
ここまで来るには、本当にいろいろありました。

伝統構法の専門家による綿密な調査のご協力を賜り、
工務店さんの良心的な見積りと誠意のある対応があり、
そして、工事費をやりくりなさったご家族、ご親戚。

罹災証明は、「大規模半壊」。
お会いした時には、ご家族は、公費解体を決めておられました。



もったいないから、ぜひ見るだけでも。。と案内されたその家屋は、
立派なケヤキの大黒柱に、黒光りする太い梁。

内部や外部の漆喰は落ち、なまこ壁も崩落して
確かに、地震の被害はあるものの、軸組のしっかりしていること!

北側の床の傾きは、おそらく柱のシロアリ被害か腐れによるもの。
地震だけの被害ではなく、経年変化によるものも大きいと見受けられました。



何度か調査に伺い、小屋裏の様子、できるだけ床下も確認し
これは、まだまだ修復で十分住める!と判断。

奥様が気にされていた梁のヒビも、地震でというよりは乾燥割れ。



これまで、建物修復支援ネットワークのH氏、
熊本県立大学の先生に研究室の学生さん
そして、日本民家再生協会の仲間と
調査、確認、ヒアリングなどを行い、
限界耐力計算の構造専門家にも教えを請い、

修復しよう!という結論に至りました。

壊さなくて良いとわかった時の、ご主人の安堵したお顔を
私は一生忘れないでしょう。

ご近所の方も「この家を壊さないと分かって、自分の事のように嬉しい。」
と言ってくださっています。

壊すことは、簡単。
でも、造り直すことは容易ではない伝統構法の住まい。

先先代の建てられた家屋。
思い出の沢山詰まった家屋。
地域に、家族に愛された家屋。

私も、このお住まいに関わらせていただく喜びを噛み締め、
そして、工事の安全を祈りながら
生かされ続ける住まいをしっかりと設計監理し
今は亡き、先代の匠たちに恥じない仕事をしよう!
と誓ったのでした。

ご家族は、仮設住宅暮らしで当分は不便になります。
それでも、帰って来られた時には、美しさもアップし、
待った甲斐があったと思っていただけるように、
しっかりと改修、補修、補強工事に取り組んで参ります。


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