いわゆる
ウツ漫画というジャンルがありまして、
舞台が酷いものだったり
救いがなかったり・・・
ネットでもトラウマ漫画として名高い【ブラッドハーレーの馬車】を友達のプロ格闘家に勧められたので読んでみました。
実は僕はこの沙村広明という漫画家さんの事は
知ってはいたんですが、過去に読んだことのある短編集『シスタージェネレーター』では
抒情的というか、鬱屈した内面を描く構成力は力があるなと思ったり、
絵で心情を描くタイプのじっくり読める実力派という印象でした。
また、
数ページのおそらく雑誌の中では箸休め的なポジションになるような
掛け合いギャグもなかなかに面白かったり、もちろんシスジェネでもハードは作品はあったものの
人間の負の側面を徹底して描くようなことは無かったんですよね。
そんな予備知識ほとんど無しの状態での対決です(笑)
もう感想は短文です・・・
目先の権勢にすがるため、保身のための残虐な行為を
罪の意識から逃れるための偽善によって目を逸らす人間の醜悪さです。
そして犠牲になる側のどうしようもなさはページをめくる手も重くなります。
まぁ全くと言っていいほど救いは無いので
鬱耐性の高い人だけ読むべきだと思います。
「結局どういう話なの?」と聞かれましたら
このまま下の方まで進めば少しネタバレもあるあらすじ含んだ感想になりますので
見てもらえればいいと思いますが、あまり普通の感性ならここでストップしてもらった方が良いと思います」
と答えますので、↓に一票入れるまでで終了よろしくお願いします
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【あらすじ含んだ感想】
いわゆる
ウツ漫画というジャンルがありまして、
舞台が酷いものだったり
救いがなかったり・・・
ネットでもトラウマ漫画として名高い【ブラッドハーレーの馬車】を友達のプロ格闘家に勧められたので読んでみました。
実は僕はこの沙村広明という漫画家さんの事は
知ってはいたんですが、過去に読んだことのある短編集『シスタージェネレーター』では
抒情的というか、鬱屈した内面を描く構成力は力があるなと思ったり、
絵で心情を描くタイプのじっくり読める実力派という印象でした。
また、
数ページのおそらく雑誌の中では箸休め的なポジションになるような
掛け合いギャグもなかなかに面白かったり、もちろんシスジェネでもハードは作品はあったものの
人間の負の側面を徹底して描くようなことは無かったんですよね。
そんな予備知識ほとんど無しの状態での対決です(笑)
舞台は中世っぽい
貴族階級の存在するどこかの国、
孤児院から一人の女の子が貴族の家に養女として引き取られていきます。
引き取った貴族は国内第4位の富豪ブラッドハーレー卿
一般の公演以外にも孤児院への慰問のような形でも開催される『ブラッドハーレー聖公女歌劇団』を主催する貴族です。
孤児院の女の子はその煌びやかな舞台に憧れ
「頑張って勉強して、良い子にして、自分もあの舞台に立ちたい」と現状から飛び立つための一縷の希望として捉えます。
ただ世界自体は『まだ』それほど殺伐とした世情でもないので
選ばれなかった他の女の子たちも祝福で送り出します。
孤児院の先生以外は・・・
ブラッドハーレー家の迎えの馬車に乗った女の子はなんだか殺風景な高い壁の施設に到着します。
簡素な服に着替えさせられ
ある部屋に入れられたとき
初めから抱えていた違和感は現実になります。
女の子は聖公女歌劇団への階段に足をかけたのではなく
獣の群れの中に獲物として放り込まれただけでした。
・・
・・・・・
ある刑務所では
過去に起きた暴動を教訓として
受刑者の精神的なストレスを和らげるプログラムの実験が行われていました。
しかしスポーツなどのレクリエーションでは目立った効果も上げられず
やがて有力貴族であり貴族院議員でもあるブラッドハーレー卿の進言により
通称『パスカの祭り』と呼ばれるプログラムが発案され実行に移されます。
それは
孤児院から病気のない女の子を購入して
受刑者の不満解消のために『殺さなければ何をしても構わない』という狂った祭りでした。
毎回数人の女の子が供物となりますが
狂人たちが約束など守るはずもなく女の子は命を落とします。
指を折られ、眼球を抉られ、腕を折られ、
既に死んでしまった女の子が相手をするべき囚人はまだ生きている女の子の部屋に合算され終わらない責め苦は続いて行きます。
印象深いのは
そんな地獄の中で最期に言いたかった一言を言うためだけに生き抜いていた女の子がいました。
先に選ばれた女の子の事を妬んで、出発の日にドレスを切り裂いてしまった事、
本当のことを言って謝りたい気持ちだけが命をとどめていたはずが、
それもまた壊れた心に写った自分自身でした・・・
また
そんな女の子に情が移ってしまい脱走を試みる看守や
自分の娘が選ばれてしまい、一緒に脱走しようとする囚人、
もちろん誰一人上手くはいきません。
発案者であるブラッドハーレー卿の真意を探っていた元ジャーナリストの囚人もいつしか行方不明になってしまいます。
完全に詳細が作中で語られることはありませんが
事の発端が権勢や財産を維持しようとしたブラッドハーレー家の政治的な権謀術策によって実現したものであり
囚人たちも対象になっているのは無期囚、女の子も一定期間が過ぎれば毒殺の予定、
刑務所という閉鎖世界の中で完結してしまうように仕向けられた
地位への執着のようなものでした。
舞台は変わって
本当のブラッドハーレー聖公女歌劇団の公演、
そこで舞台に立つ女の子たちも義父の本当の姿を知りません。
出自の孤児院に出した手紙も
返っては来るものの、直接やり取りはできず人を介してになってしまいます。
やがて
1人の女の子が故郷の孤児院を尋ねると
そこには自分が出したものではない手紙の山が・・・
詰問されたブラッドハーレー卿は
「真実を教える」という名目で女の子を馬車に乗せます。
行先は明示されていませんが、おそらくは・・・
もうそんな感じで全編陰鬱です。
ちなみにラストも全く救いのない・・・
人によっては多少救いがあると感じるかもしれませんが
そこにあるのは、保身のための残虐な行為を
罪の意識から逃れるための偽善によって目を逸らす人間の醜悪さです。
ちなみに
後書きでは『最終的に何がしたいのか自分でも分からなくなった』と書かれていますが
だからこそ人間の負の側面というか後味の悪さを描いた部分もあるかと思います。