安倍、自民党極右政権に振り回された2年間でいくつかのことが分かりました。彼らがいう積極的とか、平和とは、国民の声明財産を守るとかはーーその本質は全く反対のことであると。彼らが狙うのは天皇主権であり、自衛隊の国軍化と戦争できる軍隊への転換、そのためには海外派兵などは当たり前である。核兵器も開発し、保持する。中国、ロシア、アメリカなどと対等な立場に立ちたい。そのためには過去の侵略戦争などを認めるわけにはいかない。侵略戦争において批判される従軍慰安婦などはあってはならない天皇制国家(彼らにとっての唯一の正しい国家像だから)の関与である。
では、そのような経済力が日本にあるのか?製造業を中心として海外に生産拠点を移転してしまい雇用は急激に減少している。このままで過去のような日本経済の力強さ、繁栄(富国強兵)を誇示することが出来るのか。---そこでまやかしの安倍ブレーンによる経済政策を提示して、議席を掠め取った。しかし、その経済対策が経済的な繁栄を実現できることは無かった(それを隠すのが14年末総選挙)。貧富の格差は許容出来ないレベルになった。これが2014年までに到達した現実です。
今までの常識といわれるものが、非常識になりつつあるのが現実であり、政治経済の閉塞感を打開する道なのだと考えることが必要になっています。
成長ではなく成熟した社会、原子力にたよるエネルギー政策ではなく再生可能エネルギー社会。自民党型政治ではなくて国民多数の幸福を追求する政治経済社会。企業が政治を買収するような社会ではなくて、企業が社会的責任を十分に果たさせる政治経済社会。紛争を軍事力で解決する社会から紛争を話し合いによって解決する社会。民意を切り捨てる小選挙区制度から比例を中心とした選挙制度に転換させる(沖縄小選挙区での自民党の全敗が証明した)。消費税率の引き上げではなくて法人税の安定確保、富裕層への税負担を求める。
自民党型政治(二大政党、第三極などもその範疇に入っている)には出来ないでしょうが、必ず、そのような方向に世界、日本の政治経済が向かうことだけは確かなように思います。そのことが現実で理解できるようになって来た事が歴史の進歩なのかもしれません。
<東京新聞>「戦後の精神」つなぐ 作家 大江健三郎さん
特定秘密保護法が成立してから、12月6日で一年。施行は10日。集団的自衛権の行使容認の問題と合わせ、作家の大江健三郎氏に聞いた。
政府が言う「積極的平和主義」は、憲法九条への本質的な挑戦だ。米国の戦争の一部を担う立場に変えていこうとするために「積極的平和主義」という言葉をつくった。だから、何よりも特定秘密保護法が必要になる。
集団的自衛権を行使できることを日本の態度とするなら、米国が起こしうる軍事行動に踏みとどまる建前を失う。どういう戦闘が行われるか、戦況はどうなるか。米軍と自衛隊のやりとりは何より秘密でなければならない。秘密保護法を一番要求しているのは米国だろう。
日本政府は「積極的平和主義」を内外に宣伝している。最初、それは誰にも滑稽な言葉だった。しかし、半年、一年とたつと、国民は慣れて反発しなくなった。政府が国家の方針として提示し続ければ常態となる。市民は抵抗しなくなるということではないか。いま日本は、かつてなかった転換期にあると感じる。
「積極的平和主義」という言葉に対比すると、いままで日本が取ってきた態度は憲法九条に基づく「消極的平和主義」になる。
日本は平和を守るために戦うとは決して言わなかった。軍備を持たない、戦争はしないと世界に言い続けた。平和という場所に立ち止まる態度だ。僕は尊重されるべき「消極的平和主義」だと考えている。
「積極的平和主義」は言い換えれば「消極的戦争主義」になる。米国の戦争について行く。戦場で肩を組んで行けば「消極的」か「積極的」かは関係なくなってしまう。自衛隊員が一人でも殺される、あるいは自衛隊員が一人でも殺すことになれば「消極的戦争主義」というフィクションも一挙に消えてしまう。憲法九条を残したまま、すっかり別の国になってしまう。後戻りはできない。それは明日にも現状になる。
僕が十二歳のときに憲法ができた。学校で九条の説明をされて、もう戦争も軍備もないと聞いて、その二年前まで戦争をしていた国の少年は、一番大切なものを教わったと思った。自然な展開として、作家の仕事を始めた。九条を守ること、平和を願うことを生き方の根本に置いている。われわれは戦後七十年近く、ずっとそうしてきた。次の世代につなぎたい。
僕も、すぐ八十歳。デモに参加すると二日間は足が痛むが、集会で話すこともする。そのような自分ら市民を政府が侮辱していると感じるから。「戦後の精神」を持ち続ける老人でいたい。
おおえ・けんざぶろう 1935年生まれ。東大在学中に「死者の奢り」で作家デビュー。代表作に「個人的な体験」「万延元年のフットボール」など。94年、日本人として2人目となるノーベル文学賞を受賞。護憲派の市民団体「九条の会」の呼びかけ人。