先週末のヘリテージマネージャーの講習会で訪ねた
熊本の三軒堂。
その設計のモデルとなった建築が、「中野区にある
哲学堂であろう」という学芸員さんの説に従い、
今回の休日は、哲学堂へ足を運んだのである。
紅葉の真っ盛り。
公園の一角にあることから、こちらもでも素敵な
秋の風美を味わうこととなった。
特別に古建築解放デーとあって、
マイナーな場所の割には、人が多かったのではあるまいか。
公園内は、散策の親子ずれや、野鳥撮影のカメラマンなども
ちらほらの見受けられたが、
公園の一角にある野球場での試合における
小学生の野球チームの子どもたちの賑わいが一番であった。
一般にも貸し出しているという木造の邸宅は、
野球チーム保護者控室として利用されていた。
地域の形とっては、当たり前の風景なのかもしれない。
さて、それにしても、どの建物も大変ユニークであった。
「哲学」を基にした建築の、寄せ集めとなっているこの場所。
賢人を敬い、精神修養をする場所としての建築。
これまで、様々な建築を見てきたつもりだったが、
このような、個人の思いから作られ、そして維持管理されながら
今日まで、生かされてきた建築のそのまた歴史を垣間見るのは
初めて出会った。
そして、直感した。
やはり、熊本の三軒堂は、この場所、この施設、この思想を
絶対に意識したと。
大正から明治にかけて、整備されたこの地を
きっと訪ねて参考にしたに違いない。
特に、平面は正方形に近い建物の角から入り、
45度に振られた四角形の中に、銅像が建っている様は、
三軒堂で、賢人達に対面した時と
同じ感覚になったからだ。名前も「宇宙館」(大正2年)
三軒堂も、「大宇宙を象徴し、大神州を表現す」と神鏡に
刻んである、そうなのです。(参考:安達謙蔵自叙伝)
一方は、円形の建物だが、
このアプローチの手法は非常に似ていると言わざるを得ない。
古い建物は、ただ古い。。。としか
見ていなかった若かりし頃。
歴史、哲学、思想、宗教、学問、、、、
さまざまなものが絡み合って出来上がるのが建築だと今は分かる。
「六賢台」は、狭い空間のため、定員が3名で換気も悪いため、
密になるのが御法度なご時世を鑑み、残念ながら非公開であった。
入って見たかった!
瓦屋根の天狗はユニークでしたけどね。
それにしても、門の左右が阿吽の仁王像ではなく、
幽霊と、天狗というユニークさ。
実は梅の木に幽霊が出るらしい。
ここの建主、哲学館大学(現東洋大学)創設者の井上円了氏は、
なんと妖怪博士でもあったとか。
鬼灯篭
裏にまわれば、なんと褌姿。
哲学的散策の仕掛けがあるのに加えて、
妖怪も配置されているらしい。
しかし、「77あった見所ポイントは、50箇所程度になってしまった」
とおっしゃるのは、公園ボランティアガイドさん。
理由は、洪水(水害)らしく、
流されてしまった場所もあるのだとか。
長い歴史の中では、そういうことも起こりうるのだった。
解放されていた古建築のなかで最も気に入ったのが
読書堂の役割をしていた「絶対城」(大正4年)
まったく、お城の形ではないのに、おかしなネーミングと
思って、中に入って、その理由が述べられていた。
「読書は、絶対の妙境に到達する道理」なのだそうだ。
ここでは1階が書庫で、2階は吹き抜けを囲んで畳がひかれてある。
ここに座って、読書したのだろうか。。。
天窓の明かりと、窓から見える自然。すごく良い。
そして、婦人部屋というのは、当時はまだ女性が学問をするのが
許されていなかった時代。女性が籠って読書する場所というのが
設けられていた。広さにして、2畳ほど。
狭いけど、むしろ、集中できそうだ。
この回廊型の、読書のための建物が、
いっぺんに好きになる。
外観は、洋風だが、使い方も最先端をいっていたのだろう。
三軒堂の建築的な参考は、四聖堂や六賢台であったと思われるが
思想は、この場所も踏襲されているに違いない。
三軒堂では、女性も一緒に講和に参加できていたのか
不明だがそうであって欲しいと思う、、、。
建築の不思議を、探る旅であったが、
おもがけず、私には収穫となった。
「建築のモノづくりには、哲学が必要だ」
とは、昨今、大先輩が講演会で述べられたばかり。
私自身は、思想が必要だと思っている。
どんな発想力も、その人の思想がなければ生まれてこない。
形だけではダメなのだ。
使い方、運営の仕方、空間から何を感じ取って欲しいのかまで、
一生懸命に考えてこそ、きっと構成まで残るのだろう。
久しぶりに、納得した建築めぐりとなったお天気にも恵まれた
昨日の日曜日。
と、ここまで、綴っておいて、夜更かししているのは
もちろん、サッカーW 杯にて日本を応援するためです。
こちらは、監督の緻密な作戦とアスリートの鍛錬
そして、チームワークの結果によるものですね。
会場が、亡くなった女性建築家
ザハ・ハディットのスタジアムであることもあり、
今晩、いえ今朝は張り切ってTVの前にいようと思います。
頑張れ!日本。