せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

都市の中の茅葺屋根、残す価値は建築文化と生活暮らしの文化

2019年03月18日 | 日本民家再生協会・伝統建築・造園


昨日は日本建築家協会の修復塾の講座に、参加して来ました。

講師、企画、事務方の方々には、お世話になり、
大変有意義な時間でした。ありがとうございました。

修復現場見学後は、横浜市の文化財として
指定された第1号の横溝屋敷を皆で散策。

トップの写真は、その養蚕用に明治に建替えられた横溝屋敷です。

最初に、横浜市の市民の寄付による「馬場花木園」内の
伝統的民家修復現場を見学し、設計監理者から話を伺いました。
(写真は、まだ非公開です。現況の風景をアップしますね)

こちらは、現在の新築の茶室鉄骨造


こちらは、公園からの見える茅葺屋根


調査、設計、監理の苦労。
そして、街中で茅葺き屋根を残すため、
法的除外を受けるための審査
を通す代替措置の工夫や、調査資料をまとめる労力を伺い、
実務レベルの講義に大変勉強になりました。

調査から完成まで、7年間だそうです。
揚屋や曳家のVTRも見せていただき、
まさに臨場感あふれる体験でした。

茅葺屋根は燃えるため、用途地域により、
屋根を不燃材で吹かなくてはならない建築の基準を、満たしません。

では、どうして、それを残すことが出来るのか?

それは、放水銃(初期消火)の設置や、自動通報装置などで
火災予防を行っているから、可能なのです。

代替措置を、消防署や審査会で有識者、
行政と議論の積み重ねの結果なのです。

建築士が修復方針を設計して終わりというのではありません。
建物の耐震、火災予防策、地域でのこれからの活用のあり方
建物の地域での歴史的位置付け、などなど、
まさに、総合プロデュースが求められるのでした。

職人さんも、熟練の技が要される現場。
手間暇がかかっています。技の継承の意味もある修復現場です。
日本人のきめ細やかさ、
建築に対する美意識などを、感じとりたいですね。

完成の暁には、小さな茅葺屋根の茶室、そして主屋を、
ぜひ、ここに残す意味、価値を考えながら、
一般の方にも見学して欲しいと願います。

次の見学先、横溝屋敷は、
地域の名主の住まい兼、采配を振るった
場所であり、養蚕を営んでき建物。

敷地内には、主屋の他に、
兜作りの茅葺屋根の浮き屋根を持つ穀物蔵、文庫蔵、
突き上げ屋根のある蚕小屋があります。






まるで、伝統的建物群の見本市です。

裏には水路、せせらぎ、山神社などもあり、
暮らしと共にあった建築の役割を、よく伝えています。

主屋内で、修復工事の記録と、
四季の行事のビデオがそれぞれ観れるので、
合わせて学ぶと、この地域の特徴と歴史、
そして保存されてきた経緯がよく分かります。

地域の役場的存在、名主の屋敷、横溝邸。
そこには、ここで暮らしてきた人々の想いと歴史が詰まっています。
地域の方々が、是非残したいと活動されたようです。

建築を残すことは、当時の人々の支え合った暮らしをも
伝えていくのだなぁと、感慨深くなります。

古い建物、という見た目だけではなく、
その背景や奥にあるもの、、、
暮らしと歴史、地域性、そういった時間軸を持って
見学すると、民家は俄然と面白くなります。

どうぞ、ご興味のある方は、見学してみてくださいね。

馬場花木園のサイト
http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/park/babakabokuen/
みその園、横溝屋敷のサイト
https://qq2h4dy9n.wixsite.com/yokomizoyashiki

かく言う私も、横浜の拠点から近所ながら、
横浜に越してきて、すぐの出産、子育て、
仕事と家庭に追われるようにして、
ゆっくりと近くの建築をめぐるチャンスを逃してきました。

本当は、もっと子どもとお出かけすべきだったかなぁ。。。
と思いつつも、いえいえこれからと、
少しづつ、実現していきます。

今週末、今度は建築士会主催の、旧吉田邸の修復後の見学会です。
有名すぎるのに、そこもまだ行けていないのです。
企画していただけることが、本当にありがたいですね。

昨日の横浜の昭和最後の大修復工事だった横溝屋敷と、
平成最後の馬場花木園の現場と合わせ見ることで、
変わらないもの、建築文化の真髄を感じられ、春の学びに感謝しました。

コメント
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